望月の頃はたがはぬ空なれど・・・
そう詠んだ定家もこの月を見上げただろう。 「消えけむ雲」となった西行に思いをはせつつ。今夜は満月。旧暦、如月の望月。急須を買ったのですよ。 江戸末期、会津地方南部の田島町で興った手びねりの焼き物「田島万古焼」は、蛙とさいころが特徴なのです。急須の蓋のつまみにしがみついたなんともな蛙の表情、そのつまみの中にあるさいころはお茶を淹れるのに急須を振ると、かりんかりんと音がして・・・蛙は「無事帰る」という願いが込められているのだそうです。大変軽い急須で、無釉、小ぶり。日本の緑茶を淹れたらおいしいだろうと思うのですが、中国茶にもよさそう!様々な中国茶の中で、高温のお湯で淹れると香りがとても豊かにたつ青茶たちはこの急須のように粘土を釉薬なしで焼き締めた器で淹れると、香りたつ特徴が一層発揮されるのです。器が冷めにくくお湯を高温に保つことで得られる効果。ただ、青茶の中でも発酵度が低い文山包種などの香りが淡いものには不向き。器の気孔が文山包種などの特徴であるかすかな香りを奪ってしまうから。気孔が多い地肌は、お茶の雑味をとり去りマイルドにしてくれながら、取り去ったものを蓄え、お茶の個性を纏っていくのです。養壷、ということになるわけですね。淹れたお茶の個性をまとってしまう、この急須のような陶器の器、日本の常滑焼や中国茶の急須(茶壷)産地として知られる宜興産の陶器は、一壷一葉で使った方がお茶の個性を混じりけなく味わえます。一つの急須(茶壷)でいつもの種類の違う茶葉を淹れると味や香りが移ってしまう、お茶とは繊細なものなのですね。さぁ、何茶を淹れる急須(茶壷)にしようかなぁ。