てんたま<2>[ 天使のたまごのそだてかた。]<2> ★4★ 「フローラ、ごめんねっ!! 私今日ここに来たばっかりで、部屋の片付けの途中で湖に散歩に行っちゃってたから・・・。 今日の夕食、インスタントラーメンでいいかなぁ? そこの紙袋の中から好きなやつ選んで(泣)!!」 とほほ~・・・ ごちゃごちゃした部屋の片付けを、来たばっかりでいきなり手伝わせて・・・ しかも食事がインスタントって・・・ でも、フローラは楽しそうにゴソゴソとインスタントラーメンを選んでるみたいだけど・・・・・。 「ん~。じゃぁ、コレにする~。」 フローラは[パップスートル](苦笑)を持ち上げてみせる。 「じゃ、私も同じのでいいや。 そこのヤカンでお湯沸かして、カップに注いで3分たったら声かけて~。」 「わかったぁ~。」 (でも、ここガスと水道と電気がきててよかったぁ・・・・。確認してなかったから、実は心配だったんだよね・・・。) 「あ、そうそう。 服とか、みんなこのタンスとあっちのBOXに入ってるから、好きなのを選んで着ていいからね、私の趣味だから気に入るかどうか、わかんないけど。 サイズは多分大丈夫だと思うから。」 「----あ、うん。ありがと。 でも、ホントにいいの? ずっとここで寝泊りさせてもらう上に食事や服まで・・・。」 2人の間におかしな空気が漂う。 服をタンスに詰め込む作業を止めて、振り返った私はなんだか真剣に考えている様子のフローラには悪いんだけど、おかしくなってきた。 「----ぷぷ~っ!! あはははははっ!! フローラってさ、意外と神経質なのぉ? A型っぽいよね!! 悩みすぎると禿げるよ!?」 「ひっどぉ~~ぃ!! そんな言い方しなくてもいいじゃなぁ~ぃっ!!」 腹をかかえて笑いまくる私を見て、フローラは頬を膨らませている。 「------------。」 「------------。」 「!!!」 2人が同時にある方向を向く。 そこには、とんでもない悲劇がっ!!! 「あああぁ~~~~~~!!!!」 2人して同時に声をはりあげる。 その視線の先には--------------- パップスートル・・・・・・・・・・(汗) 「10分以上過ぎてるよねぇ・・・・?」 「・・・・・・・・・・うん。」 おそるおそるカップのふたをめくると、予想通り麺がふにょふにょになってのびている。 淋しげに湯気がほわわ~~んと漂い、匂いが2人を包む。 「あ~ぁ。フローラが変なこと言うから、笑ってるうちに伸びちゃったよぅ。」 「だって-------。 でもっ! でもでもっ!! 笑ってたのは明でしょぅ!?」 「私のパップスートルがぁ・・・・・・・。」 「私のもだってばぁ・・・・・・。」 「・・・・・・ははっ!!」 「っはは!! あはははっ!!」 笑ってる暇があるなら一刻も早く食べればいいのに、ついつい顔を見合わせてわらってしまった。 (でも、フローラとだいぶ仲良くなれたみたいでよかったなぁ~。 はじめはオドオドしてたし、あんまりおとなしい子だったらどうしようかと思っちゃったけど。) 「ふ~。食べますか。」 パキッ・・・ 「いただきまぁ~す。」 「いただきます。」 割り箸で麺をすくうと、さっきよりも更にふやけた感じ。 「まずっ!!!!!」 まずい、まずいよ、コレ!! やばいって、コレは・・・・・(汗) のびきったパップスートルの麺とちょっと冷めたスープが絶妙な味と旨味をひきだして・・・・・・・・・・って、じゃなぁ~~~~ぃ!!!(怒) とにかくまずい!! まずすぎるっ!! 「ごめん、明。私が言うの忘れてたから・・・・。」 フローラが申し訳なさそうにポツリと言った。 「まぁ、一緒に肩を並べて初めて食べた食事がコレっていうのも、なかなか面白くていいんじゃないの(苦笑)?」 「・・・・・・・・そだね(苦笑)。 べつにコレ食べたからって死ぬわけじゃないしね♪」 「・・・・・・・・。 ・・・・・・・・まぁね。」 私はポリポリと苦笑しながら頭をかいた。 (フローラって想像以上に個性的なんじゃ・・・・) この日の夜は本当に面白かった。 森や湖についてフローラはいっぱい話してくれたし、ベットに寝転がって、お互いのことを色々聞きあった。 私はフローラの知らない都会での生活についてとか、私の通ってる学校のこととか、友達のこと・・・・・。 とにかくいっぱい話した。 両親の話も。 ここに来て私は改めて自然が大好きになったことも。 木や花は子供の頃から大好きだったし、キャンプも沢山してきたけど、ここの森はなんだか特別な感じがするの。 凄く気持ちいい。 凄く心地いい。 そして・・・・・・・・・・。 フローラと友達になれたことが、私にとって一番大きなことだった。 嬉しかった。 (ちょっとはマイペースな両親に感謝・・・・・・カナ?) ★5★ フローラと暮らし始めて今日で8日になる。 私たちは毎日、雨がひどく降らない限りは湖に出かけている。 私の学校の宿題は夏休み前にかなり渡されていたということもあって、休み前にほとんどを済ませてあるし、終業式に渡された分の宿題は家に忘れてきちゃって、取りに帰ることも出来ないからやれないし。 そういう意味で本当に「夏休み」ってものを体験してる。 それにしても、フローラは一緒にいればいるほど、私をびっくりさせる。 先日なんて一緒に湖に出かけた時、暑いからっていきなり服着たまま湖に飛び込んじゃって、『気持ちいいよ~!! 明も一緒に泳ごうよ~!!』だし。 ホントに自然に囲まれて育ったんだなぁ、って思う。 「明!? 明ってばぁ~! 今日は一緒に湖に絵を描きに行く約束でしょ~? なにしてるの~? 早く出かけようよ~!」 「あ!! うんうん、ごめん、フローラ!! 今すぐ用意していくから、ちょっとそこで待ってて~~!」 (そうだ! のんきに回想なんかしてる場合じゃなかったわ・・・) バタバタと階段を元気よく駆け下りる。 (絵の具OK! 水入れOK! スケッチブックOK! よしっ! 忘れ物はないみたい!) ガチャンと家の鍵をかけると、私は道具を持って急いでフローラの方へと走っていった。 フローラは2人分のお弁当を持っている。 「ごめんね、待たせて」 「いえいえvv」 「んで、今日のお弁当は何~?」 「今日はねぇ・・・、サンドウィッチとから揚げに、果物のゼリーだよ~♪」 「うわぁ~ぃ! サンドウィッチかぁ~。 フローラのはホントに美味しいから楽しみだよ。 ついつい沢山食べちゃうんだよね、私」 そうそう、忘れちゃいけないのがフローラの手料理!! これがまた、人並みはずれて美味しいのよね♪ おかげで例のパップスートル事件以来、ずーっと我が家の食事係さんなの。 つまり、私はフローラに住むところと、食材・衣服なんかを提供して、フローラ はここの食事を作る、掃除の方は2人で協力してやってるの。 この方がフローラは気兼ねなくここにいられるから。 歩くこと15分。 湖に着くと私たちはすぐさま筆を取り出して、スケッチをはじめた。 私は太陽の光でキラキラ輝いてる森の木々を、フローラは澄み切った湖を。 -----でも、いつもフローラってどこか悲しげな色で描くんだよね。 それも決まって湖を。 今まで何回か一緒に絵を描いてるけど、いつも湖を描いてるの。 描く対象はこんなにも沢山あふれてるのに。 (悲しい色・・・・・・) 私にはここの湖は澄み切ってて、とっても綺麗に見えるのに、フローラの目には違うように見えてるみたいで。 1回だけね、前にこうして湖に絵を描きに来た時にフローラに聞いてみたことがあるの、 『なんでそんなに悲しそうな蒼で湖を描くの? ここの湖こんなにも綺麗なのに・・・・・・、なんだかこの湖は泣いてるみたいだよ?』って。 一瞬大きく目を見開くと、そのままフローラ私の方を見たまま黙っちゃって・・・・・。 今度はうつむいて。 少しだけ肩を震わせて。 フローラの目から光が消えた気すらして。 私はあの時『ごめんね、気にしないで』ってただ意味もわからず謝ることしか出来なかった。 あれから、私はフローラの描く湖の色についてや、湖を見つめているときの不安や悲しみ・淋しさがちらつく姿には、ふれないことにしたの。 だれにだって触れられたくない過去や想いはあるものね。 でも、あの時私に見せた表情は、フローラの中、奥深くに眠ってる姿なのかも知れない。 私はそんなことを頭の中にちらつかせながら、この木々に囲まれた湖と青空を見上げて空気を胸いっぱいに吸い込んだ。 そして、スケッチブックに目を戻す・・・・・・ (あ・・・、あれ・・・・・????) 「あぁ~~~~!! 色がはみだしてる~~~!」 ちょっと考えごとしてるとすぐこれだ。 とほほ、なんでこうなるかなぁ~。 せっかく今日はいい感じに描けてたっぽいのに・・・。 「ほんとだ、明、色にごらせちゃったの? せっかく綺麗な色で塗れてたのにもったいないね」 「あはは・・・、まぁね」 私は再び自分の絵に視線を戻すと小さく溜め息をついた。 絵を描くのに夢中になってたら、辺りがもう暗くなりかけてた。 夕日も1/3くらい沈んでるし、少しだけ涼しくなってきてる。 まぁ・・・・・・。 相変わらず蝉(セミ)は煩いけどね。 「フローラぁ、そろそろ帰らない? もう辺りもずいぶんと暗くなってきてるしさ・・・」 「------。」 「・・・・・・? ・・・・・・フローラ・・??」 「あ! ごめん。 ちょっと考え事してて・・・。 何?」 「いや・・・、もう暗くなってきたから、そろそろ帰ろうかなぁって思って」 「・・・・・・・・・。 ごめん。 悪いけど明、先に帰っててくれる? 私はもうちょっとだけ絵を描いてから帰ることにするよ。 あとちょっとで完成しそうだし」 「あ・・・・。 うん。 わかった。 もう暗いから気を付けてね」 その場から離れた私はフローラのことが気になって、振り返った。 (絵を描いてるようには見えないけどなぁ・・・・・) 遠くであんまりよく見えなかったけど少なくとも絵は描いていない。 それどころか・・・・・・。 ・・・・・・・・。 ううんっ。 きっと何か考え事してるだけだよ! 早く帰ってたまには夕食でも作ってあげよっと。 フローラと共同生活をはじめて今日で8日になるけど、こんなに胸が騒ぐのは初めてだった。 私の心配をよそに、家に帰ってきたフローラはきちんと絵を完成させていた。 そこには、やっぱりもの悲しい蒼があったけど。 フローラは私に気を遣ってるのか、私の前ではいつも笑顔でいてくれる。 元気に話しかけてくれる。 けど------- 幼い頃に両親を亡くして、ずっとこの森に一人でいたんだもん。 心を許せる人がいないっていうのもなんとなくわかるけど・・・・。 私じゃ、まだそんな存在にはなれないんだ・・・・。 ごめんね。 ごめんね、フローラ・・・・。 食事中、いつもなら楽しく、おしゃべりしてるんだけど、こんなことばっかり考えてたから私うつむいたままで・・・・。 私の態度が気になったのか、ささっと食事を済ませたフローラはおろおろしながら、 私のところに来て、そっと抱きついてくれた。 「明、どうしたの・・・・? すごく悲しそう・・・。 私なにかしたかなぁ・・・?」 「ううん。 ちょっとね。 考え事してただけ。 ホントになんでもないから気にしないで」 「なら、いいけど・・・・」 「--------」 「--------。 明・・・・・・・・・。 わたし・・・・・・・・・。 -------わたしね・・・・・・・。」 「ん・・・? フローラ?」 「ごめん、やっぱりいいや。 なんでもないから忘れて。 なんか今日は疲れちゃった。 そろそろ寝ようかなぁ~・・・・」 「・・・・・・・ん」 「おやすみ」 「おやすみ」 パタン・・・・・・・。 軽い挨拶をして、私たちはそれぞれの部屋に入った。 ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|