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てんたま★6★

   
     天使のたまごのそだてかた。★6★(明side)

 部屋に帰っても私はちっとも寝付けなかった。
 きっと理由は色々あるんだろうけど、フローラのことが気にかかってしょうがなかったからだと思う。
 フローラはさっき、何を言いかけたんだろう・・・・。

 私は家を出てきた時に持ってきた詩集を手に取った。
 詩って好きなんだよね。
 上手く表現できない気持ちが描かれていたりしてさ。
 自分でも時々書いてみたりするけど・・・。

(この詩集もだいぶボロボロになってきたなぁ・・・・)


 その中の。
 ある1ページに目を留めた私は----------泣いていた。


『 野原に花が咲いている
  大地が呼吸している証拠

  雲が流れてく
  大気がめぐっている証拠

  悲しいと涙がこぼれる
  ココロが傷ついた証拠

  街中で人とすれ違う
  ひとりじゃないってこと

  誰かを心配する
  愛し愛されているから
  
  誰かを知りたいと思う気持ち
  自分のココロを開く動機


  苦しいこと 楽しいこと 辛いこと 不安なこと
  全ては明日につながってる
  全てのことに意味がある
  あなたが
  いま
  ここにいるということにも
  
  「意味」がある                  』

 ・・・・・・・・。
 声にならない叫びが体の中を走り抜けて、私はただ臥せって泣いた。
 ただ泣いた。
 ひたすらに。
 ただ、ひたすらに泣き続けた。

 
 私にココロを許せないのは、誰のせいでもなくて、私のせいだったんだね。
 さっきだって。
 『なんでもない』って言うんじゃなくて、『フローラのことが心配なんだよ』って言えばよかったんだ。
 
 私がココロを閉ざしていたんだね。
 ごめんね・・・・。
 ごめんね、フローラ・・・・。

「フローラ・・・・・。」

------どうやら、この日は泣き疲れてそのまま眠ってしまったようだ------

    ★6★(フローラside)

 一方、明と挨拶を交わし部屋にもどったフローラもまた、明のことを考えていた。


 窓から月に寄り添うように輝く星々が見える。
 木々を揺らす風。
 そして、葉の揺れる音。
 外は------------静かだ。


 フローラはいつだって孤独だった。
 支えてくれる人は誰一人いなかった。
 いつだって一人。
 誰も心配などしてくれはしない。
 語り合う友もいない。
 

 何度この宿命を呪ったことか・・・・・


 明と出会う、あの日の、あの瞬間までは。
 語り合う時間。
 友と一緒にとる食事。
 笑顔を見せる相手。
 自分のことを気にかけてくれる人がいるという幸せ。
 誰かのことで悩んだり、心配する自分。


 そう。全てが新鮮だった。
 モノクロの世界に徐々に色が付き始めるのが手に取るようにわかった。



 「私・・・・・・。
  明に嘘ついてる・・・・。
  明に大きな嘘を付いてる・・・・。」


 ポタッ。
 

 ポタ・・・・。


 フローラの目から熱いものが毀(こぼ)れては、--------落ちる。


 「・・・・涙? これが・・・・涙なの?
    これが『泣く』ということ・・・?」



 それは止まることなく、ひとつ、またひとつと毀れては落ちる。
 次第に小さな湖ができはじめた。
 小さな小さな湖。
 
 この時、フローラは初めて『泣く』ということを知った。
 それまでは、泣く理由もなく、そんな気持ちにすらなったことが無かった。
 

 いつのまにか、自分の中にドロドロとした自分への、もどかしさが溜まっていた。
 『掟(おきて)』という名のココロの鎖は、明と過ごす温かく、心地よい時間の中で錆付いて、ボロボロになっていたのだ。
 今は、もう、力を入れたら外れてしまいそうなくらいに。
 きつく自分を縛り付けてきたものは、錆付いていた。

 

 そして、『罪』という言葉を思い出す。

 思い出さないように、思い出さないようにと、無意識のうちに今までずっと避け続けてきた言葉を・・・・。


 そのまま、フローラは眠りについた。
 ざわめくココロ、そのままに。

 暗い、深い森の中。
 白く輝く月はフローラを照らしている。
 

 夜の森も。
 静かに眠りについた。



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