別離
首の後ろを切開し腫瘍を摘出する手術を行っている。昨日からの続き不安な僕。と言ってもオペは汚い診察台首の周りに滅菌コットンを盛っている。(見えないので想像)首を掻っ切るから血がドバドバだろうね部分麻酔をする。麻酔ってのが一番痛いんだよね。それはよく知っている。言ってみれば、痛さの前借りってやつだ幹部へプスッときた麻酔薬が浸透する。しびれる。激痛が走る歯を食いしばる。男は痛さに弱いもう一発また激痛。もう一発。もう一発。もう一発何本打たれただろう。8本くらいは周辺も合わせてくらった。最後の一本くらはすでに麻酔がかかっていたのであまり痛くはなかった。さぁ始めるよ。の一言もなく僕の首の後ろでガサゴソやっている。少しして思った。もしかして、もう切っちゃってる?グイグイ。チョキチョキ。ジュウジュウ。半分想像できない音がする。しかも耳のすぐ後ろだから、リアルな音が想像を掻き立てる。おそらく、メスで切開しオープナー等で固定し、腫瘍と肉や筋肉の付着部を切っていたと思う。切っている感覚は分かる痛感はないけど僕の首には穴が開いている。目の前にはホコリがある。気配は増えている。看護師が数名いるようだ。先生は独り言をいいながらやっている。それは、いいとしよう。でも言葉は選んでほしかった。たまに口から出てしまっているNGワードがある。「あれ?」「ん?」「なんだ?」信用して任せてんだから、疑問符は付けないで15分か20分くらいだろうか、作業も落ち着いてきた。先生「はい。モノは完全に取れました。これから縫合していきますね」僕「はい」先生「痛くないですか?」僕「(い、今!?)はい」それは初めの頃に聞くことぢゃねーの縫合が始まった。開口部に穴をあけて糸が通ってゆく感覚がある。ジーって糸がこすれている。何針縫っているのだろう。何回もやっている。4針くらいだろうか。肌が引っ張られる感覚で縛っているのは想像できた。思ったより早かった。先生「お疲れさまでした」僕「ありがとうございました」診察台から起き上がり、履いてきたスリッパを探す。ない。どこ?キョロキョロ。首穴あいてるのに・・・・・・あった結構遠くに置いてあった。そこまではスリッパなしだねイヂメ?先生もイスに戻り、僕も戻る。小さな台の上には術器具やらがそのまま。膿盆(あのよく見るそら豆みたいな形のステンレスのトレー)に脈を打ったような赤い玉が入っている。おそらくこれが摘出したモノだろう。まさにそれを見せながら先生は言った。先生「これが今取りだした袋です。この中にコレステロールが入っています」と言いながら、カッターナイフで切り始めた。プニッスーッと切れて、中から白い綺麗な玉が出てきた。先生「これがコレステロール」そしてさらにその白い玉を切り始めた。これまたやわらかい。スッと切れた。断面は年輪の様に筋が入っていた。長年をかけて大きくなっていたのだろう。先生はこの先の治療予定を話し始めていたが、僕はこの玉をガン見していて話は入っていなかった。そして膿盆と玉は看護師さんがどこか持って行った。その膿盆を目で追いながら話を聞いていた。僕の左手は携帯を取り出していた。そう。写真を撮りたかった。携帯のカメラをON僕「あの、写真撮っていいですか?」先生「!?」僕「これでしたっけ」僕は了解ももらう前に、横に置いてあった膿盆にかぶせられた布を剥がした。玉を見失っていたが、まだそこにいた。先生「いいよいいよ(笑)最近はそういうのもアリだな」看護師達も笑っている。僕「長い間僕の中にいたモノなんで、記念に」カシャー良く撮れた。和やかな診察室にシャッター音が響く。先生「じゃお大事に」僕「ありがとうございます」施術のお礼より、写真のお礼の意味の方が大きかった。しかし、先生の話は殆ど聞いていなかったが大丈夫だろうか。待合室で待ちながら心配になった。すぐに呼ばれた。会計は13,000円くらいだった。思ったより安い。と思ったら、手持ちがなかった。あら、5,000円しかない。僕「カード使えないですよね」受付「使えないです」基本カード主義の僕はあまり現金を持っていない。5,000円は多い方だった。僕「近くにお金引き出せる所あります?」受付「この道路をまっすぐ行くと」僕「あ、ミニストップですね?」受付「はい」すぐにお金を用意しようと出発しようとしたけど受付「今日はとりあえず一部でもいいですよ。次回診察時に残りをお支払いいただいても」僕「そうですか?じゃとりあえず5,000円で」化膿止めと胃腸薬、痛み止めをもらい病院を出た。駐車場から車を出した。すぐにまた戻った。風呂はどうするべきなのか気になったので、聞きに戻った。看護師さんに聞いたら、防水の絆創膏が貼ってあるので、大丈夫だとの事だった。とりあえず2日くらいは安静にと帰ったとりあえず今日は走るのをやめておこう何時間かしてから、痛みがやってきて、痒みがやってきて、ひどい肩こりの様な症状が出てきた