外来語の氾濫は、大正末期から、戦前戦中を除いて現在まで、常に指摘されてきた。 しかし、国立国語研究所のような公的な機関が個々の言葉について言い換え案などを提示したのは、今回が初めてのことだ。
外国語を規制する法律を施行しているフランスなどに比べ、日本には、言葉の問題に口を出すことを嫌う風潮がある。 今年3月のNHK調査でも国が外来語の規制をすることに賛成する人は二割に満たない。 なぜ言い換えるのか、その理由を明確にするところから検討作業は始められた。
言い換え語の特定も簡単なことではなかった。そもそも、日本語に対応するものがないからこそ、外来語が使われるのであり、言い換えでニュアンスが変わるケースも少なくない。
明治時代、我々の先人たちは、多くの欧米語を漢語で造語した。その例に倣うことができれば、という期待もあったが、そうした漢語は、作る側にも使う側にも、漢字や漢語の教養があったらこそ定着した。
今回の言い換え語の中で、比較的目新しいのは「インフォームド・コンセント」の「納得診療」だろう。
既存の「納得」と「診療」の組み合わせで、全く新しい造語ではないが、日本になかった医療に関する考え方を根付かせるには、このくらい思い切った意訳も必要だとして支持を集めた。
だが、これでは、原語の意味を正確に表さないとして、反対する意見もあった。 分かりやすくしようと意訳すると原語の意味から離れてしまう、原語に忠実であろうとすると日本語としてぎこちなくなる。 適当な言い換え語が見つからないのなら、外来語のまま定着させる努力を行った方がいいという発言も出た。
そうした議論を踏まえ、「アジェンダ(行動計画)」といったふうに、すべての語について説明を付与して外来語を使う余地も残した。 ただ、このやり方は、外来語を温存し、使わなくてもいい外来語を定着させてしまう危険性もある。
今回発表された63語という数は、少なすぎるという印象もある。 しかし、甲斐睦朗・同研究所「外来語」委員会委員長は、「生活に密着した言葉、現代人がものを考えるのに欠かせない言葉が多く入っている。問題提起として意義を持つ」と語った。
新聞としても、積極的に使用を試みることで、読者と共にその「使い勝手」を 検証していきたい。
(読売新聞東京本社校閲部次長 関根健一=「外来語」委員会委員)より |