BLENDのNEWSブログ

2010/01/30(土)18:40

グーグルの中国撤退問題の本質

インターネット(11)

米ネット検索大手のグーグルが中国当局のネット規制を理由のひとつに中国からの撤退検討を表明し、国際的な波紋を広げ、米中政府間の外交問題にも発展しつつある。グーグルはこれまで「天安門事件」や「法輪功」などの検索を禁じた管理規定に従ってきたが、それに対し米欧からは批判があり、規制解除を中国側に迫ったのが発端だった。 ネット情報の自由を要求する米側に対し、中国側はいまのところ譲歩する気配はない。ネット管理の元締めである国務院内閣新聞弁公室や情報工業省は、いかなる外国企業も中国の国内規定を順守しなければならないと反発している。世界最大の検索エンジンであるグーグルも中国市場のシェアは30%余で中国最大の「百度」の約半分にすぎない。しかし中国人ユーザーの間では、グーグルを支持し、電子メールアドレスを取得するものも少なくない。共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」ネット版が今月14日に行ったネット投票では、中国政府の審査なしにグーグルの営業を認めるかどうかの質問に、75%が反対、25%が認めるべきだと回答した。グーグルの要求は中国の主権の侵害とした人は67%、侵害ではないとした人が24%だった。若年層ほどグーグル支持が多く、撤退を惜しむ声が強い。 問題の背景には、中国政府が西側文化の流入に警戒を強めていることがある。胡錦濤政権は、中国文化を世界に広めることに躍起で、世界各地に孔子学院を設立してきた。最近公開された映画「孔子」もその一環で、中国でも空前の人気を博した映画「アバター」通常版の上映打ち切りも「孔子」支援のためと言われた。しかし当局のてこ入れもむなしく、「孔子」の評判はさんざんで、ある文化芸術専門サイトが行ったアンケートでは、上映中の10本の内外映画中、唯一、10点満点の5点に達せず最下位になった。「アバタ―」は唯一9点超であった。昨年秋に公開された「THIS IS IT」「2012」の2本の米映画も「アバタ―」同様の高評価を得て、記録的興行成績を収めた。「新浪ネット」のアンケートで「中国はこのような映画をいつ作れるか?」との質問に「永遠に無理」が35%、「20年後」「50年後」が合わせて44%だった。それは技術的な問題ではなく、3本の映画に共通する普遍的価値観が中国では表現できないため、とネット投稿者は指摘している。 「孔子」の不振は、逆に中国の市場経済と国際化の進展の表われでもある。中国当局の宣伝や動員で人々が映画館に足を運ぶ時代は終わった。共産党系紙のアンケートで4人に1人がグーグルを支持した事実もまた、そうした時代の反映にほかならない。グーグル問題は、なお情報統制で独裁体制維持を図る共産党政権の弱点をついた。3億を超える中国のネットユーザーが情報自由化を要求するきっかけになりえるからだ。この問題が単なる文化摩擦にとどまらない意味がそこにあるだろう。

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