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けいのへや

けいのへや

砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない


『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』

著者:桜庭一樹
出版:富士見ミステリー文庫


「このライトノベルがすごい」で2位だったか3位だったか。
このライト~おけるランキングでは、読者が読んだ作品の中で1番気に入ったものに10点(でしたっけ?)を与え、2位に9点、3位に8点と点をふっていき、最終的な合計点でランキングを算出するのですが、この作品においては「投票した人数は少ないが、投票した人間が例外なく高得点で投票したために、2位にランクインした」と言う大きな特徴があります。わかると思いますが、有名どころの作品はたくさんの人間の手に渡っているからランクインするのであり、決してみんながみんないい評価を下しているわけではありません。読んだ人全てを例外なく感動させた、その意味では2005年における最強のライトノベルではないだろうか、と言うことで読んで見ました。


主人公は父親を失い、母のパートを頼りに生活している、少し不幸な女子中学生。
主人公が出会ったのが、有名アーティストを父親にする、自分を人魚と称するすごく変わった女子転校生。
自分の力で家族を養うための「実弾」を求める主人公と、妄想の世界に逃避するために「砂糖菓子の弾丸」を求める転校生。
この、二人の何かがずれた友情を描きながら、子供という存在のか弱さをどこまでも冷酷に伝えてくれる作品だ、と言う印象を受けました。

アバウトな作品の説明は上の文章で済ませるとして、この作品、スタートで既に「バッドエンド」が確定されます。しかし、もちろんバッドエンドだといわれたところでなにがどうなるかがわかることもないので、むしろ興味が湧いてしまいますね。ただのエンディングではなく、「バッド」であることが、読みたくないような気持ちを生むのですが、むしろそれをえさに読みたい気持ちが倍増したりします。この辺が、私がドキドキしながら先を読んでいくことになった原因かも。

そして、この作品、すごく変な転校生が来ることからはじまるわけですが、この場合、変にも程があります。オタクの趣向はよくわかりませんが、およそオタクでも興味が湧かないようなふざけぶりです。意味不明にもほどがあるんですよね。キャラクターを強調するにしても、やりすぎているわけです。
……という罠でした。
この子の性格がどこから来たものか、それがわかるときが来ると、むしろ悲しくなります。子供という存在の儚さを知らされるような感覚。強調されて、それに多少の不快感を持っていた分、それは感動に取って代わります。嫌なカウンターです。最高です(おい)

ただ、どうあれ意味不明なやつと付き合っていくのは正直苦痛です。物語序盤は興味も何もあったものではありません。もう少しまともに出来なかったのか、と言う点でキャラクターに対してはべた褒めとは行かないかも、と言う印象がどうしてもわいてしまいます。
また、主人公視点の、一人称的な文章でストーリーが進むわけですが、正直文章が少し乱暴です。話し言葉っぽくて軽く読めるという一面もあるのですが、なんだか流れを取りづらくて、主人公が私たちを置き去りに勝手に動いている印象があります。ただ、心理描写のようなものは長々と書いてあっても意外と気にならないところに技術を感じたり。

と、一通りの文句を済ませたところでストーリーの方に入っていきますが、もろもろの問題点を抜きにしても、なかなかすごい作品でした。
繰り返しますがバッドエンドですので、そういうのが苦手な人にはおすすめ出来ないところはあります。が、どのような人であれ作品に対し好意的に読んでいければ、その切ないエンディングの中でさまざまなことを考えさせられるのは間違いないと思います。
物語の中で、子供たちが必死に生きていく姿は、ひどく残酷なものであります。
人によってはこの物語が大きな形をもって心に残るようなこともあるでしょう。
私のような子供が、同じ子供が不幸な世界で必死に生きていく悲劇の中に、生きていくことを考えるような作品。そう片づけるのもありですが、むしろ、同じように子供の時代を体験し、いまは大人として生きている、およそライトノベルの読者層から離れているような大人にこそ、読んでもらいたい作品だなぁと。残酷なお話、暗黒系、そう一言では片づけられない何かを感じさせた良作ですっ。

あ、ちなみに、イラストは個人的にあまり好きになれませんでした。
作品の不思議な世界観の中では、あまりにも浮いている印象があります。まぁある意味不思議でそそられる絵ではありますが、イラストで読者を逃していては意味がありません。ミステリーっぽくしなくてもいいですが、もう少しなんかなかったのかなぁとは思ったり。

以上、いつになく乱暴ですが勘弁を。


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