秘境ブータン 天空を駆ける
少し前のNHKスペシャルで、「秘境ブータン 天空を駆ける」という番組をやっており、興味深く見ました。内容は、2024年10月にブータンで開催された山岳レースについてです。レースは「スノーマンレース」というレースです。世界一過酷な山岳レースの1つとも言われる、究極のウルトラマラソンです。コースの平均標高は富士山よりも高い4,200m、最高地点は5,470mもの高さです。そして、酸素量は平地の半分ほどしかない場所もあります。生命の危険すらある困難なレースに挑んだのは、世界各国から選抜された9人のトップランナーと、国内予選を勝ち抜いたブータン人7人の16人です。その中には、唯一の日本人ランナーである丹羽薫さんという女性もいらっしゃいます。この世界一過酷なレースは、地球温暖化対策を世界に訴えるために企画、開催されました。発案者は、以前日本にも来日されたことのある、ブータンのワンチュク国王だそうです。ブータンは環境保護に力を注いでいる国で、人々の幸福を最優先にする「国民総幸福」の考えを掲げています。しかし、地球温暖化の影響を大きく受け、山岳地帯の氷河が解けることで引き起こされる水不足や、氷河湖の決壊による洪水被害など、猶予のない事態に見舞われています。ワンチュク国王はこのような事態を重要視し、国を挙げて対策を指示したようです。このレースは、単なる山岳レースではなく、世界中のすべての人々に気候変動への緊急対策を呼びかける王室のビジョンだということです。この大会に参加するランナーたちを通して、美しいブータンが地球温暖化の最前線に立たされているということ知ってもらい、この危機について世界に発信してもらいたい、ということを目的に開催されました。2024年で2回目の開催になります。現代ブータンを知るための60章【第2版】 (エリア・スタディーズ 47) [ 平山 修一 ]今回の参加選手たちは自らカメラを持ち、気候変動の最前線を記録しました。その内容は、見ている私も引き込まれ、言葉を失うほどでした。5日間をかけヒマラヤの超高地を駆け抜ける、186kmの過酷なレースです。見終わった後には、色々と考えさせられるものがありました。レース終了後、選手たちはSNSなどで、ブータンで起きている気候変動の実情をリポートしています。多くの方に、ぜひ目にしてもらいたいと思います。地球温暖化については、大学院時代にビジョナリーの議論の中でも話題になりました。ありきたりの対策や議論ではなく、このような真実を目にすることで、また考え方などに大きな変化が生まれるような気がします。「これは、地球の未来との戦いだ」というコメントが心に響きました。究極の、走ることによる社会貢献につながるような気がします。私も色々と考えてみたいと思います。