卒塾生の視線
高校生になった卒塾生たちが新しい制服姿で塾に来てくれる。ご丁寧にも塾長の大好物のアメを持って。真新しい制服に真新しいシャツに真新しいネクタイ。まだ制服が体に馴染まず、上手に着こなせていない感じがとても初々しい。新しい高校のことをあれやこれやと、取り留めもなく話してくれる。そして会話がふと途切れた時に、教室全体を見渡し、どこか懐かしそうな表情をしている。まだ卒塾して1ヶ月も経っていないのに。きっと塾を懐かしがっているのではなくて、この塾で頑張っていた昔の自分を懐かしんでいるのだと思う。懐かし気に見渡している視線の先には、ちょうど今着ている制服に袖を通すために、毎日必死で勉強していたあの頃の自分が映っているのだと思う。叱られても悔しくても辞めたくなっても、歯を喰いしばって必死に頑張っていたあの頃の自分を見ているのだと思う。またいつでもおいで。頑張れなくなったとき、自分に喝を入れたくなったときに。きっと、中3生の頃にここで頑張っていた記憶が、励ましてくれると思うから。