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カテゴリ:美術・芸術・博物鑑賞
去年の8月の最初の週末と同じように、今年も第1土曜日から日曜日にかけて、1泊で長野県北部を旅行してきました。 初日は長野市内を観光し、2日めは「野尻湖一周遠泳大会」に参加するという行程です。 うちから長野市まで、新幹線と在来線の特急を乗り継いで行くだけでも疲れてしまいます。。。 きょうも去年と同じく、朝4時半に起きましたが、きのう寝るのが遅くなったために、起きるのもやっとの状態で旅行が始まりました。 長野に着いて、まず、「水野美術館」に行きました。 ここは去年も訪れています。 小ぶりの「足立美術館」のような感じの美術館です。 必要以上の金をかけていない外観はむしろ好感が持てるのですが、写真を撮るのに適したアングルがないのは少し残念です。 それで、帰りにバス停2つ分を歩いて、正面と反対側から撮ってみました。 日本式の庭もわずかにありますが、その後ろのビルが‘借景’になっていて、写真を撮る気になれません。。。 さて、今は、「雪月花-日本画に描かれた美-」と題して、所蔵作品の中から展示をしています。 わかりにくい場所のあるコインロッカーに荷物を入れて、3階から見ます。 「雪月花」とは白楽天の詩集『白氏文集』にあることばで、日本人の精神に合い、宝塚歌劇団の組の名前にも使われています。 今回の展覧会では、それぞれのテーマに合った絵を3階に展示してあります。 2階は半分以上が地元の画家の紹介のような感じになっていまました。 (1階に展示室はありません。) 3階でエレベーターを降り、目の前にある仰々しい自動ドアが開くと、極端に横長の和室をイメージした展示室があります。 ここに1点だけ‘贅沢に’展示されます。 今回は児玉希望の『春月』が展示されていました。 夜桜に満月という絵です。 児玉希望は川合玉堂の弟子だったこともあるとのことで、画風が似ていました。 解説には「極端な西洋画的な手法を用い、色の明暗で新深遠な奥行きが表されている」と書いてありました。 日本画としては近景から中景を経て遠景までが連続的にグラデーションでもって描かれているのが現代の描きかたに通じるものがあると思いました。 次の大きい部屋は、まず、「雪」からの展示でした。 真夏に雪の絵を見るのは少し変な気がしました。。。 横山大観の横長の額装の『雪夜』、菱田春草の縦長の軸装の同じく『雪夜』から始まりました。 このあと見て行って驚いたのは、菱田春草の作品が多かったことです。 夭折して作品の数が多くない春草の作品を、「よくもこれだけ集められたなぁ」と感心しました。 川合玉堂の典型的な作風の『雪嶺帰牧』もありました。 大観や春草が朦朧体に走って行ったのとは対照的に、玉堂はかたくなに伝統的な画風を守り、そのあたりの違いがよく見て取れました。 『暮雪』では、以前に1度だけ他の作品で見たことのある「隈取り」という技法が用いられていました。 「隈取り」とは、「雪を絹や紙の地の白さをそのまま生かす」技法です。 雪山を背景に湖を進む蒸気船が描かれ、その上に月が出ていました。 続いては、「月」です。 橋本雅邦の『松下寿老人』は、非常にはっきりした輪郭線をもって描かれていました。 その意味では、大観らの朦朧体とは対極にある感じがしました。 大観の『双龍争珠』という絵は、左上と右下の松の枝が‘変形’して、それぞれがにらみ合う龍の頭になっています。 大観独特の絵です。 「二龍」は「東洋の精神と西洋の科学」を表し、「珠」は「日本人の心」で、2頭の龍がそれをめぐって争っているのだそうです。 春草の『月下狐』は、朦朧体に傾倒する前の時代の作品らしく、丁寧に描かれた狐のふさふさした毛の柔らかさが感じられました。 最後は「花」です。 「花」は植物の「花」ばかりでなく、「女」という意味でもとらえられているようでした。 池田蕉園の『灯ともし頃』は、欄干に着物をかけている女の人の絵で、ピンク色(「桃色」と言ったほうがいいかな・・・)の色使いが上村松園とそっくりだと思いました。 隣に上村松園の作品が2点ありました。 『夏の美人圖』は初期の作品で、描かれている女性の顔がふっくらしています。 それに対して、『夕べ』は脂の乗っているときの作品らしく、凛とした女性の気品がうかがわれました。 松園の「俗を一切描かない」ということばが形になって表れていました。 春草の梅の精を描いた『羅婦仙』、‘ありきたり’なテーマの『紅梅に鶯』、屏風装の『竹に猫』が並んでいました。 ちょっとした「菱田春草展」と言ってもいいぐらい、作品が多数ありました。 次に、大観の『無我』がありました。 3点確認されている大観の『無我』のうちの1点で、「足立美術館」所蔵のものは既に見たことがあるのですが、並べて見なければ、そんなに大きくは違わないと思います。 子どもがぶかぶかの着物を着ている絵ですね。 最後は、菊池契月の作品が並んでいました。 2階に下ります。 池上秀畝、堅山南風、杉山寧、奥田元宋らの作品がありました。 加山又造の『千羽鶴』という作品は、又造らしい銀色の波があちらこちらで何重にも広がっている絵です。 そこに鶴が数羽飛んでいました。 この輪の波の線、「戴金(きりかね)」でできているとは知りませんでした。 アクリル板ははめてありましたが、額のすぐ前まで行ってよく確認しましたが、まったくわかりませんでした。 寸分の狂いもなく細かい作業ができるだけでも、1つの才能だと思いました。 絵そのものより描きかたに感心して、しばらく絵の前で佇みました。 そのあとは、平山郁夫、高山辰雄、山口蓬春、那波多目(なばため)功一といった、現代の作家たちの作品でした。 その次の小部屋は、小路路子、中村潔、吉田幸二の水彩と版画でした。 私としては標準的な見かたで見て90分かかりました。 作品数が多すぎず、きれいな建物でのんびりと日本画の鑑賞ができました。 1階に下りて、グッズ売り場を見ましたが、所蔵作品選2冊(さらに図録1冊)と香合を去年抱えるようにしてまとめ買いしたので、もうほしいものはありませんでした。 ・・・だんだん「ほしい!」と思うものが少なくなってきました。 バスの時間まで20分ほどあったので、美術館を出て、上の画像の位置まで歩いて行って写真を撮りました。 続いて、「善光寺」に行きました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年08月09日 01時01分15秒
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