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カテゴリ:美術・芸術・博物鑑賞
きょうは「伊丹市立美術館」に行って、「素朴絵画の世界/アンドレ・ボーシャン展」を見ました。 ときどき書いていることですが、私の数少ない‘興味のない絵画のジャンル’として「素朴派(稚拙派)」がありますが、例外的に好きなのがアンドレ・ボーシャンです。 このブログに日記を書くようになってから、今までに2つの「ボーシャン展」を見ています。 今回の展覧会は、サブ・タイトルに「世界で一番美しい庭」という言葉が添えられているので、風景画と花の絵が多いだろうという想像がつきました。 ボーシャンは正規の美術教育を受けたことがなく、しかも、絵を描き始めたのが46歳という信じられない遅さです。 でも、その分、誰に影響された風でもなく、派閥にもとらわれず、自分の描きたいように描き、さらに、その対象となるものも少数に絞らずに多岐にわたっています。 美術館に着いて、まず「2階の展示室からどうぞ」と言われたので、そのとおりにしました。 小さい展示室が2つで、中学生が数人グループで来ていて、いすに座って作品をスケッチしていました。 最近、(私としては)‘必要以上’にうるさい美術館とは違って、ある程度好きなようにさせてくれるところはいいなあと思います。 絵を写している中学生に気を使いながら、作品を見て行きました。 2階の展示室は、「風景・身近な人々」というテーマでした。 タイトルが示す通り、風景や人物が描いてあるのですが、風景は非常に大雑把に言うと、印象派とわずかにフォーヴィスムが混じったような感じです。 また、人物画は、あいかわらずの特徴ですが、どの人物もこれと言って違いがなく、表情もまったく変わり映えがしないので、よほどその人をよく知っている人が見なければ、誰が描いてあるのかわからないのではないかと思うようなタッチでした。 まあ、特徴を殺して描いてほしい人にはぴったりかも。。。(笑) 素朴派といっても、ルソーのように緻密で計算されたような感じではなく、かといって、グランマ・モーゼスのように純粋な意味で‘素朴・稚拙’なわけでもありません。 大人も子どももみんな同じ顔で、表情まで同じ。 楽しく踊っているはずのシーンでも、誰1人楽しそうにしていません。 老人も顔だけでは年齢がわからず、髪やひげが白いことで歳を取っているのがわかるという感じです。 3頭身程度の人物がいたり、人の歩幅程度の川が流れていたり、‘常識’で見たら、明らかに下手な絵です。(笑) 木に止まる鳥の絵が3点ありましたが、鳥だけは図鑑のように正確に描かれているように見えます。 でも、判別ができない鳥がいるとのことでした。 これはあとの花についても同じで、必ずしも現実のものをそのまま描いたわけではないようです。 2部屋を見て、「まさかこれだけ・・・?」と思いながら、エントランスに戻って係の人に聞くと、展示は地下に続いているとのことで、降りて行きました。 今度はがらんとした部屋に、「花」というテーマで絵が並んでいました。 庭に生えている(植えてある)草花もあるし、花瓶に生けてあるものもありましたが、背景が無地で、絵の下が切れているように描かれていて、土に生えているのか、花瓶に生けてあるのかわからないものもありました。 この人の絵は、とにかく一生懸命に描いたという感じで、写実的であったり、技法に感心させられたりということがありません。 でも、本当に絵を描くことが好きでなければできなかっただろうという思いが伝わって来ました。 花の絵も、木蓮や、名前はわかりませんがほとんど絵画では見たことがないような花が描かれていて、それが珍しいものを描いたのか、あるいは、実際には存在しないものを想像で描いたのか、よくわかりませんでした。 花瓶に生けてある花も、庭の芝の上にちょこんと置いてあったり、ちょっとした谷間のようなところにあったりで、シチュエーションの‘唐突さ’のようなものもボーシャンの特徴かと思いました。 でも、やはり私は花の絵(静物画)をまとめて見ると、うんざりしてきます。。。 「こんな感じで終わるのかな・・・」と思っていたら、第3会場がありました。 そして、そこのテーマは「神話・宗教・歴史」でした。 私が西洋絵画で最も好きなジャンルです。 普通、素朴派の画家はこういったテーマで描くことはほとんどないし、それ以外の画家でも、風景画、静物画、人物画に加えて、歴史画、宗教画まで描いた画家は稀ではないでしょうか。 日本人にとってはわかりにくいという配慮からか、このコーナーの絵にはすべて解説が添えられていました。 私はボーシャンが宗教画を書くことは知っていました。 個人的に最も好きな絵は『聖アントワーヌの誘惑』です。 ちなみに、残念ながら今回の展覧会にこの絵は展示されていませんでした。 『アメリカ独立宣言』や『ノルマンディーのワインの絞り、100年前』といった歴史・風俗画があるのは、今回初めて知りました。 でも、『アメリカ独立宣言』でワシントンが手にしている文書の英語の綴りが間違っているのは愛嬌でしょうか。(笑) 『ノルマンディーのワインの絞り、100年前』などは、ブリューゲルの作品のようでした。 人物や聖人・妖精などの表情のなさはあいかわらずで、『ニンフたちのダンス』ではニンフたちはまるで能面を付けて踊っているかのよう。。。(笑) 『芸術家たちの聖母』でマリアに抱かれている幼子イエスのかわいくないこと。。。(笑) クレオパトラの絵まであって、最後は驚きの連続でした。 小さい美術館ながら少し気合いを入れた展覧会なのか、見ごたえ十分で、1時間20分かかりました。 ただ、図録が小ぶりで、さらに、図版がサムネイルのように小さいものが多いのが残念でした。 そして、グッズ売り場に“Imprim? en France”(フランスで印刷)の画集が置いてあり、程よいサイズと分厚さだったのですが、価格が‘1万円’。。。 でも、少し前に「カタログ・レゾネ」が出版されていて、それが‘37000円’するので、ためらっていたのが吹っ切れました。 「『カタログ・レゾネ』をあきらめて、この画集を買おう!」ということで、図録といっしょに買ってしまいました。 行きとは逆にずしりと重くなったかばんを提げて、きょうも大変な暑さの中を帰って来ました。 ・・・財布の中はどんどん軽くなる一方ですが。。。(汗) きょう買った画集はフランス語で書いてあるのですが、興味のある部分は頑張って読もうと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年08月15日 22時20分18秒
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