|
カテゴリ:クラシック音楽
日本でも人気の高いピアソラの大作で、意外にも日本初演。会場は、初台のオペラシティの大ホール。ヴォーカルはカティエ・ビケイラ、ナレーターがパブロ・シンヘル、バンドネオンが小松亮太、管弦楽と合唱は特別編成で、指揮が斎藤一郎。詩は抽象的だし、曲も晦渋なところがある。「ブエノスアイレスのマリア」のように覚えやすい旋律もわかりやすい物語性もないうえに、大編成の合唱が必要とあっては、演奏される機会に恵まれないのも仕方がないか。内容は、新しくアメリカ(合州国ではなく、南米大陸の意味)に来た者たちが国作りをする一方、ラプラタ川の地下には洞窟都市があって住民がいるというもの。おそらくこれは、侵略民族の末裔であるピアソラの、滅ぼされた者たちへのレクイエムだろう。その意味では「マリア」より内省的で、ピアソラの、そして作詞者であるオラシオ・フェレールの思想が色濃く表れたものといっていい。歌手のビケイラは、新世代の代表的なタンゴ歌手とのこと。「マリア」で聞いたフリア・センコほど個性的な声ではないが、美声で情感も豊か。ちなみにアンコールの「ロコへのバラード」は、感動的な名唱で、歌でこんなに感動したのはグルベローヴァ以来だった。ナレーターのシンヘルは、本職が指揮者・ピアニストとのことだが、訴求力に欠け、「マリア」のフェレールに比べると、ほとんど「ただの朗読」というレベルだったのが残念。小松のバンドネオンは、なかなか素晴らしい。もっと前面に出してやりたかった。指揮も、よくやっていたと思う。聞くところによるとNHK-FMで放送予定があるそうなので、聞き逃さないようにしよう。CDも出してほしいものである。またその前に、「ブエノスアイレスのマリア」を聞いたことのない人は、ぜひ聴きましょう。(2008.2.29)
ピアソラ:ブエノスアイレスのマリア お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年03月05日 08時12分56秒
[クラシック音楽] カテゴリの最新記事
|