賢治と農

2020/12/17(木)16:17

(宮沢賢治 著)産業組合青年会

農学校教師時代(30)

これは、解釈の難しい詩です。 この詩での産業組合は今でいうところの農協です。 賢治を投影した主人公が、組合の青年会によぱれて、農学校教師として農村を貧困から救うための理想を語ったようです。組合で協同して、山を削って石灰石を採掘して土壌を改良しましょう、家畜を飼ってハム工場や毛織物工場を建てましょう、医薬品を共同購入しましょう、ゴム長靴を作りましょう、と。 それに対して反対する人が、野山には、神社にまつられてはいなくとも神々がいて、神の縄張りなのだから、山を削ったり、工場を立てたりしては、いけない、と言ったということのようです。 主人公もつい怒って、そんな神は神の名にふさわしくないと、言ってしまった、そんな話なのかもしれません。 理想を多くの人に理解してもらうこと、新しいことを始めること、の難しさを感じます。 ところで、農家で組合を作ってハム工場を経営するというアイデアは、よほど賢治は気に入っていたようです。ポラーノの広場にもハム工場の組合が、出てきます。 #宮沢賢治 #産業組合青年会 #神 #身土 #石灰 #ホームスパン #ハム #畜産 #理想 (本文開始)      産業組合青年会        一九二四、一〇、五、        祀られざるも神には神の身土があると    あざけるやうなうつろな声で    さう云ったのはいったい誰だ 席をわたったそれは誰だ      ……雪をはらんだつめたい雨が        闇をぴしぴし縫ってゐる……    まことの道は    誰が云ったの行ったの    さういふ風のものでない    祭祀の有無を是非するならば    卑賤の神のその名にさへもふさはぬと    応へたものはいったい何だ いきまき応へたそれは何だ      ……ときどき遠いわだちの跡で        水がかすかにひかるのは        東に畳む夜中の雲の        わづかに青い燐光による……    部落部落の小組合が    ハムをつくり羊毛を織り医薬を頒ち    村ごとのまたその聯合の大きなものが    山地の肩をひととこ砕いて    石灰岩末の幾千車かを    酸えた野原にそゝいだり    ゴムから靴を鋳たりもしやう      ……くろく沈んだ並木のはてで        見えるともない遠くの町が        ぼんやり赤い火照りをあげる……    しかもこれら熱誠有為な村々の処士会同の夜半    祀られざるも神には神の身土があると    老いて呟くそれは誰だ

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