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賢治と農

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2020.12.30
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主人公は林の中で焚き火をして野宿でしょうか、小屋の中の囲炉裏でしょうか。寒さで震える体に、熱い塩汁をすすり、焚き火を見ていると、さまざまな妄想や後悔が脳裏をかけめぐります。

そして、ここでも白菜が。宮沢賢治の心象のなかでは、白菜の普及の失敗が、本当に心の傷となっていたようです。「白菜をまいて 金もうけの方はどうですか」と、作者の白菜普及失敗をからかった普藤という人物はだれなのでしょうか。

賢治の死後、昭和10年代には、岩手県でも白菜が普及し始めます。賢治の取り組みが10年早すぎたのが残念です。

「この仕事で疲れを覚えたことがない」と断言し、教師の仕事に誇りを感じていた賢治らしくない「のろのろ農学校の教師などして」という珍しい表現に、農村と都会の文化格差に悩む、青年らしい生の苦悩が感じられます。また、焚き火の美しさを通じて農村に住むことの誇り、が描かれているのも興味深いところです。これは、いわゆる「第10稿」といわれる賢治が公開しないよう遺言した原稿の束の中の詩なのです。

#宮沢賢治 #林中乱思 #焚き火 #白菜 #妄想 #第10稿 #格差

(本文開始)

   心象スケッチ
    林中乱思

   火を燃したり

   風のあひだにきれぎれ考へたりしてゐても

   さっぱりじぶんのやうでない

   塩汁をいくら呑んでも

   やっぱりからだはがたがた云ふ

   白菜をまいて

   金もうけの方はどうですかなどと云ってゐた

   普藤なんぞをつれて来て

   この塩汁をぶっかけてやりたい

   誰がのろのろ農学校の教師などして

   一人前の仕事をしたと云はれるか

   それがつらいと云ふのなら

   ぜんたいじぶんが低能なのだ

   ところが怒って見たものの

   何とこの焔の美しさ

   柏の枝と杉と

   まぜて燃すので

   こんなに赤のあらゆる phase を示し

   もっともやはらかな曲線を

   次々須臾に描くのだ

   それにうしろのかまどの壁で

   煤かなにかゞ

   星よりひかって明滅する

   むしろこっちを

   東京中の

   知人にみんな見せてやって

   大いに羨ませたいと思ふ

   じぶんはいちばん条件が悪いのに

   いちばん立派なことをすると

   さう考へてゐたいためだ

   要約すれば

   これも結局 distinction の慾望の

   その一態にほかならない

   林はもうくらく

   雲もぼんやり黄いろにひかって

   風のたんびに

   栗や何かの葉も降れば

   萓の葉っぱもざらざら云ふ

   もう火を消して寝てしまはう

   汗を出したあとはどうしてもあぶない







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最終更新日  2020.12.30 06:37:34
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