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賢治と農

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2021.04.27
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カテゴリ:羅須地人協会時代
宮沢賢治の「生徒諸君に寄せる」は、未完成の原稿しか存在しません。
そこで、賢治の実弟の宮澤清六氏らが、賢治の死後の戦後に原稿を並べかえるなどして形を整えたのが今回の版です。
「朝日評論」1946(昭和21)年4月号で発表されると、読者の感動を呼び高く評価され、広く読まれました。

戦時中は愛国主義、精神主義的な一面がことさらに強調されていた賢治に、社会変革者としての一面もあったことが、一般に認識され、戦後の民主化のなかで、賢治が再評価されるきっかけとなりました。

しかし、故人である原作者本人の了承を得ない編集は、原作者の意図を反映しない恐れがあるとの意見もあり、現在では、以前にご紹介した、下記の未完成版二種類で鑑賞することが多くなっています。

(宮沢賢治 作)一九二七年に於ける盛岡中学校生徒諸君に寄せる
https://plaza.rakuten.co.jp/kenjitonou/diary/202012100001/

(宮沢賢治 作) 生徒諸君に寄せる
https://plaza.rakuten.co.jp/kenjitonou/diary/202104260000/

(本文開始)

生徒諸君に寄せる

中等学校生徒諸君
諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか
それは一つの送られた光線であり
決せられた南の風である

諸君はこの時代に強ひられ率いられて
奴隷のやうに忍従することを欲するか

今日の歴史や地史の資料からのみ論ずるならば
われらの祖先乃至はわれらに至るまで
すべての信仰や特性は
ただ誤解から生じたとさへ見へ
しかも科学はいまだに暗く
われらに自殺と自棄のみをしか保証せぬ

むしろ諸君よ
更にあらたな正しい時代をつくれ

諸君よ
紺いろの地平線が膨らみ高まるときに
諸君はその中に没することを欲するか
じつに諸君は此の地平線に於ける
あらゆる形の山嶽でなければならぬ

宙宇は絶えずわれらによって変化する
誰が誰よりどうだとか
誰の仕事がどうしたとか
そんなことを言ってゐるひまがあるか

新たな詩人よ
雲から光から嵐から
透明なエネルギーを得て
人と地球によるべき形を暗示せよ

新しい時代のコペルニクスよ
余りに重苦しい重力の法則から
この銀河系を解き放て

衝動のやうにさへ行われる
すべての農業労働を
冷く透明な解析によって
その藍いろの影といっしょに
舞踏の範囲にまで高めよ

新たな時代のマルクスよ
これらの盲目な衝動から動く世界を
素晴らしく美しい構成に変へよ

新しい時代のダーヴヰンよ
更に東洋風静観のキャレンジャーに載って
銀河系空間の外にも至り
透明に深く正しい地史と
増訂された生物学をわれらに示せ
おほよそ統計に従はば
諸君のなかには少なくとも千人の天才がなければならぬ
素質ある諸君はただにこれらを刻み出すべきである

潮や風……
あらゆる自然の力を用ひ尽くして
諸君は新たな自然を形成するのに努めねばならぬ

ああ諸君はいま
この颯爽たる諸君の未来圏から吹いて来る
透明な風を感じないのか

(本文終了)

#宮沢賢治 #生徒諸君に寄せる #宮澤清六 #朝日評論





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最終更新日  2021.04.27 03:41:14
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