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カテゴリ:農学校教師時代
1924(大正13)年7月の日付不明の詩です。
「ほほじろ」は小鳥のホオジロでしょうか。 若者たちが、徹夜でガスエンジンを操作して、灌漑水を川からくみあげていたようです。 科学の力を使って、自然の恵みを確保し、干ばつという、自然災害に立ち向かう農村青年たちと、郷土に対する讃歌のようです。 (本文開始) 一五七 〔ほほじろは鼓のかたちにひるがへるし〕 一九二四、七、 、 ほほじろは鼓のかたちにひるがへるし まっすぐにあがるひばりもある 岩頸列はまだ暗い霧にひたされて 貢った暁の睡りをまもってゐるが この峡流の出口では 麻のにほひやオゾンの風 もう電動機(モートル)も電線も鳴る 夜もすがら 風と銀河のあかりのなかで ガスエンヂンの爆音に 灌漑水の急にそなへたわかものたち、 いまはなやかな田園の黎明のために それらの青い草山の 波立つ萓や、 古風な稗の野末をのぞみ 東のそらの黝んだ葡萄鼠と、 赤縞入りのアラゴナイトの盃で この清冽な朝の酒を 胸いっぱいに汲まうでないか 見たまへあすこら四列の虹の交流を 水いろのそらの渚による沙に いまあたらしく朱金や風がちゞれ ポプルス楊の幾本が 繊細な葉をめいめいせはしくゆすってゐる 湧くやうにひるがへり 叫ぶやうにつたはり じつにわれらのねがひをば いっしんに発信してゐるのだ (本文終了) #宮沢賢治 #ほほじろは鼓のかたちにひるがえるし #干ばつ #ヒデリ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.07.18 05:17:31
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