米地文夫 著 「宮沢賢治の「税務署長の冒険」における創作地名 : イメージのなかの景観と関わって」を読む 3 モデルとなった事件
宮沢賢治 著 「税務署長の冒険」を扱った論文を読んでいます。
宮沢賢治 作 「税務署長の冒険」
https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/1941_17444.html
米地文夫 著 「宮沢賢治の「税務署長の冒険」における創作地名 : イメージのなかの景観と関わって」
https://iwate-u.repo.nii.ac.jp/index.php?active_action=repository_view_main_item_detail&page_id=13&block_id=21&item_id=11543&item_no=1
この論文では、作品のモデルとなった事件が次のように書かれています。
(以下引用)
大正 12年 6月 1日,花巻税務署は8人の税務属を和賀郡湯田村および沢内村の隣接する二つの村へ密造取締まりに派遣した。税務属たちは2隊に分かれ,1隊は盛岡,雫石を経て,山伏峠を越えて北から沢内村に入り,1隊は黒沢尻 (現北上)から平和街道経由で東から湯田村に入った。山間地の湯田村はちょうど田植えの終わったあとの慰労の宴会 「早苗振 (サナプリ)」最盛期でもある。酒を飲む確率の極めて高い日を税務署は選んで取り締まりを行ったのであった。
北から入った隊の一人,白鳥税務属は,午後 7時ごろ湯田のある家で密造の証拠を見つけ,押収 したが,その帰 りに後ろから? 襲撃され,顔に全治三週間の傷を負い,一時昏睡し帽子や帯剣その他証拠物件などを奪われた。意識を取り戻した白鳥税務属は,同僚に救われ,湯田村川尻の宿舎に帰り,同夜治療を受け,花巻警察署川尻分署に届け出た。翌 2日未明に川尻分署の巡査が犯人 として,前記農家の夫婦を逮捕,3日には花巻直裁判所検事代理 として花巻警察署長が花巻税務署長 らとともに現地へ向かった。襲撃された白鳥税務属は4日に花巻に戻った。
(引用終了)
作品中の「シラトリ属」と同じ名前の白鳥税務属が、取り締まり中に農家の襲撃を受けてケガをしたそうです。
作品では税務署長がケガをしますが、現実では部下がケガをしていました。
これについて、論文では、「怪我をした白鳥税務属のように,実際に取り締まりの第一線に立ち,密造者たちの憎悪の的となり,その必死の抵抗に身をさらすのは,ヒラの下級官吏である。賢治はそのことへの皮肉
もこめて(略)税務署長自身の潜入 という物語を書いたのであろう。」とのべています。
「指揮官先頭」、「ノブリス・オブリージュ」、のように、地位の上の者が自ら危険に飛び込むほうが、物語としても盛り上がる、という一面もあると思いました。
#宮沢賢治 #税務署長の冒険 #酒 #産業組合