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カイロプラクティックのサイエンス
ブライアン・バジェルDCの研究最前線
カイロで最重要
アジャストメント(マニュピレーション)はカイロプラクティックにおいて決定的に重要な治療法である。
他の職種の臨床家も時には使うことがあるが、アジャストメントは最もカイロプラクティックと関連があり、カイロプラクターに最も多く利用される治療技術なのだ。
正しい脊椎マニュピレーションには臨床効果があるということは、多くの研究で示されている。
したがって、カイロプラクティックの研究者、教師、臨床家にとってはこの技術がもたらす結果を正確に理解することが重要だ。
またそれは、学生にテクニックを教える際や、自身のテクニックの向上、臨床効果の理解の上で役立つ。
アジャストメントは、高速度低振幅のスラストと定義される。
加えて私たちは、接触点、方向、そして作用が特定的であると思いたい。
これらの要素は科学的に研究できる性質のものである。
例えば、生体または死体を用いて、アジャストメントの際に堆骨にかかった力と堆骨の動きを測ることが出来る。
これらを行った質の高い研究に付いて次に紹介する。
力学的特定性
接触圧力、振幅、特異性
Herzogらは、下部胸椎の脊椎マニュピレーションの作用について、死体を用いて研究を行った。
AP方向への胸椎アジャストメントの最大力は238Nであり、これはマッサージなどの軟部組織のテクニックと比べても同等もしくは少ない力であった。
25平方ミリの対象域の平均最大力は5Nで、トリガーポイントで使われる力よりかなり小さく、アクティベーターとほぼ同じであった。
つまり、この研究では、かなり優しい力でアジャストメントが行われたといえる。
最大圧点(最大圧がかかった部位)は、アジャストメントの最中に平均9.8ミリ動いた。
言い換えると、私たちはコンタクト・ポイントに正確に接触しようと試みるが、実際はアジャストメントの最中にいくらかのズレが生じているのである。
測定値は、PA方向への動きが6~12ミリ(理学療法のモービリゼーションの場合は2~3ミリ)、側方への動きが3~6ミリ、回旋が2度だった。
作用は小振幅であったといえる。
さらに場合によっては、対象対骨と、そのすぐ上と下の椎骨の間に少しの動き(1ミリの移動と1度の回旋)が観察された。
動きの最中にはすべての椎骨がどう方向に同程度動く一般のモービリゼーションとの大きな違いである。
まとめると、脊椎マニピュレーションの最中に相関的動きがあることから、アジャストメントの力学的作用は特定的であるといえる。
椎骨は移動しない
一方、通常アジャストメントの後には、椎骨の相対的位置は変化しない。
このことは、椎骨の位置異常に基づいて評価とマニピュレーションを行うと主張するある種の「テクニック・システム」に疑問を呈する。
Herzogらの研究グループの様々な実験では、アジャストメントの負荷前から最大付加時までの所要時間は約100ミリ秒であった。
他の研究では、ターグルリコイルの所要時間が約50ミリ秒という結果がある。
ここで言えることは、テクニックに関わらず、アジャストメント一般は、高速度であるということだ。
礫音の正体
・・・・・二つの周波数・・・・・
アジャストメントの際の礫音は、低周波(0~50Hz)と、高周波(200Hz以下)の両要素を含んでいる。
低周波音はアジャストメントの間中続く。
つまり組織の圧迫と移動により起こる総合音である。
高周波音は5~20ミリ秒続き、中手指節関節を用いた実験では関節キャビテーションの時間と相関していた。
音はどこから来る?
中手指節関節マニピュレーションをレントゲンで観察した実験では、マニピュレーション後の関節に、発生した気泡の影が実際に映し出された。
ところが、頚椎、腰椎の椎間関節のMRI研究では、同じ結果が得られなかった。
ナショナル大学のCramerらの研究グループでは、腰椎マニピュレーション後に椎間関節のギャッピングが観察されたが、気泡はなかった。
CMCC所属のGlynn Tillの行った頚椎の実験では、ギャッピングも気泡も観察されなかった。
これらは、私達が「キャビテーション」という用語を使う際は、より注意深くあらねばならぬことを示唆している。
以上見てきたように、脊椎マニピュレーションの力学的特性は、最近ではかなり詳しく研究されている。
これに比べ、マニピュレーションの神経生理学的効果はあまりわかっていない。
なぜなら人間で測定するには侵襲的な方法を用いなければ困難だからである。
生理学的作用
活動電位の発生源は未知
最近Collocaらは、腰椎の手術中の患者で、椎骨を動かした際の神経活動電位を測定した。
予測れるように、椎骨の動きは、後枝内側枝に活動を起こさせた。
しかし、この神経電位の発生源が関節受容体なのか、筋紡錘なのか、またはそのほかの受容体なのかは特定できない。
効果の解明は続く
腰椎アジャストメントは、脊椎運動ニューロンの活動を上げ、このことにより筋肉内の反射反応を促進する。
このような反応は、例えば姿勢を正すために役に立つ。
ニューヨーク・カイロプラクティック大学のDonald Dishman,RMITのBarbara Polusはこの領域の研究を続けている。
これまで述べてきたほかに、マニピュレーションに対する反応としてのエンドロフィンの放出、免疫細胞の活動増加、心拍数の自律神経制御などに関する興味深い研究がある。
これらの生理学的研究が、最終的には、痛み、姿勢、内蔵機能に対するマニピュレーションの効果の解明に結びつくであろう。
次回はこの分野を紹介する。
この報告書は、2004年3月12日付「CHIRO-JOURNAL」に掲載されたものです。
最近以下の情報が入って来ました。(朝日新聞Web.comより)
腰椎ヘルニア治療、レーザー治療推奨せず 厚労省研究班
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ひどい腰痛の多くを占める腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアの治療指針を、厚生労働省の研究班がまとめた。
近年、急速に普及したレーザー治療や骨格構造のゆがみを手で正すカイロプラクティックについては、論文など十分な科学的根拠が蓄積されていないなどとして、推奨しなかった。
椎間板ヘルニアは、椎間板の中のゼリー状の組織がはれたり、飛び出したりして神経を圧迫する。治療指針は、強い痛みが続くなど重症の場合は、長期間痛み止めなどを使う保存療法より、手術をした方が成績が良いとした。
また、手術法では、医師が顕微鏡を見ながらする顕微鏡手術が、長期的な成績も優れている、として推奨された。
一方、レーザーでヘルニアを小さくする治療法は、日帰りも可能として近年急速に広がっているが、有効率を顕微鏡手術などと正確に比較検討した科学的な報告が十分にない、周囲の骨や神経などへの副作用や合併症も報告されている、保険適用外で経済的負担も多い、などとして推奨しなかった。
カイロプラクティックはさらに判断材料が乏しいとした。
最近、普及しつつある内視鏡手術については、まだ十分な症例報告がなく、言及しなかった。
研究班長の四宮謙一東京医科歯科大教授は「患者が治療法を選ぶ時の参考になるよう、今後患者向けのものも作りたい。今回は、分析のもとになった論文の多くが海外の事例で、限界もある。
今後は日本整形外科学会が主体となって国内の症例分析を積み重ね、日本ならではの治療指針に育てていきたい」と話す。
(2004年 04/25 13:33)
( 論評 )
この報告では、どれだけ日本以外の海外でのカイロプラクティックの実績を調べているのかは判りません。
世界が認可している技術が日本では認可もされない、この矛盾点には全く無関心を装っているかのようにも受け取れます。
少ない範囲での検査結果と、外科手術のみを推奨している論議には、大いに疑問があります。
厚生省も、広く世界の視野に立って、物事を判断しなければなら無いでしょう。
そうしないと、技術は優れている日本の医療も、制度ではかなりの後進国であることは間違いがありませんから、患者さんの立場に立った医療現場を構築しなければならない時期に入ったと感じます。
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