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ココ の ブログ

変わった形の建物(1)

変わった形の建物(1)

 海外では先端技術を遣ってドンドン変わった建物が建って行く。この程、シンガポールに建った建物はアメリカのゼネコンが建てたリゾート・ホテルで、3棟の建物の屋上に橋桁を渡して、其処にプールや空中庭園を配している変わったというか奇抜なアイデアのものだ。超高層ビルの上にプールを設ける意味は分からないが、耐震性から言えば、プールの水が静振運動を起こすので地震には効果的であるのかも知れない。3棟の建物は、夫々固有の振動をするから橋桁との接点(ピン)にはダンパー若しくはショック・アブソーバーが儲けられているだろう。日本にも空中庭園を設けた超高層ビルがある。それは、2棟の建物を繋いで門型になっていて言わば凱戦門のお化けのようなものである。

シンガポール
シンガポールの変わったビル(屋上に橋桁が乗っていて、其処にはプールや空中庭園がある)。

 大阪で仕事をしているから何気なく見かける建物だが、未だ一度も空中庭園に上がった事はない。ビルや横のホテルには何度も行っているのに登る気がしないのである。たまたま大学に遊びに行って恩師と話していると、偶然、その日に設計者(原 広司 氏)の講演会があると言うので教授と一緒に講堂へ行って聴いた事があった。ビルが出来上がったばかりの頃だったので世間の耳目を集めていたから学生も多く参加していた。話の内容から建物の設計概念と概要が分かってしまうと興味が失せてしまった。というのは、建物は面白い形だが、それよりも2棟の建物の間に空中庭園部の版をジャッキ・アップして行く時の方が建物そのものよりもパフォーマンス性があって面白かったという説明を聴いて会場の学生がドッと笑ったのだった。

Singapole(2)
工事中の風景(シンガポールのリゾート・ホテル)。

 つまり、現場を知らない設計者と学生の間での笑いだなと白けてしまったのだった。工事監理を長年していると、最初の内は仮設工事の複雑さとかプロセスを観ているだけでも面白いもので、その度に創意工夫を感じて感心してしまうものだが、それを数多く経験すると今度は興味よりも安全性が気に掛かるようになって来る。設計者はそういう事まで考えないから初めて観る工事に驚くのだろうが、本当は工事過程を考えてディテールまで入念に設計をするのがプロというもので現実的で事故も無く建って行くというものなのだ。単に絵を描くだけでは原案に過ぎないのである。学生は其処が分からないのだ。

梅田シティー・ビル
大阪にある梅田シティー・ビル(凱旋門のような形の屋上には空中庭園がある)。

 当時、原 広司氏は東大教授だったが、続いて京都駅ビルを設計し大空間を演出して京都の玄関のイメージを変え話題に成った。京都は閉鎖的な街で市民のプライドが高い事で有名な処だが、新し物好きだから直ぐに新しい駅ビルは迎え入れられたものの、古くから問題になっていた南北問題を解決しないままで終わってしまったのには禍根を残したのだった。氏は南北問題を知らなかったのだろう。南北問題というのは京都駅が京都の街のど真ん中を東西に走っていて北の部分と南の部分に分断している事で、京都を二分してしまっている事を指す。南北に分断して何が問題なのかと言えば、北の古くからの旧市街と南の未開発部分との格差(経済性、美観性、利便性、偏見など)を温存させたという事である。

Umeda City
梅田シティー・ビル(2)。

 設計は指名コンペ方式で、他に有力な案があったのだが、JRの旧体質が依然として勢力をもち東大派が占めていることもあって最終的に東大教授の案が有力候補を覆して当選して物議をかもしたのだった。他の案には南北の行き来が出来るものがあった。南北の幹線道路を駅の下に通せば交通渋滞も緩和され経済効率も上がると予想されたものだった。結果的に、京都駅で分断された幹線道路(烏丸通り)は、う回路として西の堀川通りと東の河原町通りを通る従来の方式のままである。四条烏丸(中京)辺りで生まれ育ったボクは子供の頃「駅裏(京都駅の南側)なんかへ行ってはいけない」と禁止されていたものだった。京都人とは北側に住む市民の事を指すのだという事も知るようになるのである。

Kyoto Station.JPG
新しい京都駅。

 時代が変わって、今では駅裏という言葉も無くなり、ホテルや大型ショッピング・モールも出来、新しい京都の顔となっている。が、依然として中心地は駅の北側、それも2kmほど北の四条通り界隈である。つまり、先日終わったばかりの祇園祭の中心地である。その代わりと言っては何だが、新しく出来た地下鉄(烏丸線)は駅の下を横断し南北を従貫しているから人々の流れは格段に増え便利になった。人の流れがスムーズになった事で次第に京都も変わって行く事だろう。今日のブログ「変わった形の建物」の話が脇道にそれてしまったので戻せば、市の北東部にある京都会館(コンサート・ホール)は、コルビジュエの弟子であった前川國男さんの名建築だが、今や時代の波で存続か建て替えが検討されている。(つづく)

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