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ココ の ブログ

変わった形の建物(5)

変わった形の建物(5)

 そもそも「変わった形の建物」とは何を求めているのだろう。奇抜なフォルムやファサードで人々を驚かせたり感嘆させたりして惹き入れようとする為なのだろうか。必ずしもそうでは無いだろう。目的が最初にある筈だからである。形は結果であり、目的が様々な角度から検討され、時代に合致し、未来戦略としも耐え得ると判断された結果、プラン(平面図:マスター・プラン)を立ちあげれば、そういう形になったというのであれば理想的なのだが、そうも行かない処が建築家泣かせなのである。余りにも平凡なファサードやフォルムでは建築家のプライドが許さないだろうし、クライアントも満足しない。折角建てるのだからと誰しも意気込む筈である。それが百億も1千億もするものであるなら尚更である。時代をリードさせるインパクトが欲しいのだ。

1.Pentagon(米国防総省)
1.Pentagon(米国防総省)。機能性だけを追求した結果、五角形の形になったオフィスビル。

 しかし、そういう大型プロジェクトにかかわる人々の殆どは素人に近い。というよりも金儲けに目がくらんだ政治家がウヨウヨたむろし、専門家と称するおかしげな評論家を連れて来てペーパー(計画書案)を出し、口先三寸で役人や審議会を口説き落とすのだ。裏では、金と女と地位が取引の材料にされ、誘惑に弱い連中から落ちて行く。だから建築家は有力政治家の後にピッタリと付いている。そういう事をするのが嫌な建築家にはそういう仕事は廻って来ない。背後にうごめく組織は同じ学校の出身者で組織されていたり、同じ系列の企業や親族関係の人間である場合が多い。その伝統ある学校ですら彼等の先輩達が同じ目的の為に創立させたものなのであるだけに言わずもがな的に代々暗黙の了承として伝わって行く。

2.サグラダ・ファミリア(ガウディ)
2.サグラダ・ファミリア(ガウディ)。これも機能性を増殖させて行った結果の教会(塔屋は鐘楼)。

 此処まで言えば、欧米のカレッジや大学がそういう趣旨で作られたものである事が分かる筈だ。アイビー・リーグと呼ばれるアメリカ東海岸沿いにある有名校の大学院は、如何にしてそれらしき理論を構築させて人を騙し、世界から金を集め、自分達の栄華の為になる手法を教え研究している処だと言い切っても良いだろう。日本で言えば東大だ。成績優秀な学生は大学に残り、競争の末、教授の椅子を得る。その次に優秀な学生は官僚に成る。学者や官僚に成れなかった成績優秀な学生の中でも金のある者(親が金持ちという事)は親の企業を継ぐだろうし、継ぐべき企業を持たない学生は一流企業のトップを目指す。残りは、それでも難関を突破しただけの頭があるから野心を抱いて法曹界に入るか自分で起業し成功を目指す。

3.フランク・0・ゲーリー
3.ウォルト・ディズニー・コンサート・ホール(フランク・0・ゲーリー)。ガンダムのような要塞的建物だ。

 それらは総て欧米で為されて来た手法である。日本は、明治期になって欧米列強に追いつく事が緊急の命題だった。その為には先ず教育とインフラの整備だと気が付いた偉い連中が居たという事だ。その下地は江戸時代に出来上がっていたから、一寸勇気のある国士が行動する事で日本は一直線に「追いつけ、追い越せ」と頑張って来れた。そして行き尽きる処まで来て欧米列強の脅威に想われ、袋叩きにあった訳であった。この事は何度も書いて来たから「亦それか」と想われるかも知れない。しかしそれは事実なのだ。が、唯一つ、抜け落ちていたものがあった。それは西欧文明・文化を導入した際に、テクノロジーと文学を結びつけていたキリスト教(精神)だけを導入しなかった事だ。

4.マンション(サインツ・デ・オイサ)
4.マンション(サインツ・デ・オイサ)。増殖しているような建物である。

 それは江戸時代にキリシタンとして弾圧して来た名残りで、意識的に抜け落ちさせたのかも知れない。その代わり日本には神道と武士道というものがある。そう考えた明治の国士達は近代日本建設の為に奔走したのだった。古い話はこの辺で止め、先を見れば、欧米列強と呼ばれた国々は今や疲弊してしまってBRICにとって代わられようとしている。だが、日本は彼等から学ぶものは無い。むしろ指導・教育する立場だ。その見返りに資源をと単純に想えるのだが、そうは簡単に問屋が卸さない。彼等とて自前で開発して、より多く潤いたいのである。日本は現地に骨を埋める気で行けば生き残れるだろう。丁度、南アフリカに白人が入植したようにだ。しかし、彼等の入植は見せかけだった。

5.ロンシャン(ル・コルビジェ)
5.ロンシャンの教会(ル・コルビジェ)。牧歌的な自由さが感じられる。

 白人達はせっせと相当な利益を得、本国に送り続けて来たのだった。その結果、アフリカーナは怒ったのだ。やっと気が付いたアフリカーナは長い闘いの末、やっと人間らしい生活のスタートラインに就いたばかりだ。BRICはそれを観て来たから同じ轍は踏ませないと虎視眈々と構えている。しかし、日本はBRICからは学ぶものはないのだから、入って溶け込む(同化する)しか生きる道は無いとボクなんかは考える訳だ。次代の若者達の生きる方法だと想うのである。BRICの中でも中国はその点、戦略家だ。そこに日本が入って行って頑張っているのだから日本も強かなものだ。上海や深川・大連の建築群を観て居ると、まるでパビリオンのような建物が多い中、観るべき程のものが無いのは、日本がまだまだ入り込める余地があるという事だ。(つづく)

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