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ココ の ブログ

長生き(1)

長生き(1)

 今朝、近所の主治医の処へ薬を貰いに行って何時もの様に血圧を図って貰っていると「もう一度測りますから、二三度ばかり深呼吸をしてくれますか」と言われ、ゆっくり大きく呼吸をしてから測り直してもらうと、それでも血圧は高く、上が156、下が95だった。「相変わらず高いなあ。薬は何時飲みました?」「1時間ほど前です。今日は朝食が少し遅くて・・・」「そうですか・・・、もう暫くすれば薬も効いてくるでしょう」というやり取りをした。二週間に一度診てもらっていて毎回同じ事の繰り返しをしている。通常は上が135、下が85ぐらいなのだが、先生の白衣を見るとそれだけで血圧は上がってしまう。その事も毎回言っているのだが先生は聴いても居ない。カルテの記録を見ながらふんふんと納得している。「他に変わった事はありませんか?」と言われ「相変わらず左耳の聴こえが悪くて叶いません」と応えた。

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 左耳が聴こえ難いのは3年前の突発性難聴の後遺症で、中音が聴きとり難く、高音と低音が何とか聴こえる程度だ。中音は人の話し声の波長だから話し声が聴きとり難く、聴き返すのが面倒で半分勘で返事をする事もある。会議の時はいい加減な事も言えないから聴き返す事に成る。「悪く成って、もう相当になりますネ。固まってしまったのかも知れないな。それはそうと自治会長をやっていた最長老のSさんをご存じですか?」「名前は聴いてはいますが、顔の方は・・・」「そうですか、実は昨夜、彼女のお通夜がありましてネ、ボクは主治医をしていたものですから行ってきたんんですが、何と103歳という事でした」「ほう、長生きですネ。そう言えばお隣のHさんも長生きで100歳です。先日、散歩に出ている処に出逢って立ち話しましたヨ」「Hさん・・・、ああ、あの人は元気で、歯も丈夫で足腰も達者で・・・」 

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 「そうでしたか、Hさんは、お隣さんでしたか・・・」そんな会話をして診察を終え、薬を二週間分受取って帰った。雑談の続きがあって、要訳すれば、かつて自治会長をしていたSさんについては、彼女は長生きではあったが寝た切りで気の毒だったが、それに引き換えHさんは元気で、食べ物も自分の歯で美味しく食べているから同じ長生きでもそう在りたいものだとか、自治会の顧問をしている関係で先生は、ボクが自治会長をしていた時の議事進行が良かった事を述懐し「だらだらと時間ばかり喰う会議は何とかしないとねえ」と毎月の役員会や老人会の会合について日頃感じている愚痴を言って、もう一度、ボクに自治会長をしてくれないかと勧めたが「いえいえ、もう煩わしい人間関係はこりごりです」と断っておいた。「お蔭さまで時間的には余裕がありますが、自分では何もしないくせに文句ばかり言う連中がゴロゴロ居ますから連中に任せておきましょうヨ」と言っておいた。

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 ボクの住む住宅団地は超高齢者が多く、私立の立派な老人病院が在る事もあって、市内で平均寿命の高い処である。病院に入院している超高齢者だけで100人は居るだろう。入院希望の患者が多く、順番待ちなのだそうだ。隣にケアセンターが数年前に出来て、来賓として市長とボクが二人して招かれた事があった。市長の次にボクも祝辞を述べさせられたのだったが、一介の自治会長の祝辞なぞ誰も本気で聴きはしないだろうと想い、ケアセンターの名称がアップル・ハウスという由来を事前に病院のホームページで調べておいた事を簡単に説明したのだった。それは宗教改革で有名なマルチン・ルターが「たとえ明日この世が終ろうとも私はリンゴの木を植える」という言葉から引用したもので、人生の終末においても希望を持ってケアして行きたいという理念に賛同してつけられた名前なのであった。

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 ボクもそれに賛同し、将来ボクもケアを受ける年頃になれば是非とも利用したいものだと述べておいた。ついでにマルチン・ルターの原文「たとえ明日この世が終ろうとも・・・」をドイツ語で読みあげて紹介した処、ホールの招待客からホーッとどよめきが起きたのだった。多分、マルチン・ルターの名前だけは知っていても彼の言葉を原文で聴くのは初めての事だったのだろう。挨拶が終わり、パーティーに入ると市長とボクの周りに県会議員や市会議員や何等かの役割を持った人々が集まって来て名刺を出して挨拶をされる始末で、想った以上に祝辞の効果があった事を感じた。それ以降、自治会や老人会でそのケア・センターを利用する事が多くなって、レストランやカラオケルームが人気を博している。近場にそういう便利な施設があるのは喜ばしい事で、自治会にも老齢者が増え、今後益々利用者が増すだろう。

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 ところが、ボクなんか老人といっても中途半端な世代で、個人的にも若く見られるからケア・センターを利用するのはずーっと先の事になるだろうし、今はゴルフに精を出している有様だ。再度の自治会長を要請されても人的な煩わしさから断る位なのだ。幾ら長生きの社会が来ようとも個人的には様々な人々が居る訳であり、本心からボランティア精神を発揮する人々が増えない限り、自分では何もせず文句ばかり言う様な老人の面倒なぞ見たくも無いというのが本音だ。長生きする事は良い事なのだろうが、傍迷惑な生き方をする老人が何処の社会にも居るもので、そういう人々は嫌われ孤独になって行くのが目に観えるだけに哀れに想える。嫌われ孤独になっても金があってケア付き病院に入れる老人は良いが、金も無く嫌われる老人は入れず益々意固地になるだろう。薬を貰って帰る道中、一寸考えさせられた。(つづく)

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