DJ Kennedy/life is damn groovy

2010/03/29(月)05:15

Goodbye, Mr. Mellow-Hello

   昨日、「Jakeが亡くなったんだ」と父から電話があった。父の親友だ。彼は私にも たくさんの思い出をくれた人だった。 この人を、私は子供の頃から父と"Mr. Mellow-Hello"と呼んでいた。 彼の「こんにちは」の声はまるで歌うようにスムースで甘かったのだ。3つの私も なんだか少し恥らってしまうくらい、本当に素敵な声だった。    素敵なのは勿論「こんにちは」だけではなかった。歌声がこの、Perry Comoに とてもよく似て美しかった。Jakeは時折、父と一緒に帰って来ては眠っている4歳の 私をゆり起こし、父とブランディを飲みながら、目をこすりこすりの私にピアノの伴奏を させて歌うのが好きだった。 こちらにしてみれば迷惑な話だったけれど、でも一度その声を聴くなり子供ながらに どこか光の暖かいラウンジにでもいるような気持ちになったものだ。 ムーディな歌声に、キッチンから母も出て来て「今日も絶好調ね」とJakeの小さな ディナー・ショーに酔いしれる。やがて彼と父が肩を組んで一緒に歌い始めるのだが、 これがひどいものなのだ。Perry ComoのステージにJames Brownが無理やり上がり 妨害しているような感覚だ。いやJ.B.は私だって大好きだし、父をJ.B.に例えれば 父も嫌な気はしまい。けれど、どうにも聴いていられない、ハーモニィもへったくれも あったものではない。母と一緒になって「パパ、やめて!」"Boooo! Booooo!"     Jakeはこの時実はすっかり、Perry Comoになりきっている。乗り移ったと言っても 良いくらいに、何だか振る舞いや視線すら変わってくる。母が料理を取り分けて彼に 手渡せば、"Thank you, madam"と言って母の手にキスをしたり、とうとう睡魔に 負けそうな私を抱いてベッドまで連れていくと、ベッドサイドに座ってPerry Comoの (本当は違うけど)"Ave Maria"を子守唄に、得意のイタリア語で歌ってくれた。 そんな幸せな思い出が、記憶を手繰り寄せればまだまだたくさんある。 3つでピアノを始めてから、ひたすらクラッシックを耳に馴染ませてきた私に様々な 音楽の世界を教えてくれたのも、ピアノを離れればAl Greenばかり聴いていた私に スタンダードの美しさを教えてくれたのも、私が出会った音楽の専門家達ではなく、 他ならぬJakeだった。 父の電話の向こうで、70年代にJakeと父が一緒に買ったレコードがかかっていた。 「パパ、あの頃のアルバムだね」 父は「もう一度ここで歌わせたいなぁ」 そしてPerry Comoの歌声に向かってこう言った。 「君の曲だぞ、Jake.いてもたってもおられずに戻ってきてるんだろう。さぁ歌え」 Tribute to my "Mr. Mellow-Hello" 私の子守唄 にほんブログ村 Thank you so much for all your support!

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る