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       鶴舞う形の・・・

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「娘の交通事故」

「第1章/娘からの電話」

2009年5月7日(木)

それは1本の電話から始まった・・・。


ゴールデンウィーク明けで仕事中の私の携帯に娘(19歳)から電話が来た。

娘 「車ぶつけちゃったんだけど・・・。」

私 「怪我は?相手が居る?警察には連絡した?」

と言う私の問いに

娘 「怪我は相手も私も大丈夫、警察は相手が連絡した。」

私 「それじゃ、あとは警察に任せて・・・車は乗って帰れる?」

娘 「車は・・・動かない・・・」

どうも娘の様子が尋常ではない感じがして

私 「それじゃ、今からそっちへ行くけど1時間くらい掛かるよ。」

そう言うと私は現場へと車を飛ばした。

事故現場へ到着してみるとそこには・・・。



「第2章/多勢に無勢」

現場に近づくと前部が大破した相手の車が目に入ってきた。

娘の車は交差点の角の空き地に飛び込んでいる。


娘が一人で佇んでいる場所に車を停めて娘の顔を見ると

涙で流れたマスカラでまるで「ロックバンドのキッス」の様な顔になっている。

娘のこんな泣き顔を見るのは保育園の運動会以来だなと思いながら

私 「ハンカチ持ってないの?」

と訊くと

娘 「ティッシュがあるから・・・。」

との声にもならない返事。

私は常にハンカチを2枚持ち歩いているのだが、

この時ほど2枚持っていて良かったと思った事は無かった。

娘にハンカチを渡しながら

私 「泣くとブスが余計にブスになるから・・・。泣いても仕方が無いことだから・・・。」

と、ギャグを飛ばした積もりだったが

娘の方には、そんな余裕は無かった様だ。

やがて、交差点の向こう側で現場検証をしていた警察官二人と

四、五人の大人が、こちらへやって来た。



「第3章/最悪の相手」

相手の現場検証の次は娘の方の現場検証で

状況の分からない私も同席させて貰った。


各々の現場検証が終わると次は双方の言い分の検分である。

警察官Sさんと相手のIさん(女性50代)と娘と私で事故状況の確認をした。

この時、相手のIさんが徐に

Iさん 「私は、こういう仕事をしてますから・・・。」

と言って名刺を突きつけてきた。

名刺には「○○市連絡補導委員」と書いてあった。


Iさん 「私はトラックの後ろで信号待ちをしていて信号が青になって

トラックが発進したので、その後から交差点に進入したら、この子が

物凄い勢いで右から突っ込んで来たのよ。」


娘 「普通の黄色のタイミングで交差点に進入したら、左からぶつけられた。」


と言っている傍からIさんは、娘の話を悉く否定してくる。

「取り付く島が無い」と言う言葉は正にこういう状況を言うんだなと

私は心の中で思った。

収拾が付かず、仕舞いには郷を煮やした警察官Sさんが

Sさん 「それじゃあ、目撃者捜しの看板でも建てましょうか?

まぁ建てても100件に2,3件位しか目撃者は現れないけどね・・・。」


私 「宜しくお願いします。とりあえず目撃者が現れることを期待して

後は保険屋さん同士の話し合いに任せることにしましょう。」

(この時私はこれ以上Iさんと一緒に居る事に耐えられなくなっていた)


パトカーが去った後、交差点内の割れたガラスやプラスティック片を片付けていると

Iさんに似た顔立ちの女性が私の隣に来て一緒に片付けながら

女性 「大変だったですね、ここは魔の交差点って言われてるらしいですよ。」

と話しかけてきた。

この子は顔は母親似だが性格は全く違って善い子だな、などと思っていたら

Iさん 「何してるの!そんな事しなくていいの!帰るよ!」

と言いながらIさんが近づいてきた。

そしてその女性を連れて帰り際に

Iさん 「私はこういう仕事をしてますからね。」と言って

「○○警察」というような事が書いてある黒革の手帳を

まるでイタチの最後っ屁の様にひけらかして帰って行った。


やれやれ、うちの娘も最悪の相手とぶつかってしまったものだ。



「第4章/目撃者現る」

事故から一週間ほど経った5月の中旬に警察官のSさんから

5月27日に「供述調書」を作るから警察署に出頭するように電話があった。


私自身も事故の経験は何度かあるし知人の事故の話なども聞くが

警察署に呼び出されて「供述調書」を作ったなんて聞いた事が無い。

余程「重過失」があったとみなされたと言う事なのか?


5月27日(水)

娘と警察署へ行くと、事務所の隅の3畳位のスペースに案内され

机を挟んで警察官Sさんと対峙した。(これが取調室というやつなのか?)

「供述調書」という物も私には「現場検証の時のメモ書き」の清書にしか見えなかったが、

最後に娘(未成年者)の署名をして終わった。


Sさん 「実はね~目撃者が現れたんだよ。」

私 「本当ですか?良かったですね、これでハッキリしますね

で、目撃者はどういう風に言ってるんですか?」

Sさん 「それは警察の方からは話せないね~」

私 「???そうですか・・・でも目撃者ってどこで見てたんですか?」

Sさん 「Iさんの対向で信号待ちしてた人が居たんだよ~」

私 「ほぅ、そうですか?それでは本当に目の前で事故を見た訳ですよね?」

Sさん 「そういう事になるね~」



「第5章/微かな希望」

警察署から帰りながら娘と車の中で

私 「目撃者が反対側で目の前で見たと言う事は、

信号待ちしていたと言う事だろうから、

お前の記憶の方が正しかったのかも知れないね。」

などと、その時は幾らか明るい希望を抱いたのだったが・・・。


早速、保険会社S・Jの方へは「警察へ『供述調書』を作リに行って

目撃者が現れた」と言われた旨を連絡しておいた。



「第6章/目撃証言」

そして6月に入ったある日、S・Jの担当のAさんから来た電話の内容は

Aさん 「目撃者の証言によると、やはりIさん側の信号が青で

お嬢さん側の信号が赤だったと言う事でした。」

というものだった。

私 「そうでしたか・・・。しかし、私にはIさんがトラックの後ろ二台目で信号待ちしていた

と言うのがどうしても納得できません。

それが本当だとしたらトラックが娘の目の前を横切った事になりますよね?」

Aさん 「そういう事になりますね」

私 「もしIさんが二台目では無かったのなら納得しますので、その点だけ確認して下さい。」

と言うお願いをして私は電話を切った・・・。



「第7章/絶望」

その後も二ヶ月に一度くらいのペースでS・JのAさんから電話が来たが

内容は毎回同じ

Aさん 「目撃者の証言は、やはりIさん側の信号が青で

お嬢さん側の信号が赤だったそうです。」

というものでした。



「第8章/弁護士からのブラックメール」

2009年8月20日(木)

相手の保険会社JA共済の顧問弁護士T氏から内容証明郵便が届いた。

内容は「今回の事故は娘側の赤信号無視によるものであり、娘に一方的に

責任があり、法的措置を講じる。」

というものだった。

【実物写真】



「第9章/重圧」

その後も忘れた頃に何回か保険会社S・JのAさんから電話が来たが

内容は毎回変わらず

「目撃者の証言は、Iさん側の信号が青で

娘側の信号が赤だった。」

というものでした。

保険会社としては、さっさと示談して事故を処理したいのでしょうけど

私には、どうしても「信号待ち二台目」が納得できなかったのです。



「第10章/青天の霹靂」

そして事故から10ヶ月経った2010年3月2日(火)午前9時15分

保険会社S・Jの担当のAさんから電話が来た。


Aさん 「警察の目撃調書がやっと手に入りまして、

それによると、Iさんの赤信号見切り発車で

お嬢さん側は黄色信号進入だったと言う事でした。

なので過失割合は8対2でいかがでしょうか?」


私 「ええ~っ・・・???。相手の赤信号見切り発車だったんですか?

でもずっと目撃証言は相手のIさんが青信号だったって事だったですよね?」

 
Aさん 「そうだったんですよね。でもこれが警察の正式な目撃調書なので・・・。」


私 「それじゃ話が全く逆じゃないですか・・・。」



「第11章/S・JのM課長」

3月4日(木)

保険会社S・JのM課長なる人物から電話が来た

徐に

M課長 「この度はお嬢さんの方を被害者扱いしてしまい申し訳ありませんでした。

ああだら、こうだら・・・。」

と訳の分からない事を切り出したので

私 「えっ!被害者じゃないんですか?」

M課長 「あっあっ、そうですそうです被害者でした・・・。

言い間違えました。すみません。」

私 「とにかく私は8対2の過失割合をゴネているんじゃないんです。

相手のIさん側が青信号だったと言った人を教えて欲しいだけなんです。」



「第12章/モノローグ」

私は映画の中でも虐殺シーンや、圧倒的に強い者が弱者を虐げるような

「理不尽な」シーンを観ると吐き気を催す事がある。


今回の出来事も

10ヶ月間の長きに渡り、娘を一方的に加害者扱いし続け

もし私が事故現場に立ち会う事ができなかったら・・・

もし保険会社の言いなりに示談してしまっていたら・・・

もし目撃者が現れてくれなかったら・・・

19歳の私の娘は「一方的な信号無視の交通事故加害者」と言うレッテルを貼られて

一生心に傷を負ったまま生きていかなければ成らなかった訳です。


足利事件の「菅家利和さん」や拉致事件の「横田めぐみさん」のご家族の様に

当事者にしかその「苦悩」や「苦痛」や「怒り」は理解できないものなのかも知れませんが

私は今回のこの理不尽な「冤罪・捏造・偽証・犯罪」を決して

忘れる事は出来ない。



「第13章/エピローグ」

この話は、すべてノンフィクションです。

そして2010年3月22日現在

保険会社S・JのM課長からは何の報告も有りません。


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