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テーマ:司法全般(518)
カテゴリ:司法関係覚書
春秋戦国時代、呉の国と、越の国は敵同士。
しかしながら、揚子江の船には良く乗り合わせてしまう状況にありました。 こうしたとき、呉の国の人も越の国の人も互いに船上で争うことはなかったといいます。 不仲同士、あるいは敵味方が同一の場所に居合わせることを、上記の故事に従って、呉越同舟と呼ぶのは良く知られているところですね。ですが、ちょっと調べてみたところ、この故事成語には『反目し合いながらも共通の困難や利害に対して協力し合うこと』という意味もあるということを知りました。こっちは知らなかったなあ。 東京地裁には多くのエレベーターがあるのですが、最初の意味での呉越同舟の事態になることは良くあります。反目し合う当事者同士が同じ箱に乗り込んでしまうのをなるべくさけたいところではありますが、時間の関係でいかんともしがたいことがあるのですよね。そうしたときはちょっと奇妙な緊張状態が続きます。 また、対立当事者のそれぞれについている訴訟代理人同士が同じエレベーターに乗り合わせることも良くあります。この場合にはそれほど緊張状態が生じる訳ではないのですが、少なくとも親しく語りかけるというのは、双方の当事者の心裡をおもんばかれば出来ませんので、紳士的な沈黙が場を支配することになります。事件のことを口にするわけにもいきませんしね^^事務的な話ならまた別でしょうけど(何日までに書面を作成してお送りしますね、とかね)。 私はまだ事務所で仕事をして一月ほどですので、場合によっては事案が良く分からないままボスについて行くこともあります。そんなときに今日の進行の意味など、ボスにお聞きしたいことが結構あるのですが、対立当事者なり訴訟代理人なりが乗り合わせる場合には当たり前ですが控えています。時々、すぐにでも話をお聞きしたいこともあるのですけどね。ボスのあまりに見事な反対尋問を目の当たりにしたときなどは、すぐにお話しを聞きたかったのですが(ちょっとした興奮状態でしたし)もどかしくも控えていました^^そんなわけでタクシーなどで事務所に帰るときにおたずねするようにしているわけですね。 さて、第一の意味の呉越同舟の他にも、場合によっては第二の意味での呉越同舟になることもあります。対立する当事者の持ち合わせる情報をつきあわせることで、時として両当事者共に知らなかった真相が明らかになることがあるのです。その場合には、今後の状況を考え合わせて、事件において真に責任ある者を訴訟にかませる、あるいは和解で一旦手打ちにしてその後の解決に向けて協力していく、などということが起こりえますね。 前置きが長くなりましたが、実はついこの間、ちょっと驚いたことがありました。双方当事者の尋問が行われて、お互いの主張が真っ向対立、お互いのことを面前で(言い方は紳士的でしたし直接的ではありませんでしたが)非難するという期日がありました。 これまでの訴訟の進行で事案の真実が明らかになっていたこともあり、尋問が終わると進行協議が行われ、訴訟代理人がそれぞれ裁判官の前で解決に向けての考え方を話すということになったのですが、その間、双方当事者は廊下の待合いスペースで相まみえることになっていました。まさに第一の意味での呉越同舟。 しかしながら、相手方訴訟代理人が裁判官のもとでお話しをしている間、私の目の前で双方当事者が親しく(結構楽しそうに)話し合っていたのです。その上で、二人して一緒にたばこを吸いに行かれていました。 さっきまであんなにお互いを非難していたのになあ、と思っていたのですが、もともと双方当事者は結構親しい間柄であったこと、そして双方とも経験豊かなビジネスマンであったことから、割り切った大人の対応がなされたのではないかなと今では思っています。 つまり、この事案では対立するけど、それはそれ、という判断が互いにされていたのでしょう。なんだか少し感動してしまいました^^ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/11/12 10:32:38 AM
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