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2013.02.27
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 東京プリズン(赤坂真理著)を読んだ.仕事で新潟市に出かけた帰り,1時間に一本程度の新幹線を待つ間に南口のジュンク堂でたまたま買った本だ.帯に,「今年最高の本!」,「第1位」,「受賞」などと書いてある.ベストセラーやちまたで流行っている本はめったに買わないへそ曲がりなのだが,そしてまとまった時間がなかなか取れないので長編はなるべく避けるのだが,帯の書評の池澤夏樹や高橋源一郎の名前に目が止まった.その上,「東京プリズン」という硬い題名,真理という名前(これまでつきあったそれほど多くない女性の中に,なぜか2人の真理子,1人の真理がいる.真理は当時の親友に盗られ,結婚されてしまい,一人の真理子は今の私の妻である),赤坂のバー(で若いころ,外人達とダーツの試合をしていたことを思い出した)などが気になって,気に入らない帯のコピーにもかかわらず買ったのだ.

 もともと遅読な上まとまった時間がとれず,450ページ近くの本なので,読了まで1ヶ月近くはかかるかなと思っていた,しかし思った以上に,というより池澤夏樹や高橋源一郎が薦めるだけあって面白く,最初の週末で半分近くを読んだ.(残りの半分は細切れに読まざるを得ず1週間以上かかったのだが..) 買った時は小説家が書いた東京裁判をめぐるノンフィクションか,史実に基づく小説だと思っていたのだが,そのイメージとは全く違っていた.完全な小説.私小説といってよいだろう.「私は泣いた」というフレーズが頻繁にあるなど細かな部分が気にはなったが,小説全体の主題はすばらしく,全体を貫く切なさも心を震わせる.読んでいて目が潤むほどだった.仕事で読んだ本や論文を除くと,この十数年で(この期間,あまり本を読んだとはいえないのだが)3本の指に入ると思う.残りの2冊は水村美苗の「From left to right」と小説ではないが渡辺京二の「逝きし世の面影」.どちらも,読んでいる時に何度も目が潤んだのを覚えている.

 今,この3冊の本を挙げながら,自分自身についてふと気づいたことがある.3冊とも日本とアメリカ/西洋の間の深谷をテーマにした本という点だ.東京プリズンとFrom left to right は,自分の意思とは無関係にアメリカに行かざるを得なかった10 代の少女の,それもずば抜けて感受性の強い少女の切ない異文化社会での孤独な物語である.そこには,戦後,昭和の時代に生まれた者たちのアメリカに対する憧れと畏敬と違和感と憎しみがある.考えてみれば,ぼくらは米軍が援助した硬いコッペパンと脱脂粉乳の給食で育った世代である.横浜で育ったぼくがよく思い出す記憶は,ゴミゴミとした昭和の街中と,別世界のように存在する米軍将校住宅地.フェンスで仕切られた向こうに見えるのは,瀟洒な家々と青々とした芝生,そして,そこで走り回る金髪の子供たちと白い肌の若い夫婦である.
 もう一冊の逝きし世の面影は,江戸時代から明治初期にかけての日本人たちを,欧米人の目から見た証言によって描写したノンフィクションだが,その時代の日本の庶民がどれほど幸せそうに見えたかを延々と綴っている.当時の庶民が貧しいながらもいかに幸せに暮らしていたかの事実と,勝ち組になれない現代の人々の苦悩を対比すると,切なさで涙が止まらなくなる.
 これらの3冊の本が最も印象に残っているということは,おそらく,表面上はともかく,深層のレベルで,ぼく自身の問題に深く関わっているのだと思う.自分自身が欧米に対する憧れと劣等感と優越感と嫌悪の感情の間で揺れ動いていること,より具体的に言えば,研究や仕事では負けないという強い自負と英語で対等に議論できない劣等感.言語だけではなく,思想のレベルで西洋の土俵に乗らなければ議論できない悔しさ.そんなふうに,自分自身の弱さを改めて考えさせる一冊であった.






Last updated  2013.02.28 13:59:05
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