KENTの独り言

2006/10/24(火)19:02

『The Day After Tomorrow』

読書(25)

徹夜のおかげで なんとか原稿を一本上げました. この原稿の参考資料として,映画『The Day After Tomorrow』を見ました. 感想文代わりに,原稿の一部をこっちに掲載してしまおう(苦笑) ================= コラム 「The Day After Tomorrow」  2004年に日本公開となった「デイ・アフター・トゥモロー(原題:The Day After Tomorrow)」という映画を見た人はいるだろうか.地球温暖化をきっかけに,北半球の広い範囲が急激で強烈な寒冷化に見舞われ,アメリカが大混乱に陥るという設定であった.巨大な低気圧の中心部で瞬間的に-100数十℃まで気温が低下したり,急速な気候変動が数日で起こり,すぐに終わるなど非現実的なシーンが多く拍子抜けしたのだが,この映画が「完全なフィクション」ではないことを知っておいても良いだろう.  主人公である古気候学者のジャックが主張した「温暖化は氷河期を招く」という説は事実である.今から1.2万年前,その事件は実際に起こった.  最終氷期の北米大陸には巨大な氷床(ローレンタイド氷床)があったが,氷期が終焉を迎えようとする時期で,徐々に融解を始めていた.しかし,氷床の融解は均一には起こらない.ローレンタイド氷床では,今のセントローレンス川の河口部に大きな氷体が残りダムの役割を果たすことで,五大湖付近に巨大な湖を作っていた.やがて,ダムの部分の氷が融けると,巨大な湖の水は巨大な洪水となってセントローレンス川を下り,一気に北大西洋に流れ込んだ.この北大西洋には地球の気候にとって重要な「スイッチ」の一つがあった.地球を1000年かけて循環する「深層海流」のエンジンがここにあり,巨大洪水はそのエンジンの「スイッチ」を切ってしまったのである.  大西洋の水は太平洋に比べ塩辛い.これは熱帯付近で蒸発した水が貿易風によって太平洋に運ばれてしまうからである.また,北大西洋海流で北に運ばれた暖かい海水はグリーンランドやアイスランド付近で冷却される.塩分の多い水,冷えた水は密度が大きくなるため深く沈み込む.この沈み込んだ冷たく塩っぱい水が大西洋の深海底を通りインド洋・太平洋まで流れ,やがて海面に上昇してくる.これが「深層海流」である(図8).ところが,大量の淡水が一気に北大西洋に供給されたため海水の塩分濃度が下がり,沈み込みが停止した.沈み込みの停止は北大西洋に熱を運んでくる北大西洋海流も停止を招く.そのため,突発的にヨーロッパと北米が寒冷化し,氷期に逆戻りしてしまったのだ.これが「新ドリアス期」と呼ばれる寒冷化イベントである.  突発的な寒冷化といっても100年近くの時間をかけて寒冷化し,1300年近く続いた.ただし,その終わりには数年間で8℃以上の温度上昇があったと考えられている.事実,温暖化が氷河時代を招くのだ.地球の環境は思っているほど安定ではない.ある安定解から別の安定解へジャンプをすると理解した方がよい.  このまま地球温暖化が続いたらどうなるであろうか.海水温の上昇で降水量は増加,グリーンランドの氷床は急激に融解すると考えられている.これが再び塩分濃度を薄めて「深層海流」のスイッチを切ることはないだろうか.モデル計算では「切ることもあり得る」という結果も出ている.The Day After Tomorrowは地球の明後日の姿を暗示しているかもしれない.興味がある人は,アレイ(2004)をぜひ読んで貰いたい. 参考文献 『氷に刻まれた地球11万年の記憶』.アレイ著 山崎訳.2004年,ソニーマガジンズ

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る