2010/10/13(水)00:16
久しぶりのBL本。
私の大好きな華藤えれなさんと実相寺紫子さんとのコンビです。
華藤えれなさんは、私と非常に感性が合っているのか?いつも切ないお話で私の萌え心にストンとはまってきます。
そしてそれを一番理想的な姿に美しく描いてくださるのが、実相寺紫子さんです。
やっぱり、このお二人は最高ですねぇ~
今回も期待を裏切らない一冊でした
『楽園は何処にもない』華藤えれな/実相寺紫子
ルナノベルズ 2010年9月3日発行
ある事情から2度と日本に戻ることができず、イタリアの下町で貧しく暮らす日本人の両親から産まれてきた航一。
イタリア国籍を持つ航一は、必死に勉強して、両親を護り幸せにしようとイタリア警察に入った。
明らかに東洋系の容姿をしている航一に、イタリア社会の風当たりは強かったが、航一は両親を護って、貧しいながらも笑い合って暮らせる今の生活に満足していたし、それが幸せだった。
まさか・・その幸せが、交通違反を犯した一台の車をたまたま停めてしまった事から、奪われることになろうとは、夢にも思わなかったのである。
運悪くそこに乗っていたのが『神』の名を持つ、シチリアマフィアの後継者で最も恐れられている男、ディオ・セバスティアーノ・カステリーニだったのだ。
一度目、ディオは航一の強い眼差しを気に入り、気まぐれで許してくれたが、二度目はその数日後に最悪な形で訪れた。
休暇を両親と過ごそうと、航一が家に戻ると、両親は無残な姿で殺されていた。
両親は、雇われ先のオーナーの誘いを断り切れずに、麻薬の横流しに手を貸してしまい、マフィアの制裁を受けた。
呆然と遺体に近づいた航一も撃たれ、これで自分も死んでしまうのかと思った・・。
護って幸せにするはずだった両親を殺された今、航一はこのまま両親と死んでもいいとさえ思っていた。
その時、車から降りてきたディオは、玩具として自分を楽しますことができたら生かしてやると悪魔か死神のような笑みを浮かべ、航一を連れ去った。
失うものは何もないと死をも恐れぬ航一は強く、それを面白がっているかのようにディオは「殺せるなら、いつでも私を殺せ」と、航一に復讐を煽る。
何処にも楽園がないというなら答えは一つ・・・おまえの情人になり、いつかおまえを地獄に送ってやる。
航一は復讐を誓い、胸にディオの名を刻んだ情人の証のピアスをつけられた。
その痛みがかろうじて、航一にまだ生きていることを実感させていた・・。
親兄弟ですら時には殺し合わなければならない非情な裏世界の頂点に立つべく、生きてきたディオの心は、一般人が理解しえないほど歪んでおり、孤高で冷血だった。
普通なら、このお話の展開として・・航一のひたむきな強さがディオの心を溶かし、いつしかディオに初めての愛情が芽生え、航一も知らず知らずにディオを愛していた・・という設定の想像がつきますが、どうやらそんな単純なお話ではなかったようです。
いろいろ解ってくる真実。
それによって航一の心が微妙に変わってきます。
ディオは、歪んだ愛、狂気の執愛・・愛する者がいつしか自分を殺してくれる・・崇高なまでに美しい破滅を夢見ている。
航一とディオに、この先どういう結末が待っているのか・・?!
航一の切ない心の動きが実に見事です!
さすがです! 華藤えれなさん。
このお話は、『この聖なる束縛に』という本のスピンオフ作品です。
アルフィオは今回、ディオの義弟ということで登場いたします。
『この聖なる束縛に』も読みたかったのですが、私の絶対読めない聖職者ものだということで断念いたしました。(聖職者もの・兄弟もの・完全女装もの・高校生以下は私の脳が受け付けません)
私の満足度★★★★★