2011/09/28(水)22:44
『困ってるひと』大野更紗著
新聞で紹介されていたのを見て読みたくなり、図書館で探したのですが・・・無く、早速買って来て読みました。
【送料無料】困ってるひと
ビルマの難民研究に明け暮れていた大学院生の女子が、ある日突然、原因不明の難病に罹ってしまった。
病名がつかず、病院を転々とする作者。
やっとの思いでたどり着き、受け入れてくれた病院(作者はその部屋を『オアシス』と呼んでいる)で、二人の先生と共に前例のない試行錯誤の治療を続け、難病と闘っている。
故郷(作者は『ムーミン谷』と呼んでいる)から離れて、動けない身体で一人、入院している作者は、買い物一つとっても、他人を頼らずにはいられない。
友人達の善意に頼り、それに依存してしまった作者。
いつしかそれは、友人達の負担となり、関係がギクシャクしてしまう。
その時になって、作者は初めて、「難民を助けたい」と思っていた自分が実は難民化していた事に気付く。
完治することのない病気をかかえ、このまま病院で他人に頼り切った生活をしていていいのか?
このままでは自分はダメになってしまう。
作者はある日、病院を出て自立する決意をします。
実際生きていくには、やはり支援が必要だと、福祉制度を調べますが、障害者の認定の矛盾、手続きの煩雑さ等の問題に直面します。
患者の立場と医師の立場との違い・・・温度差。
様々な問題をかかえながらも前向きに生きる作者。
医療とは何か?社会福祉とは何か?を考えさせられます。
私個人も今回、父の介護の問題で医療や高齢者の福祉問題について思うところもあり、余計に考えさせられました。
凄絶な『闘病記』なんだけど、暗さがなく、ユーモアたっぷりにさらっと描かれていて、今までの『闘病記』とはちょっと違う感じです。
売っても安いし、図書館に置いてなかったので、多くの人に読んでもらえたら・・・と、寄贈しに行ったのですが、検討会で決まったらいただきますと預かりになりました。
貰っても困る本もあるでしょうし、それで勝手に処分するのも問題なので、こういう方法がとられているのでしょうが、簡単に寄贈もできないのにはちょっと驚きました。
しかし、先日図書館から寄贈のお礼のお手紙が来ました。
良かった・・と思う反面、一冊の本だけなのに、もっと簡単にもらっていただけたら良い本も増えると思うのですが・・・難しいですねぇ