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2019.09.18
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カテゴリ:カテゴリ未分類

 「インクルーシブ教育」との言葉は一般にまだまだ馴染みが薄い。障がい者の教育に関わる人には、目指すべき姿として「当たり前」だが、それ以外の世界では全く認識されていない概念でもある。この乖離が日本でインクルーシブが進んでいない現状であり、「インクルーシブ教育」の現在地だ。政治やメディアの責任も指摘しつつ、このあたりで大きな国民的な議論には出来ないだろうか、と考えている。特に現在、現場で進行しているのは2014年に日本が批准した障害者権利条約に基づく、「インクルーシブ教育」の実現に向けた動きで、すべてを包摂する教育に向けても、「通常学級に障がい者を入れる」という考え方が先行してしまっている感がある。新しい「インクルーシブ」の概念を統一しなければ、本来のあるべき姿としてのインクルーシブの実現は程遠い。だから議論が必要なのだと思う。

 
 このインクルーシブ教育の基本となるインクルージョンが世界的に認知されたのは、1994年。ユネスコがスペイン・サマランカで開催された「特別なニーズ教育に関する世界会議」で採択された「サマランカ宣言」であった。宣言は「インクルーシブな方向性を持つ学校は、万人のための教育を達成する最も効果的な手段」と明確にすべての人のための教育としてあるべき姿を示したが、この宣言を具体的に検討する態度を日本政府もメディア側もとってこなかったまま、障害者権利条約が採択され、先進国が軒並み批准する中で、日本で条約に対応するための議論が始まることになった。しかし、その動きも民主党政権と文科省、メディアがビジョンを描けないまま、活発することはなかった。これが2014年までの20年である。

 

民主党政権が200912月に障害者権利条約批准に必要な国内法整備に向けて始まったのが、「障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革」 とされる「障害者制度改革」。内閣総理大臣(発足当時は鳩山由紀夫首相)を本部長とする「障がい者制度改革推進本部」が設置され、インクルーシブ教育の議論はこの本部に置かれた「障がい者制度改革推進会議」の教育部門の議論から始まった。同会議は20101月から20127月まで合計38回行われたが、まずは15回を経て第一次意見をとりまとめた、その中で「インクルーシブ教育システム」については「検討を行う」という表現となり、この慎重な言い回しは文科省の消極性を示すものとなった。そして、私が朝日、毎日、読売の3紙を調べる限り、この模様を報じた記事はなかった。

 

この3紙が「インクルーシブ教育」を報じる最初は、朝日が2006年の熊本県版の「障害児教育の専門性考える」であり、毎日が1999年の高知県版で「今どき教育学」という不定期のテーマ企画で「インクルージョン 障害児と健常児を区別せず 統合教育とは一線」との見出しで、新しい考え方を紹介。読売新聞は2010814日の社説で、政府の新たな障害児教育制度が示されたのを受けて「『差別なき教育』全体像示せ」と主張する中で取り上げられている。朝日と毎日が地域の草の根の動きを関心のある記者が取材し書いた地方発で「インクルーシブ教育」が発出された一方で、読売新聞は社説という全く正反対の「新聞の権威」から示され、その中身も政府に対する反応だった。しかし内容としてはインクルーシブの議論ではなく、全体像への注文。この3紙を見る限り、インクルーシブの考えに距離感を置いている印象がある。そして現在もインクルーシブが幾分は浸透したものの、その状況はあまり変わっていないように思う。これを「反省」して前に進めたい、と頭を悩ませている。

 

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執筆者紹介 引地達也(ひきちたつや)仙台市出身。シャローム大学校学長、一般財団法人福祉教育支援協会専務理事・上席研究員(就労移行支援事業所シャロームネットワーク総括・ケアメディア推進プロジェクト代表並びに季刊「ケアメディア」編集長)、一般財団法人発達支援研究所客員研究員、コミュニケーション基礎研究会代表。

 

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Last updated  2019.09.18 01:20:57
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