その友達は、電話口で泣いていた。

いっぱいいっぱい泣いていたから、私は黙って受話器を握り締めていた。

「もう疲れたから。泣くしかないの。」

事情はいろいろある。

しばらくして、私は言った。

「でも、泣くのが一番疲れるでしょう？」

友達は少し沈黙して、そして笑った。

「そっか～。泣けるだけ、まだ元気なのかもね。」

頑張ろうね、そう言ってあげたかったけど

彼女はとっくの昔から頑張っているから

安っぽく聞こえてしまう。

本当にありがたいとき、ありがとうじゃ足りないと思うように

本当に元気を出してほしいときの言葉がみつからない。

たくさん言葉を知ってるようで、実は気持ちを正しく言い表す言葉を私は知らない。

ただし。

泣くのは一番チカラのいること。

感情を思いっきり出さなくちゃならない。

自分をさらけ出さなくちゃならない。

その場所に、私のところを選んでくれた友達。

ありがとね。

抱えているものは大きい。

でもそれだけ大きいからこそ、あなたに与えられたのだと思う。

乗り越えられない人に、そんな苦しみは与えられない。

いつでも電話しておいでね。

そう言ったら友達は笑った。

言われなくてもそうするよ、だって。