三十路の大学院生はっしーの研究日記

2005/03/18(金)12:28

フジvsライブドア所感

音楽・映画・TV(39)

ニッポン放送の、フジに対する新株予約権発行が差し止められている。司法の審判が下る前から、確信は持てなかったものの、フジ側の株主無視のやり方はあんまりだと思っていたし、差し止めの審判が下ることはなんとなく予想していた。フジに対し新株が発行されれば、一気にニッポン放送の発行済み株式の数が増えて、その分株価が下がり、既存株主に損害を与える可能性が強い。それを、特定の大株主(ライブドア)の支配権を薄めるためだけにやるのは、やっぱり通らない話だろうと思う。 新聞紙上では、フジサイドは次なる抵抗として「焦土作戦」を目論んでいるという。ニッポン放送がライブドアの傘下に下ることを前提とし、経営権があるうちに優良資産を売却してしまい、ライブドアにおいしい思いをさせないようにするというものだ。個人的には、これは新株予約権発行以上にめちゃくちゃな話で、そんな話が通るわけがないと思っている。僕はビジネススクールでファイナンスやコーポレートガバナンスを学びながら、どうもアメリカ経営学の拠って立つ「株主至上主義」には違和感を感じていた人間だ。けれども、上場企業の場合は特に、経営者というのは、企業の所有者である株主から付託を受けて会社を預かり、経営している立場(所有と経営の分離の原則)。取締役はすべて株主総会によって選任されるということからもこの原則は明らか。そうやって株主から選ばれる立場の経営者が、特定の大株主(ライブドア)に損害を与えるために経営権を乱用するのは、背任行為だろう。 しかし、一方のライブドア・堀江さんにも問題がないとは思わない。彼のやり方で一番まずいのは、ニッポン放送やフジテレビを手に入れて、その後どうしようとしているのかをまともに語っていない点だ。だから、金に物を言わせて支配欲を満たそうとしているだけ、みたいな印象を与える。何よりいけないのは、そうした印象によって、従業員や取引先といった大事なステークホルダー(利害関係者)たちがついてこなくなることだ。ゆえにフジ側に、「ライブドアの傘下になったら、取引先や従業員が嫌がるので企業価値が下がります」というロジックを立てる余地を与えてしまっている。 逆に言えば、堀江さんは「私がニッポン放送を手に入れたら、こんなに夢のある、一般視聴者のためになるビジネスを展開します。だから、私にニッポン放送を任せてください」という説得力のあるビジョンを語りさえすればいいのだ。まずは従業員に夢を与え、ついてこさせること。世論を形成する一般視聴者からも、今以上に支持を集めることができるだろう。 このくらいのことは堀江さんは十分わかっているはずだ。なのに、彼がどうしたいのか一向に伝わってこないのはなぜだろう? ほかの既存マスコミが、同業のよしみでフジを応援していて、堀江さんのビジョンを意図的に伝えないようにしているのだろうか? それとも、堀江さん自身に実はまともなビジョンがないのだろうか? 気になって、ライブドアのサイトを見たらこんな文章が。 フジサンケイグループとの業務提携に関する当社の意向について うーん。これがビジョンのつもりなんだろうけど、食い足りないよなあ。読んでも夢や可能性を感じないよ。「ラジオ・テレビ・新聞・雑誌」と「インターネット」の相互補完、というだけじゃ、なんだかわからない。具体性が足りない。読んで「おーーすごい!そんなことができるようになるんだ!」と驚くようなこと打ち出せないものなのかな。

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