★「仕事の報酬」のいろいろ
「今の仕事は給料が安くて…」と不満をもらしたくなるときはある。しかし、仕事の報酬はカネだけではない。今の自分の仕事について、8つの尺度から報酬を考えてみよう。 仕事が自分に与えてくれるものは何だろう? ビジネスパーソンは、会社で仕事をし、その報酬によって生活を成り立たせている。「報酬」という言葉を辞書で調べてみると「労働に対する謝礼のお金や品物」と出てくる。確かに、報酬の第一義は勤労に対する報い、お礼、ごほうびのカネやモノである。しかし、仕事が、それを成し遂げた者に対して与えてくれるのは、そうした目に見えるものだけではなさそうだ。仕事を成し遂げることによって、私たちは能力も上がるし、充実感も得る。それと同時に、いろいろな人とのネットワークも広がる。そして、また次のいい仕事チャンスを得ることにもつながる。そう考えると、仕事の報酬には、目に見えないさまざまなものもありそうだ。以下で、仕事の報酬にどのようなものがあるか考えてみよう。1 【金銭】金銭的な報酬としては、給料、ボーナスがある。会社によってはストックオプションという株の購入権利もある。働く者にとって、カネは生活するために不可欠なものであり、報酬として最重要なもののひとつだろう。2 【職位】いい仕事をすれば、会社組織の中では、それ相応の職位や立場が与えられる。職位が上がれば、自動的に仕事の権限が増し、仕事の範囲や自由度が広がるだろうし、昇給もあるので結果的には金銭報酬にも反映される。また、きわだった仕事成果を出せば、表彰されたり、名誉を与えられる。3 【人脈】ひとつの仕事を終えた後には、一緒に協力し合った社内外の人たちのネットワークができる。現在のビジネス社会では、たいていの仕事は、自分単独でできない場合が多いので、こうした人のネットワークは財産になる。目に見えない報酬を考えよう さて金銭や職位、人脈といった報酬は、自分の外側にあって目に見えやすいものである。しかし、報酬には目に見えにくい、自分の内面に蓄積されるものもあるのでそれを見逃してはいけない。4 【能力】仕事は「学習の場」でもある。ひとつの仕事を達成するには、実に多くのことを学ばなくてはならない。しかし、達成の後には、能力を高めた自分ができあがる。会社とは、給料をもらいながら能力を身につけられるのだから、実にありがたい場所なのかもしれない。5 【成長】いい仕事をして自分を振り返ると「ああ、大人になったな」「一皮むけたな」という精神的成長を感じることができる。その仕事が困難であればあるほど、感動や充実感も大きくなる。こうした気持ちに値段がつけられるわけではないが、大変貴重なものである。6 【信頼】「あの人の仕事ぶりには定評がある」「あの人に任せれば安心」といった社内外からの信頼・評判は得がたいものである。他者から注目され、信頼される人材になることは大きな財産、武器になる。7 【安心】人はこの世で何もしていないと不安になる。人は、社会と何らかの形でつながり、帰属し、貢献をしたいと願うものである。アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、このあたりを「社会的欲求」という言葉で表現している。仕事をする――たとえそれがよい成果をもたらしても、もたらさなくても――人は、仕事をすること自体で安心感を得るものなのである。8 【機会】さて、仕事の報酬として上の7つを挙げてきたが、もうひとつ忘れてはならない報酬がある。それは「機会(チャンス)」だ。機会という報酬は、上の2~6番目の報酬が組み合わさって生まれ出てくるものだ。機会は非常に大事である。なぜなら、次のいい仕事を得れば、またそこからさまざまな報酬が得られるからである。報酬として1番目のカネは大事かもしれない。しかし、カネのみあっても、次のいい仕事チャンスを“買う”ことはできない。そうした意味で、機会という報酬は、未来の自分をつくってくれる元手なのだ。さて、8つの報酬はいかがだったろうか。「給料が安い!」と今の仕事に不満がある場合は多いが、職選びはカネ以外の報酬のこともよくよく考慮に入れて考えるべきだろう。給料は多少安くとも、自分を成長させてくれ、次のチャンスをいろいろ与えてくれる仕事もあるからだ。自分の仕事の報酬について、一度、高いところから冷静に見てみよう。DODAレポートよりものの見方考え方は人それぞれである。前から後ろから上から下からと角度を変えて見るのがよい。物事は最低でも2つ以上のものの見方をしなければ正しく把握できないものである。自問自答するもよし、書籍から得るのもよし、人から聞くもよし。いろんな考えや思いを吸収して自分の血となし肉となすがよいと思う。