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本と映画と食事とあひる

2015.06.05
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カテゴリ:読書


 最近、ディヴァインにはまっています。

不思議なもので、デビュー作『兄の殺人者』はぴんと来なかったのですが、

『そして、医師も死す』からじわじわとはまりました。ぽっ

なんというか、とても上質な珍味みたいなものですね。

しっかり噛まなければ分からないけれど、噛めば噛むほど、、、、というところ。

 まあ、最初にクリスティーが絶賛したんですから、当然と言えば当然ですが。

派手さには欠けますが、鋭い人間洞察と

イギリス人らしい皮肉が効いた作品です。

 作家のジョフリー・ウォリスが何者かに殺されます。

実の兄 ライオネル・ウォリスとの間にトラブルがあったらしいという

証言があります。

被害者本人がいろいろと画策していた様子もあり、当初は

二人の間のトラブルだと思われていたのですが、、、、。

 人間関係がとても入り組んでいます。

まず、被害者のジョフリー・ウォリス。

人気作家でテレビにも出演しているのですが、

実はオリジナリティーはなく、如才ない才能で渡り歩いている利己的な人物です。

妻と娘二人がいますが、妻ジュリアは不倫中。

長女アンは親の意に染まない恋人と結婚を考えています。

次女ジェーンは反抗的な16才。

彼と不仲だった兄のライオネルは世捨て人。酒浸りです。

 事件の探偵役となるモーリス・スレイターは歴史学者。

亡くなったジョフリーとは幼少期をともに過ごしているため

ジョフリー・ウォリス伝記の作者として白羽の矢が立ちます。

離婚した妻 ヘレンと一人息子クリスがいます。

どちらともとても仲が悪いです。

このほか、ジョフリーの秘書、弁護士、編集者など

くせ者揃いです。

 被害者ジョフリー・ウォリスは誇大妄想の気がありました。

幼少期からずっと事細かな日記をつけていました。

それが、海外で生活していた2年分だけありません。

伝記を書くため、モーリスはジョフリーの過去を調べ始めます。

ギクシャクした人間関係、不愉快な人物たち、明確な「謎」。

英国ミステリーの、ひとつの典型ですね。




以下、ネタバレを含みます。 ご注意下さい。








***********************************





 ジョフリーの兄、ライオネルはかつて婚約者フリーダを

ジョフリーに奪われたことがありました。

責任を取っていればよかったのですが、

飽きて捨ててしまいます。しかも彼女のお腹にはジョフリーの子供がいたのです。

フリーダは22才の若さでこの世を去ります。お腹の子供も一緒です。

ライオネルは暫くそれを知らなかったのですが、

すべてを知って告白書を取っていた伯父の死後、金庫から問題の書類を見つけてしまいます。

当然、激昂。

以後、このことを世間に公表する、とジョフリーを脅します。

 ジョフリーは自分の非道な仕打ちを反省することなく、

ライオネルから書類を奪うことを画策。

最も信頼する人物と計画を立て、兄に酒を勧め、睡眠薬で眠らせて

書類を見つけ出し、奪うつもりだったのですが、

共謀者に殺されてしまったのでした。

 実はジョフリーは、

フリーダ以外にも毒牙にかけた女性がいました。

ジーナという女性です。

彼女を元に小説を書き、それが済むと

お腹の子供もろとも放り出します。

 ジーナを心配していた神父は

冷酷な男と縁を切らせるためにジョフリーに

「ジーナと子供は死んだ」と嘘をつきます。

それに安心したジョフリーは、

イギリスで現在の妻と結婚。文壇での地位を確立、社会的な名声と

富を築いたのでした。

その後、実はジーナから生きていて子供がいることを知らされます。男の子です。

ジョフリーは娘は2人いましたが、息子はいません。

喜んで自分の息子、フィリップを妻子に内緒で秘書として雇い入れます。

しかし、妻ジュリアと自分の弁護士が不倫をしていることを知り、

プライドを傷つけられたジョフリーは

妻に対し、

自分は重婚だから、妻は愛人、子供たちは庶子。

よって財産は与えられない、と大騒ぎしたのです。

 こうなってくると、

ジョフリーの第一子 フィリップ、妻 ジュリア、ジュリアの愛人の弁護士、娘たち、

いずれにも動機があることになります。


 この作品、皮肉が効いているなと思ったのは

犯人は、被害者がもっとも信頼していた人物というところ。星

ジョフリーの血を色濃くひいているアンなんです。

メイントリックは偶然に頼っていますし、目新しくないのですが、

こういうところは上手いですね。


また、女性を軽々しく扱い、

利用しては捨てて来たジョフリーが

人生の最後では女性たちに欺かれるというところも

とてもシニカルです。

 
 傑作だとは思いませんが、

職人技が光る、小品だと思いました。





 










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最終更新日  2015.06.08 09:54:03
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