306525 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

指描泥三彩ビール杯

ビアカップ

 指描泥三彩ビール杯

 このごろは陶器のビール杯もずいぶん認知されてきました。ガラスなどと比べて細かくなめらかな泡が出来るのが人気の秘密。これは陶器の肌が多孔質であるためだといわれています。そんな仕組みはともかくとして、これは使い出すとやみつき、という人も少なくないようで、器で確かに味が変わるという場合の一例です。

 さて写真のビール杯ですが、紋様は筆ではなく指で描いています。化粧土と呼ばれる、白い土やあるいは鉄分の多い別の土で、かたちを作っている土を装飾することがしばしばあります。泥状に水に溶いた土を掛けるわけです。
 この指描の方法を見つけたのはふとしたきっかけです。それは自分がまだ丹波立杭で修行させていただいていた頃のことです。いくつも並んだたくさんの器に化粧がけをしていました。指に泥が付いたままでは滑って作業ははかどりません。そこで雑巾などで手を拭えばいいのですが、あるとき指に付いた泥を次に掛ける器の横腹になすりつけながら作業をしていたのです。指の跡がついても、すぐにたっぷりと化粧で覆うわけですから消えてしまいます。
 未だ乾かない土の上で濡れた指は心地よく滑るのです。そこには何とも伸びやかな指の跡が残されます。そういうやきものの仕事の工程から捕まえたやり方は土や泥の生理からしても無理がないものです。土肌に違う色の土で装飾するということ自体は丹波でも古くから行われていたのですが、案外このへんに模様の発生の起源があるやもしれません。自分の場合は二本の指に色の違う泥を付けてあまり考えないで一気に仕上げています。

 高150ミリほどの大振りの杯です。

                     (02.8.11)
                    


© Rakuten Group, Inc.