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伊万里染付猪口

伊万里染付そばちょこ

 伊万里染付猪口

 やきものの美を意識して以後、自分が最初に買ったもの。 
 柳宗悦を読んで訪れた大阪日本民藝館で今まで思いもかけなかったやきものの美しさに心引かれて、こういうものを探すならばと、小さい頃から母に何度も連れられた京都の北野天満宮の市に久々に出かけて買ったもの。いざ行ってみると柳の書いているように、美しいものはそうざらにあるわけでもなく、また今ではそう安いわけでもないことがわかった。
 柳が藍絵の猪口と呼んだこれらの雑器も、今となっては古伊万里と呼ばれる骨董品でこれも小さなほつれ傷があるので当時学生の自分にも手にはいったもの。

 この種の猪口は江戸中期から百年以上もの間、有田近辺の多くの窯で膨大な数が作られて、伊万里の港から全国津々浦々の家庭まで十客、二十客と揃いで求められたという。型は時代によって多少の変化があるくらいだが、紋様は何千種類もあることと想う。

 写真は竹の図で裏には梅と松が描かれている。幾千万とくりかえされたであろうこの紋様の筆致はすばらしく、あきれるくらい冴えて上手い。釉肌の美しさも穏やかな天然呉洲の発色も申し分ない。手に持ちやすく、重ねて片付けやすいこの型も少しもうごかしようのない完成された造型である。

 高さ59ミリ、口径72ミリ、18世紀も後半の伊万里焼。

                             (02.8.7)


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