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下準備 薪

 下準備 薪


 割木
 薪と斧

 一番最初に準備しなくてはならないものはなによりも薪です。薪はしっかり乾燥していなくてはならないため、木が水を吸い上げていない冬の間に切ります。そして割木にした後、さらに半年くらいは積み上げておいてしっかり乾燥させねばなりません。当分の間安心なだけの量の薪がきれいに積み上げられているのは何ともうれしい、こころ豊かな気分です。やきものの場合は一般に赤松がいいとされています。炎が長くのび、火力も強く、また燃え切りがいいためです。
 自家でもやはり赤松の割木を用意しています。近年は松食い虫の被害も多いのですが、そういう松はすでに油抜けがして火力がありませんから、いい松をいい時期に切ることが大切なのです。信楽や備前などの大きな陶産地には松割木の業者もあるようですが、このあたりではこのような仕事をしてくれる人も少なくなり、なかなか入手が困難になってきています。そこで、製材所で出る木っ端や林業の間伐材などを主に湿気を抜きたい窯焚きの最初の段階では使っています。

 これはともすると誤解しがちなことですが、やきものを作るのは作陶家ひとりだけの仕事ではあり得ません。木を切ってくれる人、土を掘ってくれる人、そして陶工がろくろや窯の仕事をした後で家庭で使い育ててくれる人、という流れの中でこそようやくやきものは完成するのです。木や土が天為の所産であることはいうまでもありません。


 トラックに積んだ薪
 トラックで薪を運ぶ 

 自家で使う薪はもちろん自分でも割りますが、年ごとに何束というように隣町の二人の方々にもお願いしています。窯焚きの時には状況に応じて場所や量を調整しながら薪をくべるので、あらかじめ太細中の薪を準備しておきます。また丸太のままのものもあるほうが窯焚きの前半では焚きやすいようです。
 薪割がすめば、太さごとに分けて針金やわら縄で一定量にくくってまとめておきます。これを一束というのですが、薪の長さも束の太さもそれぞれの産地によって様々なようです。例えば長さは信楽では42センチ、丹波では48センチが一般的です。これは産地特有の窯の様式とも関係があるのかもしれません。
 束にまとめた薪は時には2メートルくらいの高さに積み上げるのですが、乾燥するにつれ薪も縮んでくるので必ず日当たりのいい方に倒れてくるのです。上手に積まないと簡単に崩れてしまいます。傾いているのに気づけば大きな木槌で叩き締めながら直すのですが、倒れてきそうな薪の壁を叩くのは気持ちのいいものではありません。トラックに積んで運ぶときはなおさらですが、きっちり薪を積み上げることも安全のためには大切で、また案外難しいものです。

(02/8/15)


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