2005/12/10(土)22:03
「エミリー」☆
<わたし>の家の向かいの黄色い家には、町の人たちから“謎の女性”と呼ばれる女の人が妹と住んでいました。
その人は、20年近くも家の外に出たことがありません。
知らない人が来るとさっとどこかへ隠れてしまいます。
頭がおかしいのだと言う噂もあります。
ある日、<わたし>の家の郵便受けに“謎の女性”から一通の手紙が投げ込まれます。。。。
絵本「エミリー」は19世紀の詩人、エミリー・ディキンソンを、近所に住む少女の目を通して描いた作品です。
バーバラ・クーニーの絵が当時のニューイングランドを静かに優しく伝えてくれます。
主人公の少女とエミリーが接触したのはたった一度だけ!しかもわずかな時間なのですが、ひっそりとした階段の「まがっているところ」で白い服を着た2人が向かい合う場面は、2人にとっての真実の瞬間をみるようです。
・・・心に美しく残ります。
少女は父親に「詩ってなあに?」と訊きます。
父親は答えます。
「ママがピアノを弾いているのを聴いてごらん。同じ曲を何度も練習しているうちに、あるとき不思議なことが起こって、その曲が生き物のように呼吸し始める。聴いている人はぞくぞくっとする。口ではうまく説明できない不思議な謎だ。それと同じ事を言葉がするときそれを詩と言うんだよ。」
少女が最後にエミリーから手渡された紙切れにはこんな詩がかいてありました。
天国をみつけられなければ・・・地上で・・・
天上でもみつけられないでしょう・・・
たとえどこにうつりすんでも
天使はいつもとなりに家をかりるのですから・・・
作者のあとがきによると死ぬ前の25年間、エミリー・ディキンソンは屋敷の外へは出ようとしなかったそうです。
知らない人には会おうとは、しなかったけれども子どもたちとは仲良しで、庭仕事の達人だったようです。
エミリーの死後、彼女の机の中から1800編近い詩を妹が発見しました。
周りからは、変わった人だと思われていたのでしょう、また孤独であったかもしれませんが、毅然と人生を楽しんでいたのでしょうね。
この季節になると開いてみたくなる絵本です☆
※「エミリー」
マイケル・ビダード(文)バーバラ・クーニー(絵) ほるぷ出版