2008/03/18(火)06:47
鉛筆-7
「キャップロケット」と、私達は呼んでいた。
うん、小学校の低学年はしなかった。
小学校を卒業するとピタリとやめた。
そう、キャップロケットは、小学校の高学年の男の子だけの遊びだった。
構造は簡単だ。
ビニールの下敷きの端を肥後の守で細かく削る。
それを、アルミの鉛筆キャップに入れて、裾を折って栓をする。
それでロケットの完成だ。
私達はキャップを提供したヤツの名前をとって「キータン3号」などと呼んでいた。
うん、下敷きが、ロケット燃料だ。それを暖めればいい。
そう、暖める。仏壇や停電用のローソクとマッチをちょっと拝借していた。
そうだね、肥後の守、ローソク、マッチ、そんなものが手軽に使えた時代だ。
そんなものが手軽に使える。それが創造性を育んだのだろうね。
「キータン3号」に箸をつけて、発射台の牛乳瓶に突き刺す。
「キータン3号」の尻に、火のついたローソクを当てる。
みんなで、耳に手をあててカウントを数える。
ローソクにより、キャップの中のセルロイドは燃えて爆発して発射される。
10、9、8、7……シュワーッ。ピューン。
カウントの最後まで行かずに、鋭い音ともにロケットは発射した。
青い空にシュルシュルと上がって、やがてヒョロヒョロと落ちてきた。
発射した高さは、そんなに高くない。威力もそんなにない。
でも、なにかを実験を成功させた気持ちになって嬉しかった。
うさぎが月にいるという時代に、空に向かって、夢を発射させたんだ。
青空がやけにまぶしかったことを覚えている。
キャップロケットづくりの名人のタケちゃんは卒業文集に書いていた。
「大きくなったらロケット操縦士になって宇宙に行きます」
タケちゃんの友達だったノリちゃんは続いてこう書いていた。
「ロケット操縦士になったタケちゃんのロケットに乗って宇宙に行きたい」
今、タケちゃんもノリちゃんもどこで何をしているかわからない。
ただキャップロケットが上がった青空を懐かしく思い出すだけだ。(つづく)
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