2008/03/21(金)06:58
鉛筆-10
「廊下に立って、バケツでも持っておけ」
今から思うと凄いと思えるが、昔はそんな体罰は普通だったね。
そう、私達も負けてはいなかった。
「身体を鍛えられるし、静かにのんびりと過ごせるからね」
そうのたもうていたよ。
廊下に立っていると、しばらくして、扉が開いて、友達が出てくる。
「おまえもか」
「テヘヘヘヘ、思わず鳴らしてしまったよ」
「そうだよな。思わずだよな」
「まあ、ぼちぼち話でもしておろうや」
ふたり、廊下で立ち話をしていると、教室の方から叫び声がする。
「廊下のふたり、静かにしろオーッ」
テヘヘヘ、これが当たり前の光景だったね。
体罰を与える先生、体罰を受ける生徒、おおらかなものだったね。
そんな時、校長先生が校内巡視とかで回ってくることがある。
うん、背後に手を回してね。
校長先生が廊下から窓ガラス越しに教室の様子を見て回る。
厳しい面持ちの中に慈しみの想いがあふれていたね。
子供心に、その姿にはなんとなく威厳を感じたよね。
そんな校長先生が近づいていくる。
そういう場合、立たされていた私達はどうなるのだろうね。
校長先生に、当然、私達ふたりは見つかるわね。
「どうしたのかね。授業中なのに廊下にいるなんて……」
やさしい声で立っている理由を尋ねられる。
うん、やさしい声に素直に吐くしかないわね。
「そりゃ、授業中に音をたててはいけないよな。
反省はしたかね。これからは注意をしなさいよ」
校長先生は、私達の頭を交互になぜてくれた。
うん、温かい手だったね。
そして……校長先生の取りなしで、教室に戻ることができた。
社会人になっても、上司からよく叱られた。
その時、私はいつも思ったね。
「校長先生が現れて取りなしてくれないかかな」(つづく)
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