あらすじは知っていたけれど、それ以上に
宮沢りえも原田芳雄も浅野忠信もとっても良かった。
淡々と、切々と、きれいで、静かで、優しくて、悲しい映画だった。
原爆投下直後(の写真)と、
復興したヒロシマしか知らなかったから、
傷跡生々しい家での生活は知らなかったら、
こうした人達の不自由な生活の積み重ねがあって、
平和な今につながっていると今更ながらね。
ひとり生き残った宮沢りえが演じる主人公が、
「亡くなった人達に申し訳ないから
私は幸せになってはいけない」と躊躇する。
それを原田芳雄演じる父親があの世から戻ってきて
「幸せになっていいんだよ」とさとし、
娘がようやく受け入れるまでの4日間の物語。
安心し、去っていく父の背中に宮沢りえが声をかける。
「おとったん、ありがとうありました」
一番若い被爆者は、体内被曝の方だからその方が今60歳。
今、まだこの娘さんが生きていたら、83歳。
映画の宮沢りえが不憫でいじらしくて、
心の中で「あなたは悪くないのよ。
それなのにこんなに悲しかったんだから
幸せになってくれなくちゃだめだよ」と叫んでた。
戦争の映画ではあるけれど、
声高に反戦を謳ってはいないのが余計心に沁みてくる映画。
その年頃のおばあさんは、
おなじような日本で生きてきたわけでしょう。
子どものころも、若いころも苦労をしてきたお年寄り。
できる限り大切にしたい。身内も身内でなくてもね。
帰りのバスで、二人がけの席に一人で座っていたら、
最後に乗り込んできたお二人の老婦人。
私が席を譲ろうとしたら、
いち早く若い女の子が二人、サッと席を立った。
一人はすぐ前のほうに移動したので、
まだ近くにいた子に思い切って声をかけた。
「ね、私は一人なので後ろに行くから、
あなたたちこの二人がけの席にどうぞ」
するとその女の子が笑いながら
「あの子と私は友達ではないんです。たまたま隣に座ったの」
「あら、では、あなた、お隣にどうぞ」
女の子は笑って横に腰かけ、降りるときも
「ありがとうございました」とこちらを振り返った。
私にさわやかさを分けてくれた女の子
(ちょっと照れくさいかもしれないけど、
これからもあなたの
優しい気持ちを伝えていってね。)
その子に私から「ありがとうありました」