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カテゴリ:蝶々夫人・蝶々さん
さて、原作ですが
龍馬達が新しい日本をめざした頃、 蝶々夫人のモデル伊東蝶の父鼎之介も 新しい日本のためになるんだと希望に燃えて、 その夢をかなえるため奔走しているところから物語は始まります。 お蝶はいつ出てくるんだ!と逸る気持ちを抑え、読み進める。 寄り道して焼き餅なんぞ、茶屋で食べてる場合か!とせかしたくなる。 ところが、目的を半ばにして鼎之介は命を落とすが、 その時の縁でこの茶屋の娘タキが、蝶の母の親友になったり、 やがては蝶の婚礼に参列する一人となるのだから 小説とは言え、人生の機微を思わずにはいられない。 生まれた時に、既に父はなかった蝶だが、 貧しいながらも武家の誇りを大切にする母と 母方、父方の二人の祖母に多くのことを学びながら 育っていく過程が数々のエピソードと共に綴られている。 無念だったろう父の遺志を受け継いだように蝶は聡明に のびやかに育っていく。 時代小説をあまり読まないので詳しくないから 貧しい武家のイメージは、 映画の「蝉しぐれ」だったり「武士の一分」だったり。 「お金をかけられない分、心はかけた」と 我が母が言っていたのを思い出す。 「女手一つだから出来ることは限られているけれど」と。 私が結婚して、娘が生まれる頃に、 自分の子育て時代を振り返った時に言っていた。 確かに、いえ十分すぎるくらいハートはもらったし、 母の周囲の人達にもね。 そんな人達の想い出が、蝶の「ばば様」達とオーバーラップする。 養蚕は伊東家の生計をたてる大事な仕事。 その蚕が病気になり、全滅した時、 蝶の父方のばば様、みわは形見の大・小を売ることを決意する。 支え合って生きていた女たちには、他に方法がなかったから。 武家なのにと、それをとがめられた時に、 手入れをする男子を失った伊東家ではサビさせてしまうのがオチ、 それよりも大事なのは武士の「魂」を持ち続けること。 潔く売り払い、蚕の借金を返し、蝶の学費を全納した。 まだまだ学校へ行く子は稀だった頃、世の中の役に立つ人間になるよう 蝶に教育を受けさせることが母と祖母たちの願いだった。 刀を売ったお金は50円、 そのうち40円でみわは蝶のために懐剣を作らせた。 それを与える時に母のやえは、蝶に 「武士の自害とは自らを罰することでも敗北でもなく、 人として守るべきものを守り通したという証」と教える。 【送料無料】蝶々さん(上) 11歳の娘を前に母みわは、 「蝶が実際に使うことはないだろう」とも言い添える。 「大切にします」 緊張と誇らしさでいっぱいの蝶の様子を読みながら、 すでに結末を知っている私は 蝶というより、母と祖母の気持ちになってしまうので 胸がいっぱいになって、頁を繰ることが出来なくなる。 このささやかな幸福のままで時を止めてしまいたい。 そんな思いにかられて、先へ進まない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
May 14, 2016 12:19:10 AM
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