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そう思って書いていると嬉しさがよみがえって
笑っているうちに楽しくなる。
読み返した時、また嬉しくなる。
だから、明日が楽しみ!

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April 17, 2011
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下巻

嫌だな。自害して終わるのは知っている。
ピンカートンが、蝶々さんを弄んで去ると知っている。
それを読むのが憂鬱だった。


【送料無料】蝶々さん(下)


さて、舞妓になった蝶々さん。
仲良しの愛八の明るさに助けられ、
周りにも優しくされて、幸福な時間が戻ったよう。

愛八は土俵入りの真似、蝶は笛を披露と
特技を生かして、いっしょに御座敷に呼ばれ
楽しい時間が過ぎていくが

ここでもコレラの流行。
蝶を学校に行かせようと約束してくれた
置屋のおかみさん達が亡くなる。

ユリは奉公に出た長崎で、アメリカ人の養女になり
アメリカに渡った。
迫害され、極貧にあえいでいたユリが、
本人の想像もしなかった道をゆくことになったのに、
蝶の夢は羽を閉じたまま。

ユリからクリスマスカードが届く度、
いつか自分もアメリカに渡るんだと誓う蝶。

そして、蝶はコレル夫人と出会う。

最初に「蝶々さん」の小説を書いたロングの姉であり、
やがては蝶の良き理解者となる夫人に英語を教わる、
お礼は夫人に笛を教えること。

ミュージカル「蝶々さん」はここから始まったんだ。

コレル夫人のもとで働こうとするのも一緒で、
いったんは手が足りていると夫人から断られるのも、
日本人のお手伝いさんから「あの娘は丸山へ行く」と聞き
丸山の意味がわかった夫人が蝶々さんの後を追うのも一緒。

すぐに後を追うが、間に合わず。
ここで、コレル夫人がお蝶を雇っていたら
マダム・バタフライはない。

分厚い本の頁が半分過ぎたころから、
フランクリン少尉が登場する。
オペラのピンカートン、やがて蝶々さんの夫になる男性。

長崎。船の修理が終わるまでの間の滞在。

つかの間のアバンチュール「長崎式結婚」

芸者「お菊さん」と「ロチ」の日本に居る間だけの結婚ゴッコ。
フランスの作家「ロチ」の描く世界に憧れていた彼が、
墨絵の背景に洋館の並ぶ夢の街のような長崎に着いて
小説の通りだと感動していた。


アメリカ独立記念日に領事館主催の宴に愛八と蝶も呼ばれ、
そこでフランクリンと出会ってしまう。

救いは、蝶々さんがフランクリンにほんとうに恋をして
自分の意思で結婚を選んだことだ。

お金のために買われたのではなく。

悲しいのは、蝶々さんがフランクリンをほんとうに恋して
正式な結婚だと信じ切っていたことだ。

「日本にいる時だけの仲、後はバイバイにきまっているじゃないか」

の、ノーテンキなヤンキー(オペラのピンカートン)と違うのは

フランクリンは途中で、蝶々さんは自分の想像していた
お人形のような女性ではないと気づいて後悔する。

蝶々さんは契約と知らず、本気で自分を愛し、
尽くしてくれていたと知り、愕然とする。

小説の「お菊さん」がお金のために日本人妻になったように、
蝶々さんも割り切っているものだと思い込んでいたのだ。

蝶々さんが不憫だから
ほんとうのことを告げたいとコレル夫人は何度も思った。

結婚する前、そして、アメリカに戻った彼を待ち続ける時

夫であるコレル牧師は

「事実を知るより、信じること、希望を持ちつづけること」

が大事と、そのたびに止めた。

蝶々さんは信じつづけ、
彼が去った後に生まれた子どもを大切に育て
その帰りをひたすら待ち続けた。

オペラでスズキにあたる役がお絹さん。

元は丸山でも有名な売れっ子芸者で、

激しい恋をし、そのために苦労を強いられるけれど、
じっと耐える女性。
蝶のそばでずっと助けてくれた姉のような人。

蝶々さんの人生は苦しいことが多いけれど
お絹さんとその夫のドラマティックな恋の話が
ハラハラもドキドキもさせてくれて良かった~。

そして同じ置き屋で仲良しの愛八や
書生の木原君やユリの兄と過ごす時間。
お年頃のみんなが集まった時のはしゃいだ様子、
お蝶さんの青春がちゃんとあって良かった~

どうにか蝶々さんの夢をかなえてやろうとする大人たち、
当時の長崎の人達が堅実に生きて行く姿も胸を打った。

だまされて嘆いて死んでいく女の人生は空しい!
男を待つだけ、お金をもらって、家を与えられ
ただ、ただ頼るだけなんて…

と、オペラのストーリーの印象がぬぐえなかったんだけど

フランクリンの妻が、子どもを引き取ると現れた時も
蝶々さんは極めて冷静だった。
子どものためと、引き際が良かった。

愛するわが子を自分が愛した男性の妻へ託し、
命を絶つ「ミス・サイゴン」のキム。

「蝶々夫人」がベースの有名なミュージカルですが

子どもがいなくては生きる張り合いがないと
自棄になって死ぬのではないと思う。

生みの母を忘れられず、なつかないことで
その子が可愛がってもらえなくなることのないよう。
そんな配慮ではないかしら。

「この子の母は私ではない。あなたなんですよ。
ですから、どうかずっと大切に育ててください」
の想いがあるのではないかと。

蝶々さんは英語が堪能だったのに、

「彼女は、聞きとりにくい英語だった」
とフランクリンの妻はわざわざ付け加えている。
嫉妬を感じます。

彼女にしては憎い相手ですから無理からぬこと。

そして、自害する蝶々さんのその理由は

「私が誰の玩具でもなかったという証明だけはしなければならない」

「夫のフランクリンはあなたを可愛い玩具のようだと手紙に書いてきた。
いっそ玩具だったら、一緒に連れて帰れるのに」

とフランクリンの妻の言葉は優しそうだけど、残酷です。

蝶々さんはその昔、祖母から譲られた懐剣で
立派に自害して果てた。

誇りを守るためにと死を選んだ彼女はわずか21歳。

「蝶々さん」、上下2巻を読んで感じたことは
蝶々さんの一生を書いたこの本は死んだ女の哀れな話ではなく
武士の娘として精いっぱい生きた女の確かな足跡だった。

アメリカへ渡りたかった夢を息子に託して、
蝶々さんは少しの間、羽を休めたのだ。

「蝶は往く 霧立つ海に 花ありと」

死んだのち、蝶に化身し、理想を求めて海を渡っていくという
辞世の句にもそれは現れている。

死ぬのは敗北

とコレル夫人は長年、お蝶の死を理解できずにいた。

けれど、83歳の時、来日した彼女は
「美しく生きることに命がけになった」蝶のことを
わかりかけてきたと語っている。

そして蝶々さんを誇りに思って下さいとも。

プッチーニが残した美しい曲、
オペラに文句つけるわけじゃなく

(当時は、歴史の浅いアメリカに対しての軽視があったので
ノーテンキでデリカシーのないピンカートンになっているらしい。
日本に関してはほとんど知られていなかったから無理もない)

蝶々さんが自分の意思で生きて愛した人だった!
それがわかって良かった!






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最終更新日  February 17, 2019 09:08:34 PM
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