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21世紀の教育をめざして・・・

21世紀の教育をめざして・・・

語りの指導

   『語りの指導』

 ●絵本の選び方

最初は、以前の記録を転記しておきます。昨年度の記録です。
メルマガ「楽しい授業・学級づくり」からです。
今年の修正点は、絵本の選び方です。昨年度は、
『最初は、お話を決めることから始めます。私のそこでのポイントは、
・会話が多い
・繰り返しのおもしろさがある
・登場人物の対比がはっきりしている
・5分以内に短くできるもの
・語る子どもの声や雰囲気にあったもの
の5点です。練習し始めて変更は無理なので、ここでの本選びは意外と厳しいで
す。』
と書いています。次の2点を付け加えます。
・(できるだけ)明るい話、元気の出る話
・場面構成に変化があるもの

  ●指導の主な内容

******★☆★****************************
 『楽しく伝え合う学級づくり』(23)
     「語りべ大会への取り組み」
                               菊池 省三
*************************************

今学期も子どもたちとたくさんの取り組みをしました。その中のひとつに、「語り
べ大会」がありました。「第15回西日本地区子どもと大人の語りべ大会」という
コンクールです。昔話等を5分以内で語るコンクールです。第3回大会から毎年
学級の子どもを参加させています。(そのことが評価されて閉会式で特別賞をいた
だきました。後日、立派な賞状をいただきました。)
語りは、パブリックスピーチやディベートとは正反対の表現のおもしろさがあり
ます。話芸のおもしろさです。これも表現することの楽しさでしょう。1度経験
すると子どもたちはどんどん熱中していきます。

今年は、7人参加しました。それぞれの話題は、「おきゃくのきつねさま」「スー
ホの白い馬」「ずうっと、ずっと、大すきだよ」「ふとりすぎですよサンタさん」
「吉四六話 ねこがみわける」「ふしぎなおるすばん」「さるとかに」でした。

練習は、休み時間と総合的な学習の時間、放課後でした。約2週間の練習でした。

最初は、お話を決めることから始めます。私のそこでのポイントは、
・会話が多い
・繰り返しのおもしろさがある
・登場人物の対比がはっきりしている
・5分以内に短くできるもの
・語る子どもの声や雰囲気にあったもの
の5点です。練習し始めて変更は無理なので、ここでの本選びは意外と厳しいで
す。

次は、読み込むという練習です。覚える必要はありません。何十回と読み込ませ
ます。絵本をコピーさせて練習させます。時々、
「そのお話を色に例えると何色?」
「その人物は、どんな人? 一言で言ってみて」
「どれぐらい時間がたったの? その間は何を考えていたの?」
などと質問します。そのお話の世界を理解しているのか確認していくのです。

そして、一人ひとり呼んでコピーを見ながら読ませます。時間を計りながら私は
聞きます。同時にポイントとなる読み方をメモしていきます。
「じゃあ、今から自分なりに工夫して読んでみよう。先生は、こうしたらいいな
と思うことをメモしながら聞くけど、それは気にしないで読んでね。 
 時間も計るけれど、これは5分以内に後で削るためだから、今の読み方でいい
からこれも気にしないでね」 
といったことを話して読ませます。
その後に、メモを元に気づいたことを話し、その場で練習させます。多くは、
・言葉の発音(「しりとり」「かつおぶし」といった名詞は特に口形に気をつけ
させます。)
・文末の読み方(「口をすぐに閉じろ」というのが基本です。)
・間(ま)のとり方(具体的に2秒、3秒と決めていきます)
・場面ごとの速さの違い(少し早口で読む場面とゆっくり読む場面とを決めま
す。どれぐらい違うのかを私がして見せて、それをまねさせます。)
・息だけで話す部分を決める(大会はマイクを使います。そのため、息だけで
話す~マイクでは声となって聞こえる~内言語の部分を決めるのです。)

その後、5分以内になるように削ります。必要な説明部分を残して、それ以外の
説明部分をバッサリ削っていくのです。あまり細かなことを考えないでバサッと
短くしていきます。
ここまですると、後はコピーを見ないで語れるように練習あるのみです。大会1
週間前がこの状態です。

大会2日前に、クラスのみんなの前で語ります。人前で語る練習です。時間と語
りのポイントができているかをチェックします。
前日は、1年生の教室に行って本番と同じように語ります。初めての相手に語る
練習です。度胸試しです。これをすると子どもたちは自信を持ちます。

以上のような練習を経て、当日をむかえるのです。
どの子も緊張しながらも練習の成果を発揮していました。ステージの上でライト
を浴びて堂々としていました。
結果は、
「さるとかに」が最優秀賞。「ふしぎなおるすばん」が優秀賞でした。全員にもら
えた参加賞にあたる努力賞も、立派な額入りの賞状と副賞のオルゴールでした。
審査委員の高評の中に、
「今日みなさんが語ったお話は、一生忘れないでしょう。宝物です。」
といった内容がありました。そのとおりだと思います。

  ●聞き手を意識した語りの指導

選んだ絵本を読み込み、5分間のお話に縮め、暗記した後は、
1.声でお話を立体的にする
2.聞き手を意識した語りをする
3.マイクの使い方を工夫する
という段階に進んでいきます。

1.声でお話を立体的にする
ポイントは、緩急、大小、強弱、間、です。
もちろん発音、発声という声の指導もします。
1語、1文、1場面と絵本に合わせて指導していきます。
具体的には、手本を示すという方法で以下のような流れで指導します。
「教師がやってみせる→なぜそうするのかを説明する
 →絵本のコピーに工夫を書き込む→子どもにさせてみせる
 →合格のサインを出す→練習させる」

このような指導を通して、お話を立体的にしていきます。
声の変化をつけることによって、
耳で聞いても立体的に聞き手がイメージできるようにするのです。

2.聞き手を意識した語りをする
ポイントは、視線、体の向き、身振り手振り、です。

イメージとしては落語です。笑 

視線は、会場全体に動かします。
子どもは、正面を向いているだけのことが多いですね。
それでは語りになりません。最初は意識して全体を見るようにします。
「目線が合う」という感覚は2秒間は目を合わすこと、
と練習中からしつこく話します。

会話の部分は、二人が向き合って話しているように、
体を交互に動かします。
Aが話す時は体を左に、Bが話す時は体を右にというように。

身振り手振りは必要に応じて自然に、が基本です。
劇ではありませんからオーバーにする必要はありません。

3.マイクの使い方
NHKの元アナウンサーの審査員が、
「マイクを上手に使ってください」
と、以前の講評で話されていました。
・息が不自然にかからないように(ブワッという音を出さないように)
・マイクは口の少し下にあるのがよい
・大きな音は、逆にマイクを通して小さく話す
このようなことを話されていました。

マイクを使って練習させます。
上に書いたアナウンサーの指摘されたことの他に、
「自分の声を自分で聞けるようになろう」
ということも指導します。これは大きなポイントです。

  ●大会3日前の指導(確認事項)

・5分以内になっているか
・覚えているか
まず、この2点を確認します。
次に、
・緩急、大小
・マイク音
を確認します。
最後に、
・体の向きの変化
・自然な身振り手振り
を練習し確認していきます。

  ●練習のポイント

練習のポイント。
1.伏線をどう語るか
物語には事件につながる伏線がちりばめられています。
何かを予感させる描写です。例えば、
・突然、黒い雲が出てきました。
・その時、ちいさな人形が転がってしまいました。
といった表現です。
「この描写は何の伏線か」を理解させて、
このような描写の語り方を指導します。

基本的には、
・間(ま)を2秒から3秒とって語り始める
・声を小さくする
という方法をとります。

2.会話部分をどう語るか
語りのおもしろいところに、会話文の工夫があります。
子ども「どうして?お母さん?」
母親「心配はいらないよ。そのまま進んでごらん」
子ども「大丈夫かな・・」
といった部分の語り方を工夫させます。
その子の読みの深さが出ておもしろいですね。

基本的には、
・子どもは速く、大人はゆっくり
・こどもは少し斜め上を向いて、大人は斜め下を向いて
という語り方をさせます。
二人が向き合って話している感じを出します。

  ●一人ひとりへのコメント

第16回西日本地区こどもと大人の語りべ大会が終わりました。
クラスから参加した10人は本当に本当に素晴らしかったです!

一人ひとりの語りを聞かせて見せてもらいました。
普段の様子、練習の様子、・・・いろいろ思い出していました。

真剣な顔、練習以上の声や動き、・・・素敵でした。
語り終わってステージから降りたときの笑顔に、
どの子も満足感がありました。

結果は、
☆優秀賞「ちびむしくん」
☆優良賞「おじいちゃんわすれないよ」
☆優良賞「ともだちほしいなオオカミくん」
でした。
「誰が入賞してもおかしくない」と感じていました。
それほど10人全員ががんばりました。

  【お礼に一人ひとりへのメッセージ】

・「はじめてのおつかい」
小さな女の子の初めてのお使いのドキドキ感がよく出ていました。
明るいかわいい声で聞きやすかったです。正直、
「入賞した」
と思っていました。

・「ちびむしくん」
最後まで5分という制限時間との戦いでした。
休日前の帰りに、
「心配だから5分に削ってください」
と私のところに来た勇気に感心しています。

・「めっきらもっきらどおんどん」
昨年までお姉ちゃんが参加していました。その影響からか、
「今年の大会はいつですか?」
と何度も聞きにきていました。練習の成果は十分に発揮していました。

・「わたしがママのこでよかった?」
小さなルルとお母さんの会話で進むお話です。声がとても綺麗でした。
今までの練習も含めて1番の「デキ」でした。
優しいお母さんの声がきまっていました。

・「とべないほたる」
普段はおとなしい女の子です。コツコツ練習していました。
サ行の発音が心配でしたが、キチンと本番には修正してきました。
初めての大きな大会でした。この経験は素晴らしい財産になるでしょう。

・「おじいちゃんわすれないよ」
お母さんが、
「このお話を選んだのは倒れたおじいちゃんが・・・」
そう話されていました。遠くを見つめるような視線で語っていました。
綺麗な発音で練習したとおりに語ってくれました。

・「ぼくのちいさなせんちょうさん」
最高の語りでした。「最優秀賞かな?」と私自身思っていました。
気持ちを強く前に出し、声もテンポも視線もドンピシャでした。
この1年間で「前に向かって」を大切にした成果を発揮してくれました。

・「はやくかぜなおってね」
いつもコツコツ練習をしていました。努力家です。
彼女らしい語りでした。安定していました。高学年らしさを感じました。
指示通りに修正し仕上げてくる力はたいしたものです。

・「ももたろう」
「逃げない」がテーマでした。お話のイメージに近づくために、
「元気よく」を1番に練習していました。最後は基準をクリアしました。
このような経験を積めば積むほど成長していく女の子でしょう。

・「ともだちほしいなオオカミくん」
気持ちを前に出して、お話のイメージどおりに語ってくれました。
丁寧にキチンと仕上げるという本人の課題をクリアしたと思っています。
声の変化、視線の動かし方も見事でした。

  ●語りべ大会審査講評

1. 自然な立ち姿で語ろう。
 体の後ろで手を組んだり力を入れて(緊張して)手を握りしめたりしない。
 手は横に自然におく。または、前で静かに組む。

2. 視線を工夫しよう。
 聴いている人全員を見るようにしよう。お話の展開にあわせて視線の動かし方
を考える。
 特に会話の部分は、二人が向き合って話し合っているように顔の向きを考える。

3. 発音に気をつけよう。
 聴きやすい発音になるように練習しよう。
 速さ、テンポを変えること。声の強弱、高低にも気を配ることが大切。

4. 身振り手振りは大きく。
 入れるのであれば大きくするべきである。聞かせる=見せるのであるから、大
きい方がよい。

○みなさんは、とっても大きな宝物を得ました。品物ではない心の中に大きな宝
物を得たのです。きっと大きくなって役立つことでしょう。

        【覚え書き】

*主題が明確なお話の方がよい。
*人物の動きが大きくはっきりしている話の方がよい。
*構成の変化(例:現在→過去→現在)が大きい話の方がよい。






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