<291>良い印象と悪い印象 最終回
こんにちは。今日は私自身がインタビューをした中で、最も印象のよかった方、最も印象の悪かった方のお話をさせていただきます。 最も印象がよかったのは、女性ニュース・キャスターのKさん。美人で頭の非常にいい方ですから、男性である年配編集者とカメラマンはお会いする前からかなりの興奮状態です。 私もかつて芸能レポーターSさんをインタビューしたときから少しばかり経験を積み、もはやKさんほどの才媛を前に「負けてなるものか」と肩肘張るほど幼くはありません。話を引き出してやる!という奢った態度ではなく、お話を聞かせていただくという真摯な気持ちで、この日のインタビューに臨んだのでした。 お会いするなり見せてくださった美しい笑顔と背筋の伸びたきちんとした姿勢は、テレビで見るものとまったく変わりません。テレビ用と取材用では顔つきの違う方も少なくありませんが、Kさんに限っては、本当にテレビで見たままの印象です。 しかし“最も印象がよかった”と思わせたのは、インタビューをしている最中の態度でした。正面に私、その脇に中年編集者、2人が座るソファから少しはなれたところにカメラマンと、Kさんの視界には3人の人間がいたわけですが、彼女は一つの質問に対して、その3人の顔を交互に見ながら答えるのです。これは難しいことではありませんが、通常なかなかしてくださらないことです。 撮影が終わってもインタビューは続いていたので、カメラマンは機材を置いて話を聞いていました。多くのカメラマンがそうするように、彼も着席することなく、インタビューの空間からやや外れたところに―悪い言い方をすれば、たとえいなくなっても気づかれない、そんなポジションに立っていました。 そういった存在に向かってまで、インタビュアーや編集者へ向けるのと同じように顔を向け、笑顔を送る。なんと素晴らしい気配りをする方だろうと、感心せずにいられませんでした。そのカメラマンがSさんの大ファンになったことは言うまでもありません。 それとはまったく対照的に、インタビュー開始から30分ほど経っても「疲れた」と言ってこちらに目を向けようとしないタレントさんがいました。これがもっとも印象の悪かった方。当然です。いくら疲れているといったって、あなた、これもお仕事でしょう? そちらの事務所がホテルの一室を借りなきゃインタビューには応じないと言ったから、こちらはギャランティのほかに法外な場所代を払っているんですよ! もちろんそんなことはおくびにも出しませんでしたが、態度の悪さにあきれ返ったことは事実です。 このときは無理しても仕方ないと、彼に付き合うようにのんびりと世間話をしながら、こちらに目を向けるまで気長に待つことにしました。そのかいあって、最終的には彼のお疲れも癒え、トークは饒舌に。「いや~、インタビューうまいっすね、感心しました」。終了後、カメラマンからそんなお褒めの言葉まで頂いてしまいました。嫌な感じの初対面でしたが、どうやらこれが数少ない私のインタビュー成功話となったのかもしれませんね。 ‥‥ 私の担当は本日をもってひとまず閉店。一週間私の日記にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。