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chapter11

LastGuardian

chapter11「Responsibility」

PM9:00。
レドナは、自室のベッドに居ることに気がついた。
体を半分起こし、さっきのことを思い出す。

レドナ「俺は・・・イクトゥーを・・・」

傷や痛みは一切無かった。
イミティートの黒衣を身に纏った直後、傷が治ったことを思い出した。

その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
返答したかったが、あまりにも色々なことが瞬時にありすぎて茫然としていた。
ドアが開き、暗い部屋に光が入る。

フィーノ「あ、レドナさん・・・もう大丈夫ですか?」

見ると、夕食を持ってきたフィーノだった。
もう9時だから、香奈枝も帰ってきているのだろう。

レドナ「・・・ごめん、迷惑かけて・・・」
フィーノ「いえ、レドナさんが大丈夫でしたら、それで安心です」

部屋の電気をつけて、机に夕食がのったトレーを置いた。
そして、レドナは一番肝心なことを思い出した。

レドナ「そ、そうだ!真と香澄は!?」

あまりの大声に、フィーノがビクっとする。

フィーノ「お2人なら、もう大丈夫ですよ。
     意識も戻って、暗くなる前に家に帰しました」

笑顔で振り返って言う。

レドナ「そうか・・・よかった・・・」

心の底から、レドナはほっとした。

フィーノ「ちゃんと食事は取らないとだめですよ~。
     では、また10時頃に来ますね」
レドナ「あぁ・・・ありがとう」

それから、フィーノは部屋を出て行った。
さて、レドナはこれから考えることが3つあった。
真と香澄にはどう説明するか。
今後のイクトゥーはどうするか。
4人には、どう謝ろうか。
そこまで考えて、もう一個新たな問題が浮上した。

この力で、責任はとれるのか―――。


翌朝。
今日は土曜日で、朝から真と香澄が鳳覇家へと来た。
幸いかどうかはわからないが、フィーノと香奈枝は朝一番に何処かに出かけにいったようだ。
無事でいた、レドナを見て2人もほっとしたようだった。
しかし、すぐに暗い雰囲気が漂った。
そして、2人は招かれるままレドナの自室に入った。

レドナ「ほんと、お前らも無事でよかったよ」
真「お、おう・・・・」

さっきから、2人はレドナと視線を合わせようとしなかった。
ふと、流れた沈黙。
それを破ったのは真だった。

真「なぁ・・・暁、俺らを叱らないのかよ」
レドナ「え・・・」
真「俺らの所為で、奴等に大事なもん奪われたんだろ!?
  皆止めたのに・・・俺たちが無理に手伝いたいって言ったから・・・」

真の目に涙が浮かんだ。
こんな姿をレドナが見たのは、初めてかもしれない。

真「マジで・・・わるかった!」
香澄「私もほんとに、ごめん・・・」

2人は思いっきり頭を下げて、レドナに謝った。

レドナ「悪いのはお前らの所為じゃないって、それに責任をとるのは俺だ」
真「で、でも・・・でもよぉ・・・!」

納得がいかないように、真は反抗した。

レドナ「じゃあ、お前らに責任、取れるか・・・」
香澄「できる範囲でなら、なんだってするよ!!」

香澄も、涙目でレドナに訴えた。
それに、呆れたようにレドナは冷静にこういった。

レドナ「・・・分かった、ならイクトゥーを全員見つけ出して殺せ。
    そして、天鳴石を奪還しろ」
真「・・・・っ」
香澄「・・・・・ぇ」

普通の人間では、到底無理な話しだ。
しかし、それを分かっていて、あえてレドナはそういった。

真「できるんなら、俺たちだってそれがしたいよ・・・っ!!」
レドナ「出来ないことはない。
    いくら奴等でも、至近距離で核爆弾とか爆発させれば殺せる」

もっともな事だった。
それであれば、人間でもイクトゥーを倒せる。

香澄「そ、それは・・・・」

2人は下を向いた。

レドナ「できねーだろ?
    なら、お前らの責任は俺に任せろよ」
真「あ、暁・・・」
香澄「暁君・・・」

真は、涙を拭い、こういった。

真「でも、俺らに何か一つでも責任をとらせてくれよ!」

強く願う真。
それに、レドナはこういった。

レドナ「じゃあ、1つ責任とってくれ。
    どうしようもなくなった俺を、ずっと支えてくれ――」

真と、香澄は驚きを隠せなかった。
今までのレドナから、こんな言葉がでるとは思っていなかったからだ。

レドナ「2人に辛い顔は似合わねーし、それに、お前らには笑顔で居てほしい。
    それが、俺の支えになるから」

レドナは、本当に思っていることを、そのまま言葉にした。
ただ、それだけだった。
真と、香澄が居なかったら、ここまでこれなかった。
もしかしたら、もっと前に、レドナという存在は消えていたかもしれない。
2人は、直接的にではなくても、間接的にレドナの心の支えとなっていた。

真「あ・・・暁ぁ~っ!!」

目にいっぱい涙を浮かべて、真がレドナに抱きついてきた。
まるで、ずっとお預け状態だった餌に飛びつく犬、いやこの際猛獣のように。

レドナ「うわぁっ!?ちょ、ちょっと離れろってー!」
真「俺・・・ずっと暁の支えになるよ!ずっと、暁と一緒にいるよ~!!」
レドナ「わ、わかったからはーなーれーろーって!!」

もがくレドナに必死に真はしがみ付いていた。
それでもなお、抵抗するレドナ。

香澄「あ、暁君・・・ふふっ」

涙を拭きながら、そんな光景を見て、香澄も微笑んでいた。
ちょうど、その時真はレドナの怒りの拳を腹に喰らい、ダウンしていた。


一方、月影市。
とあるビルの屋上に、オローズは居た。
昨日のレドナ戦にて、全滅の恐れを避けるため、イクトゥーは一時的にバラバラに散っているのだ。
ヒュルイエの降臨は、レドナの覚醒により大幅に遅れることとなった。

オローズ「くそっ、さっさと殺すべきだった!!」

怒りに、オローズは壁を殴った。
コンクリートの壁に、少しひびが入る。
その時、ふと重い空気を感じた。

ヒドゥン「そんなに、彼に負けたことが悔しいか、オローズ」

いつの間にか、オローズの隣に白いコートを着、フードを深く被ったヒドゥンが居た。

オローズ「お、お前は・・・ヒドゥン!?」

突然の出来事で、オローズは一歩踏み下がった。
しかし、次にオローズは笑みを浮かべた。

オローズ「いや、今回はちょうどいいところに来てくれたってことにしてやろう。
     ちょうど、レドナのことでイライラしてんだよ!」

オローズは戦闘型魔法陣を展開させた。
ビルの屋上から魔法陣が描かれ、瞬時にそこは地球から除外された戦闘区域と化する。
そして、オローズはトライデントスピアを具現化させた。

ヒドゥン「戦う気か・・・?」
オローズ「それ以外になにかあるかよ!!」

槍を両手で構え、ヒドゥン目掛けて突く。
コートのポケットに手を突っ込んだまま、ヒドゥンは後ろに飛び、距離を置いた。

ヒドゥン「まったく、今は私もレドナを見守るのに忙しいというのに・・・」

ため息交じりにヒドゥンが呟くように言う。
そして、ポケットから両手を出した。
両手を開くと、その手に蒼白い光が生まれ、それが武器の形へと変わっていく。
現れたヒドゥンの武器は、グリュンヒルに酷似した2本の大剣だった。

ヒドゥン「私のキルブレイクとオメガの力を見て下がれ・・・」

オローズは、咆哮と共に、再び槍を構え、ヒドゥン目掛けて突いた。
左手に持つ、グリュンヒル・オメガでそれを叩き、軌道をそらす。
そのまま軌道にそって、オローズは一回転し、再び真上から突き刺す。
今度は右手に持つグリュンヒル・キルブレイクでガードする。

ヒドゥン「うるさいハエは、やはり下げる前に殺そう・・・」
オローズ「なんだと!?」

グリュンヒル・キルブレイクの刃に描かれた紋章が血の色のように赤く光る。
そして、柔らかな音がした。
ふと、オローズはレドナを思い出した。
あの時と似ている、むしろ同じと言っていいほどに。
しかし、違うのはここからだった。
武器は何とも無いのに、それを持つオローズの右手にオレンジ色の亀裂が入る。

オローズ「な、なんだこれは!?」
ヒドゥン「キルブレイクの特殊能力、それは相手を細胞1つ残らず消滅させる・・・」

だんだん亀裂が腕へと侵食していく。
痛みというものはない、ただ例えようもない恐怖、今から死ぬのだという恐怖がオローズを襲った。

アギト「オローズから離れろぉっ!!!」

ふと、後方からアギトが現れた。
魔法陣展開を察知し、自分もその中へと入ってきたのだ。
その手には大鎌が握られている。
思いっきり振りかぶり、ヒドゥンの足元に振り下ろした。

ヒドゥン「くっ・・・・!」

軽くジャンプし、攻撃を避ける。
しかしその間、キルブレイクがトライデントスピアから離れた。
途端、オローズの右腕が消えていった。

アギト「オローズ!?」
オローズ「気をつけろアギト!そいつの武器に触れるな!」

必死の忠告を聞き、アギトはヒドゥンの振り下ろすキルブレイクを受け止めるのをやめ、低く飛んで回避した。
右足から左足へと軸を変え、アギトは一回転し、遠心力の突いた鎌の刃をヒドゥン目掛けて振り上げた。
しかし、それはグリュンヒル・オメガで簡単に止められた。
すぐさま忠告を守るため、スィングシザーをオメガから離す。
地面を強く蹴り、高く飛翔する。
ヒドゥンはそれを追わず、ただ屋上のコンクリートに立ったまま、しかし目は完全にアギトを捉えている。

ヒドゥン「おや、そろそろ時間か・・・」

時計を見てもない、ただ空を見上げ、ヒドゥンは呟いた。
そして、ふっと笑った。

アギト「ま、まてっ!!」

言い終える前に、ヒドゥンという存在は目の前から居なくなった。
そして、すぐさまアギトは、オローズの傍に駆け寄った。

アギト「だ、大丈夫ですか!?」
オローズ「あぁ・・・痛みは無い・・・。
     だが、ヒュルイエの効力でも再生できない・・・」

残った二の腕を、オローズが左手で撫でる。

アギト「ヒドゥン・・・アイツは一体・・・・?」
オローズ「深追いはするな、俺の二の舞になる。
     そろそろ、魔法陣解除するぞ」

そう言うと、5秒後に、再び魔法陣が足元に現れた。
そして、今度は逆に収縮していき、地球の時間とリンクする。
オローズは、さっきとは違う、だがさっきと同じ青空を見上げた。

オローズ「時間が無い、明日イクトゥー8人全員召集をかける。
     そして、残りの4人も再臨の力で復活させる」
アギト「それから、ヒュルイエを?」

オローズは、ただ黙って頷いた。



PM12:34、神下市。
昼間から、堂々とこちらも魔法陣を展開しているのには理由があった。
中に居るのは、4人のガーディアンだった。

ロクサス「いっけぇっ!!」

トゥワイスブレードを突き上げる。
魔法陣が展開し、炎が現れ、漆黒の新たな衣服、イミティートの黒衣を着たレドナに飛んでいく。

レドナ「ガードっ!」

レドナは、その場から一歩も動かずに、言った。
すると、幾重にも重なっていた胴体部分のベルトが数本解けた。
そして、それはすぐさま向かってきた炎に伸び、弾いた。

フィーノ「えっと、ベルトが解けてから2.31秒で弾きました」
カエデ「ベルトが一本解けるのが、0.72秒ね」

ストップウォッチを持った2人が記録を言う。
そう、今4人は、レドナの新しい力を把握しているのだ。
敵を叩くには、まず自分がどこまでいけるのか知らなくてはならない。
衣服を着てからの移動速度、耐久力、俊敏性、特性―――。
武器に置いても、攻撃力、防御力、リーチの長さなど―――。
特にレドナが気になっていたのは、グリュンヒル零式の武器破壊のことである。
ヒャイムのグラヴィティーブレイドを粉々に破壊したあの力。
試してみたくとも、仲間の武器を破壊することはできない。
とにかく、今はできる範囲での測定を行おうとしているのだ。

レドナ「ってことは、動くのに1.59秒・・・。
    右端から左端に瞬時に動かせるとして3秒強か・・・」

2人が数字を出した瞬間に、レドナが呟いた。
大抵こういう測定には電卓もつき物であるが、それは今回持参していない。
すでに"レドナの脳みそ"という電卓があるからだ。

レドナ「次は武器の測定いくぜ」

そういって、両手を開いた。
蒼白い光が走り、武器の形へと変化していく。
両手を開いて2秒半、レドナの両手にはグリュンヒル零式とガルティオンが握られた。

カエデ「ちょ!それ、"武器殺しの大剣"じゃない!」

珍しいものでも見たような驚きでカエデが言う。
実際のところ、武器好き少女カエデが言うのだからそうとう凄いものなのだろう。
それは、その武器の所持者であるレドナも感覚で分かっていた。

レドナ「ぶきごろしの・・・たいけん?」

右手に握られた、漆黒の剣を見つめた。
この武器の名前がグリュンヒル零式であるとしか知らないレドナが首をかしげる。
まさか、この大剣にそんな物騒な名前がついているとは――。

カエデ「うん、ウェポンクラッシュっていう超珍しい特性を持ってるんだよ~」
レドナ「それって、相手の武器を粉々に破壊するって奴か?」

対ヒャイム戦でのグラヴィティーブレイドを木っ端微塵にしたことを思い出す。
一番知りたかったことの答えが、すぐに見つかりそうだった。

カエデ「そうそう、でも使うには自分の魔力を限界ギリギリまで削られるけどね。
    とにかく、武器を破壊する大剣ってことで"武器殺しの大剣"って名前が付いてるの」
ロクサス「そりゃ、痛いメリットとデメリットだなぁ・・・」

そういうロクサスの目も、グリュンヒル零式に釘付けである。

フィーノ「プラグレサーの効力も、凄いんですね~」

感心したようにフィーノが言う。

カエデ「でも、並み以上のことが起きないと滅多にお目にかかれないわよ。
    ほんと、カッコイイな~ゼロぉ~」
レドナ「ゼロ・・・・?零式(れいしき)じゃないのか?」

心底欲しそうに惚れ惚れ言うカエデは、零式をゼロと呼んだ。

カエデ「ははっ!これ、実際は"ゼロ"って読むらしいよ?
    まぁ、私も最初は"れいしき"かと思ったんだけどね」
レドナ「ふーん。
    個人的には"れいしき"のほうが好きだけどな」

やっぱり、と言ったように笑って言うカエデ。
それに、個人的な意見を述べるレドナ。

カエデ「叫ぶときにゼロ!か、れいしき!って言うと、ゼロのほうが言いやすくない?」

ふと、レドナは考えた。

レドナ(いくぜ、ゼロッ!!・・・・。
    いくぜ、れいしきっ!!・・・・)

レドナ「・・・ほんとだ」

心の中で叫んでみると分かった。
無論、心で叫んだことはぜんぜん顔に出ていなかった。
実際のところ、"れいしき"が本名で、呼びづらいから"ゼロ"にしたのではないだろうか。
そんな、どうでもいい推測を胸に、レドナは再びグリュンヒル零式を見た。

それから、テストが終ったのは、1時間後のことだった。

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