chapter1LastGuardianIIStarting Starschapter1「Encounter」 AM7:00 清々しい朝。 今日の天気は快晴。 冬の寒さを忘れさせるほど蒼穹の空。 それを、病室のベッドの上から眺める一人の少女が居た。 ???「今日は、ええ天気やなぁ・・・」 背伸びをしながら、その少女が呟く。 そして、下を向いて、少女は自分の足をさすりながらこう言った。 ???「こんな日は、外ではしゃぎたいんやけどね」 その少女の目には、少し涙が浮かんでいた。 だが、それをすぐに長袖の裾で拭う。 ???「こんなこと考えたらあかんって、はよぅ、よぉなるんや。 それに、学校もあるしなぁ」 一転し、少女は笑顔で言った。 そして、再び蒼穹の空を眺めた。 AM7:34 神下高校へと向かう道に、2人の姿があった。 1人は漆黒のボサボサの髪に、真紅の瞳を持つ少年、鳳覇 暁。 1人は金髪の長い髪に、青い瞳を持つ少女、鳳覇 睦月。 どちらも、一見して普通の人間である。 だが、これは偽名である。 本名は、レドナ・ジェネシックとフィーノ・ラライド。 彼らは裏の世界で、世界の歪みを止めるガーディアンと呼ばれる存在だ。 レドナ「にしても、今日は珍しく快晴だな」 空を見上げて、レドナが言う。 フィーノ「そうですね~、なんだか足取りも軽くなっちゃいます」 ニコっと微笑んで、フィーノも同意する。 レドナ「でも実際は、この角を曲がったら雰囲気は大雨だな」 そういって、顎で次に曲がる角を指した。 フィーノ「あ、あはは・・・・」 理解したフィーノが苦笑する。 そこを曲がれば、神下高校までほぼ一直線という道だった。 いつも、ここで待ち合わせもしていないのに、いつもいる人物が2人いる。 1人の少女まではセーフである。 問題は――― 真「よぉ~!アァ~キラ、エェ~ンド、ムツキちゃ~ん!」 角を曲がる前に現れた人物。 無駄にテンションの高い、高田 真である。 香澄「おはよう、暁君、睦月ちゃん」 もう1人も、爽やかに挨拶をする。 青山 香澄である。 レドナ「おはよーさん」 フィーノ「おはようございま~す」 正直、2人も角を曲がる前に出現するとは想定外だった。 しかし、そこまで驚きもしなかった。 そして、この快晴の天気を曇らせるほどの発言が、レドナの口から出た。 レドナ「あぁ~真、一つ忠告しておいてやる。 ベタな英語はやめろ、正確には"and"と言う場合は"a"と"n"の間はのばさない。 それに、あからさまにエンドというと"end"で終りの意味を指す。 以上、今後気をつけるように」 淡々と目を瞑って、無表情に言う。 無表情のわりには、刃物の鋭さを含む発言であった。 真「は、はい・・・・反省いたします・・・」 すぐさま真は謝った。 ここで反抗しても勝ち目が無いことは分かっているからだ。 それから、十数分後、神下高校へと到着した。 昇降口で、靴を履き替える。 どうやら、まだクラスにいる人数は少ないようだ。 上履きに履き替えて、教室へ向かう。 その時、フィーノが思い出したように言った。 フィーノ「ぁ、そうだ!今日お昼、学食でご一緒しませんか?」 真「おう、俺は構わねーよ?」 レドナ「あんまり同じ地位に立ちたくないが、右斜め上に同じく」 横目で真を見ながらレドナが言う。 真「斜め上ってなんだよ!斜め上って!?」 レドナ「呼んで字の如く、斜め上」 そういって、レドナは真の質問の返答を一瞬ですませた。 香澄「うん、ちょっとクラス変更があってから、私達のクラスに転校生がきてさ。 ちょっとその子に会わせようかな~なんて」 クラス変更というのは、今から1ヶ月前のことを指す。 と言うのも、クラスの不良どもが大暴れをして退学させられたのが原因である。 1-C組のみ、ガランとした教室になったので、急遽クラス変更をしたというのだ。 レドナと真は同じままだが、香澄とフィーノとで別クラスとなった。 真「おぉ!!それって、女子ランク3に入る美少――うぐっ!」 言い終える前に、真の頭部に拳が落ちる。 その持ち主はレドナ。 当然のことをしたまで、というような平然な顔をしている。 フィーノ「う~ん、まぁそんなところですよっ。 では、またお昼に~」 そう言って、フィーノと香澄はA組へと入っていった。 真「そんなこと・・・って、やっぱり当たってたり?」 レドナ「さぁ~な、ランク15以内とか」 さっきのゲンコツの痛みも忘れ、平然とボケる真に呆れつつ、レドナはB組へと向かった。 その後ろを考えながら真が追いかけていった。 AM8:18 A組では、仲良し3人が教室の一角を陣取って会話をしていた。 香澄「それで、今日はやてちゃんに会わせたい人がいてね」 この3人のリーダー的存在の香澄が提案する。 そして、はやてと呼ばれた少女がそれに答える。 はやて「うん、ウチでええなら・・・。 誘ってくれて、おおきにな」 香澄「転校してきたばかりなら、まず友達作りが響くからね」 どうだ、と言わんばかりに、ウィンクする。 はやて「ははっ、せやなぁ~。 でも、ウチこれやから、迷惑かけるかもしれへん・・・」 そう言って、自分の車椅子を見下ろした。 彼女は、以前から何か原因不明の病気で足が麻痺している。 病院の何処を行っても、まったく良い返答は得られなかったようだ。 それでも、何不自由なく元気に過ごしている、強い子でもあった。 フィーノ「心配しなくても、優しい2人ですから大丈夫ですよっ! それに、はやてさんなら仲良くなれますよ」 笑顔で、励ますようにフィーノが言う。 はやて「そうやと、ええけどなぁ」 香澄「ぁ、でもちょっと片方は厄介だから・・・ね」 苦笑して、香澄が真のことを言った。 PM00:15 学校中にチャイムが鳴り響き、昼食の合図を告げた。 真「来たぜ!来たぜ!来たぜ!!」 このときを待っていたかと言わんばかりに真が吼える。 期待の大きさを痛感した。 レドナ「期待は裏切られる+現実は甘くないって知ってるか?」 呆れた声でレドナが言う。 真「でも、ランク15なら許す!心が広いからな!」 レドナ「じゃ、ギュウホの歩みで学食まで行きますか」 席を立って、廊下へと向かう。 真「なんだよ、ギュウホって」 レドナ「牛の歩くスピードほど遅く歩くってことだ」 真「じゃあ俺は、獲物を狙うチーター歩でいくぜ!!」 そういって、ガッツポーズを作った。 レドナ「あのな、チーターが獲物を狙うときは走るって知ってるか?」 真「あぁ、もちろん!!」 万遍の笑みを浮かべ、真は学食に走っていった。 レドナは、じゃあ"歩"とはいわずに"走"といえ、といいそびれた。 とりあえず、真が妙な真似をしないよう、レドナも走って追いかけた。 学食は相変わらず、昼を大幅にすぎたレストランのようだった。 学食という言葉を聞くと、誰しも大混雑の大乱闘を連想するだろう。 しかし、神下高校の生徒で、好んで学食に来るものは少ない。 理由はそれと言って無いのも事実だ。 何と言うか、金銭の問題が挙げられる。 とりあえずのところ、レドナ達はこれに感謝していた。 人が多いところはあまり好きなほうではない。 真「とりあえず、席5つ確保しとこうぜ!」 レドナ「あぁ、そうだな」 そういって、レドナと真は窓際の椅子に座り、一角を占拠した。 そして、真が約1分30秒というスピードで、A定食(価格420円)を持ってきた。 もちろん、2つ分である。 パシリ、雑用、という言葉が当てはまるが、実際両方動けば席を取られる。 そのため、レドナは占拠係、真は買い係と自動的になるわけである。 その後、2人でたわいも無い話をして3人が来るまで時間を潰した。 数分後、両手で学食のB定食を3つ分抱えてきた香澄が来た。 B定食(価格320円)は、女子生徒の間で低カロリーで人気のある定食だった。 それに低コストといえば、まさに一石二鳥だ。 しかし、男子生徒に好まれない理由は、やはりボリュームの問題だった。 香澄「ごめ~ん!ちょっと4時間目が長引いちゃって」 トレーを机に置いて、両手を合わせて香澄が謝る。 真「あぁ、あのガリ野朗の数学か?」 ガリ野朗というのは、数学の教師の事を指す。 その名のとおり、やせ細った体系から"ガリ"と呼ばれている。 本人は未だ気づいていないようだ。 それはともかく、彼の授業は要領が悪いことでも有名だ。 一度、レドナが思いっきりぶち切れた時(少々遊びも入っていた)もあった。 それ以降、少しはマシになったとか。 レドナ「ったく、アイツばたぶち切れてやんねーとな。 にしても、3つもよく持てるな」 ある意味、トレーを1人で3つもつ香澄には、感心する。 汁物もあるこの定食を3つ、こぼさずに運ぶのは至難の業だ。 香澄「う~ん、ちょっとワケ有りでね」 そういうと、学食入り口から、2人の姿が見えた。 1人は金髪の長い髪からフィーノであることは分かった。 どうやら、車椅子を押しているらしい。 それに乗る、1人の茶髪のショートカットの少女は見覚えが無かった。 フィーノ「お待たせしてすいません」 少々すまなさそうに、フィーノが言う。 はやて「ぁ、あの・・・初めまして、うち、"神月 はやて"言います」 最初少し詰まるが、後はすらっと名前を述べた。 妙なアクセントから、関西弁だということは2人もすぐに察した。 真「俺、高田 真です!!よろしく、はやてちゃん!」 興奮して、真がテーブルを乗り越えて、はやてと握手する。 レドナ「鳳覇 暁、よろしくな」 はやて「ははっ、高田君、鳳覇君よろしゅうおねがいします」 深々とお辞儀をする。 レドナ「暁でいいよ、苗字だと、睦月と被るし」 真「あ、一歩リード取る気だな、暁め!!」 別にそんなつもりはないのが、レドナの本心だった。 レドナ「飯に唾が入る、黙れ」 その淡々とした言葉の次に、真の顔面にレドナのグーパンチが飛んできた。 それから、一瞬気絶して、すいません、と言って真は落ち着いた。 はやて「そんなら、高田君にも何かあだ名つけてやらなあかんなぁ」 香澄「そうえば、私達もあんまりあだ名とかで呼び合うことないね」 はやてと、香澄が少し考え込む。 レドナ「そうだ、真には"歩く電波塔"とか」 その真面目な発言に、真以外は爆笑した。 自分で頷いて、我ながらいいネーミングだといった感じでレドナは真の反応を待った。 真「なんだよそれ!!」 もちろん、真は猛反論である。 香澄「でも、暁君の言ってくること間違っては無いと思うよ?」 フィーノ「はい!いつも真さんはいろいろと情報持ってきますし~」 笑いをこらえて、香澄とフィーノが言う。 レドナ「そういうことだ、頑張りたまえ、歩く電波塔」 真「頑張れるかっつーの!!」 レドナ「ノイズがうぜーぞ、FMでもAMでもいいから電波拾って流してくれ」 どんなボケも真面目に遣り通すレドナの神業に、真もただ喚くことしかできなかった。 はやて「あははっ、真君もそんなに怒らんどいてぇな」 フィーノ「何時ものことですから、大丈夫ですよっ」 それから、大いに盛り上がって、5人は昼食を食べ終えた。 その時、事件が起こった。 学食の入り口から、悲鳴が聞こえる。 見ると、違う高校の服装をした、上下左右どこからみても不良ですといった奴がいた。 数は3人、2人は鉄バットを持っている。 レドナは、うっとおしいハエを見る目で、不良を見た。 すると、その男の一人が、レドナ達のいるテーブルへと向かってきた。 そして、思いっきりテーブルを鉄バットでたたく。 はやて「きゃっ!」 不良A「はっはっはっ!!なにガンつけてんだよカスが!」 あまりの恐怖にはやては、フィーノの制服の袖にしがみ付いた。 香澄「ちょっと、なんなんですか!」 不良A「うるせー!てめーはだま―――ぐがぁぁぁっ!!!」 不良が10mほど飛ばされる。 ぶち切れたレドナの回し蹴りが、腹部に直撃したらしい。 普段の真にする力の3倍の威力で蹴ったつもりだった。 レドナ「てめぇーのほうがウゼーんだよ、クズが」 腕を鳴らしながら、レドナが強者が弱者を見る目で不良を睨んだ。 不良B「舐めた口きいてんじゃねぇーぞ!!」 もう1人、バットを持った不良が襲ってくる。 レドナに向かって、思いっきり振り下ろす。 しかし、レドナは避けなかった。 避ける必要が無かった。 バットは、レドナの3cm前を掠めた。 レドナ「メガネでも買っとけ、このカス2号!」 強烈なアッパーが、不良の顎にヒットする。 少しもレドナに罪悪感はなかった。 むしろ、もう一発殴っとけばよかったかなと思うほどだ。 不良C「ゴルァァァッ!!ざけたまねしやがって!!」 突然、不良がポケットからスタンガンを取り出した。 スタンガンを構え、レドナ目掛けて走ってくる。 2m手前に来たところで、レドナは自分が座っていた椅子を持った。 そして、罪悪の欠片も無い人間野球を楽しんだ。 向かってくる不良の玉を、椅子というバットで殴り飛ばすという前代未聞の野球だ。 レドナ「ったく、ぬるいんだっての」 不良C「て、てっめぇ・・・・・」 レドナ「あん?」 不良の眼前で、ドスン思い切り足音を立てる。 不良C「ひゃうっ!?す、すいませんでしたぁぁぁぁ!!!」 不良B「に、逃げるぞ!!」 不良A「覚えてやがれ!!!」 凄まじい勢いで逃げていく3人を、レドナは呆れた目で見た。 真「あの~、暁さん? よろしければ、周辺をご覧になったほうがいいかと・・・」 突然、妙に真が敬語を使って、レドナに警告する。 すると、周囲には、大勢のギャラリーというか、観客が居た。 戦闘のプロフェッショナルからすれば、戦闘中無駄なことに気を使わないため、生徒の群れに気づいていなかった。 あの凶暴な不良を、無傷で、軽々と倒したレドナに、みんなの視線が集まっていた。 レドナ「・・・これって、逃げたほうがいいってやつか?」 真「英雄気分になりたいなら、テーブルの上でガッツポーズでもしたらどうだ?」 この雰囲気で、笑えない笑い話をさらりと言う。 実際、そういう選択肢もあるという、真なりの助言なのかもしれない。 すると、ちらほら周囲から、拍手や歓声が湧いた。 それは、数秒経たないうちに、学食内にいた全員がやり始めた。 フィーノ「ハッピーエンド・・・ですかね?」 人差し指を上に立てて、苦笑しながら言う。 すぐに、生徒の群れから、男子生徒が数人やってきた。 男子生徒A「かっこよかったぜ!鳳覇!!」 男子生徒B「おい!皆で胴上げしようぜ!! あの恐れられていた不良3人をぶっ飛ばしたんだ!」 声に釣られ、皆レドナの周りに集まる。 そして、生徒の群れの中心で、レドナが浮いたり沈んだりした。 その光景を、4人は笑顔で眺めていた。 真「俺も参戦するぜ、暁!」 そのまま真も、胴上げの群れに紛れた。 ひと時、学食内には、鳳覇コールが鳴り響いた。 レドナ(こういうのも、悪くはねーかもな) すると、学食騒動を聞きつけてか、ジャージを来た体育教師がやってきた。 石原 小次郎、校内でもそこそこ評判のいい先生だ。 石原「ほら、お前らうるさいぞ!! 後10分で5時限目だからはやく教室に戻れー!!」 いかにも体育教師らしい張りのある声に、一同は従い、ぞろぞろと学食を出て行った。 石原「あぁ、鳳覇、ちょっとお前は校長室に来い。 話がある」 生徒の群れに紛れ、帰ろうとしていたレドナを、石原が呼び止めた。 真「おっ、暁初めての呼び出しか?」 レドナ「うっせー、先に教室行ってろ」 4人と別れ、レドナは石原の後に続いて、校長室へと入った。 入るなり、カーテンを閉めはじめた。 石原「いやぁ~さすが・・・・だな」 閉めながら、石原が言った。 その言葉に、レドナは驚愕を隠せなかった。 レドナ「い、今なんて・・・・」 恐る恐るレドナは、石原に聞き返した。 すると、やはり石原はさっきと同じ言葉を言った。 聞き間違いではなかったらしい。 石原「だから、さすがはラストガーディアン、レドナだなって」 To be next chapter ジャンル別一覧
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