312741 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

chapter1

LastGuardianIIStarting Stars

chapter1「Encounter」

AM7:00
清々しい朝。
今日の天気は快晴。
冬の寒さを忘れさせるほど蒼穹の空。
それを、病室のベッドの上から眺める一人の少女が居た。

???「今日は、ええ天気やなぁ・・・」

背伸びをしながら、その少女が呟く。
そして、下を向いて、少女は自分の足をさすりながらこう言った。

???「こんな日は、外ではしゃぎたいんやけどね」

その少女の目には、少し涙が浮かんでいた。
だが、それをすぐに長袖の裾で拭う。

???「こんなこと考えたらあかんって、はよぅ、よぉなるんや。
    それに、学校もあるしなぁ」

一転し、少女は笑顔で言った。
そして、再び蒼穹の空を眺めた。


AM7:34
神下高校へと向かう道に、2人の姿があった。
1人は漆黒のボサボサの髪に、真紅の瞳を持つ少年、鳳覇 暁。
1人は金髪の長い髪に、青い瞳を持つ少女、鳳覇 睦月。
どちらも、一見して普通の人間である。
だが、これは偽名である。
本名は、レドナ・ジェネシックとフィーノ・ラライド。
彼らは裏の世界で、世界の歪みを止めるガーディアンと呼ばれる存在だ。

レドナ「にしても、今日は珍しく快晴だな」

空を見上げて、レドナが言う。

フィーノ「そうですね~、なんだか足取りも軽くなっちゃいます」

ニコっと微笑んで、フィーノも同意する。

レドナ「でも実際は、この角を曲がったら雰囲気は大雨だな」

そういって、顎で次に曲がる角を指した。

フィーノ「あ、あはは・・・・」

理解したフィーノが苦笑する。
そこを曲がれば、神下高校までほぼ一直線という道だった。
いつも、ここで待ち合わせもしていないのに、いつもいる人物が2人いる。
1人の少女まではセーフである。
問題は―――

真「よぉ~!アァ~キラ、エェ~ンド、ムツキちゃ~ん!」

角を曲がる前に現れた人物。
無駄にテンションの高い、高田 真である。

香澄「おはよう、暁君、睦月ちゃん」

もう1人も、爽やかに挨拶をする。
青山 香澄である。

レドナ「おはよーさん」
フィーノ「おはようございま~す」

正直、2人も角を曲がる前に出現するとは想定外だった。
しかし、そこまで驚きもしなかった。

そして、この快晴の天気を曇らせるほどの発言が、レドナの口から出た。

レドナ「あぁ~真、一つ忠告しておいてやる。
    ベタな英語はやめろ、正確には"and"と言う場合は"a"と"n"の間はのばさない。
    それに、あからさまにエンドというと"end"で終りの意味を指す。
    以上、今後気をつけるように」

淡々と目を瞑って、無表情に言う。
無表情のわりには、刃物の鋭さを含む発言であった。

真「は、はい・・・・反省いたします・・・」

すぐさま真は謝った。
ここで反抗しても勝ち目が無いことは分かっているからだ。

それから、十数分後、神下高校へと到着した。
昇降口で、靴を履き替える。
どうやら、まだクラスにいる人数は少ないようだ。
上履きに履き替えて、教室へ向かう。
その時、フィーノが思い出したように言った。

フィーノ「ぁ、そうだ!今日お昼、学食でご一緒しませんか?」
真「おう、俺は構わねーよ?」
レドナ「あんまり同じ地位に立ちたくないが、右斜め上に同じく」

横目で真を見ながらレドナが言う。

真「斜め上ってなんだよ!斜め上って!?」
レドナ「呼んで字の如く、斜め上」

そういって、レドナは真の質問の返答を一瞬ですませた。

香澄「うん、ちょっとクラス変更があってから、私達のクラスに転校生がきてさ。
   ちょっとその子に会わせようかな~なんて」

クラス変更というのは、今から1ヶ月前のことを指す。
と言うのも、クラスの不良どもが大暴れをして退学させられたのが原因である。
1-C組のみ、ガランとした教室になったので、急遽クラス変更をしたというのだ。
レドナと真は同じままだが、香澄とフィーノとで別クラスとなった。

真「おぉ!!それって、女子ランク3に入る美少――うぐっ!」

言い終える前に、真の頭部に拳が落ちる。
その持ち主はレドナ。
当然のことをしたまで、というような平然な顔をしている。

フィーノ「う~ん、まぁそんなところですよっ。
     では、またお昼に~」

そう言って、フィーノと香澄はA組へと入っていった。

真「そんなこと・・・って、やっぱり当たってたり?」
レドナ「さぁ~な、ランク15以内とか」

さっきのゲンコツの痛みも忘れ、平然とボケる真に呆れつつ、レドナはB組へと向かった。
その後ろを考えながら真が追いかけていった。


AM8:18
A組では、仲良し3人が教室の一角を陣取って会話をしていた。

香澄「それで、今日はやてちゃんに会わせたい人がいてね」

この3人のリーダー的存在の香澄が提案する。
そして、はやてと呼ばれた少女がそれに答える。

はやて「うん、ウチでええなら・・・。
    誘ってくれて、おおきにな」
香澄「転校してきたばかりなら、まず友達作りが響くからね」

どうだ、と言わんばかりに、ウィンクする。

はやて「ははっ、せやなぁ~。
    でも、ウチこれやから、迷惑かけるかもしれへん・・・」

そう言って、自分の車椅子を見下ろした。
彼女は、以前から何か原因不明の病気で足が麻痺している。
病院の何処を行っても、まったく良い返答は得られなかったようだ。
それでも、何不自由なく元気に過ごしている、強い子でもあった。

フィーノ「心配しなくても、優しい2人ですから大丈夫ですよっ!
     それに、はやてさんなら仲良くなれますよ」

笑顔で、励ますようにフィーノが言う。

はやて「そうやと、ええけどなぁ」
香澄「ぁ、でもちょっと片方は厄介だから・・・ね」

苦笑して、香澄が真のことを言った。


PM00:15
学校中にチャイムが鳴り響き、昼食の合図を告げた。

真「来たぜ!来たぜ!来たぜ!!」

このときを待っていたかと言わんばかりに真が吼える。
期待の大きさを痛感した。

レドナ「期待は裏切られる+現実は甘くないって知ってるか?」

呆れた声でレドナが言う。

真「でも、ランク15なら許す!心が広いからな!」
レドナ「じゃ、ギュウホの歩みで学食まで行きますか」

席を立って、廊下へと向かう。

真「なんだよ、ギュウホって」
レドナ「牛の歩くスピードほど遅く歩くってことだ」
真「じゃあ俺は、獲物を狙うチーター歩でいくぜ!!」

そういって、ガッツポーズを作った。

レドナ「あのな、チーターが獲物を狙うときは走るって知ってるか?」
真「あぁ、もちろん!!」

万遍の笑みを浮かべ、真は学食に走っていった。
レドナは、じゃあ"歩"とはいわずに"走"といえ、といいそびれた。
とりあえず、真が妙な真似をしないよう、レドナも走って追いかけた。

学食は相変わらず、昼を大幅にすぎたレストランのようだった。
学食という言葉を聞くと、誰しも大混雑の大乱闘を連想するだろう。
しかし、神下高校の生徒で、好んで学食に来るものは少ない。
理由はそれと言って無いのも事実だ。
何と言うか、金銭の問題が挙げられる。
とりあえずのところ、レドナ達はこれに感謝していた。
人が多いところはあまり好きなほうではない。

真「とりあえず、席5つ確保しとこうぜ!」
レドナ「あぁ、そうだな」

そういって、レドナと真は窓際の椅子に座り、一角を占拠した。
そして、真が約1分30秒というスピードで、A定食(価格420円)を持ってきた。
もちろん、2つ分である。
パシリ、雑用、という言葉が当てはまるが、実際両方動けば席を取られる。
そのため、レドナは占拠係、真は買い係と自動的になるわけである。
その後、2人でたわいも無い話をして3人が来るまで時間を潰した。

数分後、両手で学食のB定食を3つ分抱えてきた香澄が来た。
B定食(価格320円)は、女子生徒の間で低カロリーで人気のある定食だった。
それに低コストといえば、まさに一石二鳥だ。
しかし、男子生徒に好まれない理由は、やはりボリュームの問題だった。

香澄「ごめ~ん!ちょっと4時間目が長引いちゃって」

トレーを机に置いて、両手を合わせて香澄が謝る。

真「あぁ、あのガリ野朗の数学か?」

ガリ野朗というのは、数学の教師の事を指す。
その名のとおり、やせ細った体系から"ガリ"と呼ばれている。
本人は未だ気づいていないようだ。
それはともかく、彼の授業は要領が悪いことでも有名だ。
一度、レドナが思いっきりぶち切れた時(少々遊びも入っていた)もあった。
それ以降、少しはマシになったとか。

レドナ「ったく、アイツばたぶち切れてやんねーとな。
    にしても、3つもよく持てるな」

ある意味、トレーを1人で3つもつ香澄には、感心する。
汁物もあるこの定食を3つ、こぼさずに運ぶのは至難の業だ。

香澄「う~ん、ちょっとワケ有りでね」

そういうと、学食入り口から、2人の姿が見えた。
1人は金髪の長い髪からフィーノであることは分かった。
どうやら、車椅子を押しているらしい。
それに乗る、1人の茶髪のショートカットの少女は見覚えが無かった。

フィーノ「お待たせしてすいません」

少々すまなさそうに、フィーノが言う。

はやて「ぁ、あの・・・初めまして、うち、"神月 はやて"言います」

最初少し詰まるが、後はすらっと名前を述べた。
妙なアクセントから、関西弁だということは2人もすぐに察した。

真「俺、高田 真です!!よろしく、はやてちゃん!」

興奮して、真がテーブルを乗り越えて、はやてと握手する。

レドナ「鳳覇 暁、よろしくな」
はやて「ははっ、高田君、鳳覇君よろしゅうおねがいします」

深々とお辞儀をする。

レドナ「暁でいいよ、苗字だと、睦月と被るし」
真「あ、一歩リード取る気だな、暁め!!」

別にそんなつもりはないのが、レドナの本心だった。

レドナ「飯に唾が入る、黙れ」

その淡々とした言葉の次に、真の顔面にレドナのグーパンチが飛んできた。
それから、一瞬気絶して、すいません、と言って真は落ち着いた。

はやて「そんなら、高田君にも何かあだ名つけてやらなあかんなぁ」
香澄「そうえば、私達もあんまりあだ名とかで呼び合うことないね」

はやてと、香澄が少し考え込む。

レドナ「そうだ、真には"歩く電波塔"とか」

その真面目な発言に、真以外は爆笑した。
自分で頷いて、我ながらいいネーミングだといった感じでレドナは真の反応を待った。

真「なんだよそれ!!」

もちろん、真は猛反論である。

香澄「でも、暁君の言ってくること間違っては無いと思うよ?」
フィーノ「はい!いつも真さんはいろいろと情報持ってきますし~」

笑いをこらえて、香澄とフィーノが言う。

レドナ「そういうことだ、頑張りたまえ、歩く電波塔」
真「頑張れるかっつーの!!」
レドナ「ノイズがうぜーぞ、FMでもAMでもいいから電波拾って流してくれ」

どんなボケも真面目に遣り通すレドナの神業に、真もただ喚くことしかできなかった。

はやて「あははっ、真君もそんなに怒らんどいてぇな」
フィーノ「何時ものことですから、大丈夫ですよっ」

それから、大いに盛り上がって、5人は昼食を食べ終えた。

その時、事件が起こった。
学食の入り口から、悲鳴が聞こえる。
見ると、違う高校の服装をした、上下左右どこからみても不良ですといった奴がいた。
数は3人、2人は鉄バットを持っている。

レドナは、うっとおしいハエを見る目で、不良を見た。
すると、その男の一人が、レドナ達のいるテーブルへと向かってきた。
そして、思いっきりテーブルを鉄バットでたたく。

はやて「きゃっ!」
不良A「はっはっはっ!!なにガンつけてんだよカスが!」

あまりの恐怖にはやては、フィーノの制服の袖にしがみ付いた。

香澄「ちょっと、なんなんですか!」
不良A「うるせー!てめーはだま―――ぐがぁぁぁっ!!!」

不良が10mほど飛ばされる。
ぶち切れたレドナの回し蹴りが、腹部に直撃したらしい。
普段の真にする力の3倍の威力で蹴ったつもりだった。

レドナ「てめぇーのほうがウゼーんだよ、クズが」

腕を鳴らしながら、レドナが強者が弱者を見る目で不良を睨んだ。

不良B「舐めた口きいてんじゃねぇーぞ!!」

もう1人、バットを持った不良が襲ってくる。
レドナに向かって、思いっきり振り下ろす。
しかし、レドナは避けなかった。
避ける必要が無かった。
バットは、レドナの3cm前を掠めた。

レドナ「メガネでも買っとけ、このカス2号!」

強烈なアッパーが、不良の顎にヒットする。
少しもレドナに罪悪感はなかった。
むしろ、もう一発殴っとけばよかったかなと思うほどだ。

不良C「ゴルァァァッ!!ざけたまねしやがって!!」

突然、不良がポケットからスタンガンを取り出した。
スタンガンを構え、レドナ目掛けて走ってくる。
2m手前に来たところで、レドナは自分が座っていた椅子を持った。
そして、罪悪の欠片も無い人間野球を楽しんだ。
向かってくる不良の玉を、椅子というバットで殴り飛ばすという前代未聞の野球だ。

レドナ「ったく、ぬるいんだっての」
不良C「て、てっめぇ・・・・・」
レドナ「あん?」

不良の眼前で、ドスン思い切り足音を立てる。

不良C「ひゃうっ!?す、すいませんでしたぁぁぁぁ!!!」
不良B「に、逃げるぞ!!」
不良A「覚えてやがれ!!!」

凄まじい勢いで逃げていく3人を、レドナは呆れた目で見た。

真「あの~、暁さん?
  よろしければ、周辺をご覧になったほうがいいかと・・・」

突然、妙に真が敬語を使って、レドナに警告する。
すると、周囲には、大勢のギャラリーというか、観客が居た。
戦闘のプロフェッショナルからすれば、戦闘中無駄なことに気を使わないため、生徒の群れに気づいていなかった。
あの凶暴な不良を、無傷で、軽々と倒したレドナに、みんなの視線が集まっていた。

レドナ「・・・これって、逃げたほうがいいってやつか?」
真「英雄気分になりたいなら、テーブルの上でガッツポーズでもしたらどうだ?」

この雰囲気で、笑えない笑い話をさらりと言う。
実際、そういう選択肢もあるという、真なりの助言なのかもしれない。

すると、ちらほら周囲から、拍手や歓声が湧いた。
それは、数秒経たないうちに、学食内にいた全員がやり始めた。

フィーノ「ハッピーエンド・・・ですかね?」

人差し指を上に立てて、苦笑しながら言う。
すぐに、生徒の群れから、男子生徒が数人やってきた。

男子生徒A「かっこよかったぜ!鳳覇!!」
男子生徒B「おい!皆で胴上げしようぜ!!
      あの恐れられていた不良3人をぶっ飛ばしたんだ!」

声に釣られ、皆レドナの周りに集まる。
そして、生徒の群れの中心で、レドナが浮いたり沈んだりした。
その光景を、4人は笑顔で眺めていた。

真「俺も参戦するぜ、暁!」

そのまま真も、胴上げの群れに紛れた。
ひと時、学食内には、鳳覇コールが鳴り響いた。

レドナ(こういうのも、悪くはねーかもな)

すると、学食騒動を聞きつけてか、ジャージを来た体育教師がやってきた。
石原 小次郎、校内でもそこそこ評判のいい先生だ。

石原「ほら、お前らうるさいぞ!!
   後10分で5時限目だからはやく教室に戻れー!!」

いかにも体育教師らしい張りのある声に、一同は従い、ぞろぞろと学食を出て行った。

石原「あぁ、鳳覇、ちょっとお前は校長室に来い。
   話がある」

生徒の群れに紛れ、帰ろうとしていたレドナを、石原が呼び止めた。

真「おっ、暁初めての呼び出しか?」
レドナ「うっせー、先に教室行ってろ」

4人と別れ、レドナは石原の後に続いて、校長室へと入った。
入るなり、カーテンを閉めはじめた。

石原「いやぁ~さすが・・・・だな」

閉めながら、石原が言った。
その言葉に、レドナは驚愕を隠せなかった。

レドナ「い、今なんて・・・・」

恐る恐るレドナは、石原に聞き返した。
すると、やはり石原はさっきと同じ言葉を言った。
聞き間違いではなかったらしい。

石原「だから、さすがはラストガーディアン、レドナだなって」

To be next chapter


© Rakuten Group, Inc.