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chapter12

LastGuardianIIStarting Stars

chapter12「Old hearts」

ザルバ「ふっ・・・・」

目の前で、明滅するモニターをみて、ザルバが、少し笑う。
そのモニターに映るのは、通路をガブリエルを蹴散らしながら走るレドナだった。
ザルバは、それが面白いと言うのではない。
その先に待ち受けているものの存在との対決に興味を示しているのだった。

ザルバ「そろそろ、私も出向くとしよう。
    カースが敗れたようだしな」

まだ、笑みを崩さぬまま、ザルバは司令室を出た。


レドナ「くっ、ガブリエルの数がハンパじゃねぇ・・・・!」

現れては、白い装甲に漆黒の刃を叩き込む、という作業を幾度と無く繰り返していた。
やっと、現れる量が少なくなったかと思うと、異様なほどに静けさが訪れた。
レドナの100m先にあるドアと、レドナの距離の間が、レドナを歓迎しているようだった。
ガブリエルが1匹も居ない。
レドナにとっては好都合であったが、罠ということも考えられる。
腰についている、スティングアンカーを発射させた。
ドアにクローが刺さるが、それはここに罠は無いということを意味した。

レドナ「・・・・・・」

スティングアンカーを再び腰に戻し、レドナは通路を進んだ。
両手のグリュンヒルを力強く握り締める。
エルフスターターをドアの前で止めた。
すると、3mほどの大きさのある、そのドアは上下左右に開いた。

その部屋の中に居た人物に、レドナは目を見開いた。
見慣れた、赤く長い髪、そして、その人物を裏付ける物、トライヴァルの緋衣。
しかし、目の前に立つ少女の相違点があった。
トレードマークでもあったツインテールの髪は下ろされ、左側だけ少し髪を結んでいた。

レドナ「・・・・・・っ!?」
カエデ「・・・・・」

だだっ広い部屋に、2つの存在。
その存在は、互いに敵同士であった。
それと同時に、その存在は、互いに戦ってはいけない者同士であった。

入ってきたレドナを見て、カエデは視線を落とした。
今にも泣き出しそうに、肩を震わせている。
しかし、手に握る蒼白の大剣には、戦意が込められていた。

カエデ「・・・・私、いろいろと考えたんだ」

ふと、カエデがか細い声で話し始めた。

カエデ「どんなに仲が良くても、レドナと私は敵同士なんだって。
    その事実からは、どうやっても逃げられないんだって」
レドナ「覚悟を決めたって事か」
カエデ「うん、もう、戦うしかないから。
    でもね・・・・これだけは、知っててほしい」

顔を上げて、カエデはこう言った。

カエデ「今からレドナと戦うのは、反エクステンドとしてのカエデ。
    だから・・・今までのカエデとは、別の存在だって」

ついに、カエデは握っていたグリュンヒル・プリンセスを構えた。
涙目になりながらも、その蒼い目は、真紅の瞳を持つレドナを見ていた。

レドナ「解った。
    なら、俺も今から戦うのは、エクステンドとしてのレドナだ」

静かに、そう言うと、レドナも2本の大剣を構えた。

カエデ「いくよっ、レドナ!!」
レドナ「あぁ!!」

先手は、カエデの攻撃だった。
トライヴァルの緋衣の効果、高速移動を使い、カエデは1秒弱でレドナの眼前に現れた。
対するレドナも、エルフスターターをフルスピードで回転させ、後ろに下がる。
元は、対高速移動用に作られたローラーシューズ、エルフスターターのおかげで、カエデの斬撃を回避できた。
しかし、これで諦める相手ではないことをレドナは知っていた。

次にカエデは、左手を開いた。
赤い、炎を連想させる魔法陣が、掌を中心に瞬時に展開する。

カエデ「焼き尽くせ、業火!!
    フレイムタワー!!」

魔法陣から、4本の炎の柱が現れる。
灼熱の柱が、レドナを追いかける。
ある程度、エルフスターターで逃げ回った後、レドナは追い詰めてくる柱の方を向いた。

レドナ「最大展開!テルトルトシールダー!!」

両手の甲を突き出す。
手袋状の、フィールド形成装置、テルトルトシールダーが対魔法シールドを展開する。
フレイムタワーは、シールドにぶつかり、火の粉となって、地面に落ちた。
しかし、レドナの方も反動でよろけた。
その瞬間を、カエデは逃さなかった。

カエデ「火の粉よ、再び舞い戻れ!!
    フレイムタワー!!」
レドナ「同じ魔法が通じるかよ!
    最大展開!テルトルトシールダー!!」

レドナは、高く飛び、真下から聳え立ってくる、一旦は火の粉となった4本の炎の柱を避けた。
そして、同じように再びシールドを張り、それを防御しようとした。

カエデ「同じと思ったら、大間違いよ!
    吼えろ!!フレイムドラゴン!!」

4本の柱が、1本の太い炎の柱と化す。
その炎の柱が、突然形状を変え、先端が龍の顔になる。

レドナ「っ!?」

炎の龍は、口を開け、火炎を放射する。
とても、テルトルトシールダーでどうこうなる問題ではない。
そう思ったレドナは、すぐに両手に握るグリュンヒルに、レムリアを送り込んだ。
レムリアは肩の空間転移装置からチューブを伝って、グリュンヒルの刃を蒼く染める。

レドナ「ぶっ潰せぇっ!!」

レドナは、炎の龍に、グリュンヒル・イノセントと、グリュンヒル・テラブレイカーを向けた。
両グリュンヒルの先端に、球体が出来る。
その球体を炎の龍に向かって放った。
それはレムリアのビームとなって、炎の龍を打ち消した。
一瞬の出来事だったが、レムリアと炎の衝突で、辺りに爆煙が舞う。

カエデ「はぁっ!!」

爆煙の中、後方から、蒼く光る蒼白の刃が見えた。
咄嗟にレドナも、グリュンヒル・イノセントで、対抗しようとする。
しかし、瞬時その刃は消えた。

レドナ(しまった、空中でエルフスターターは使えない!)

刹那、レドナの背中に強烈な痛みが走る。

カエデ「てぇぃっ!」
レドナ「ぐぅっ!!!」

数十メートルの地点から、思い切り地面に叩きつけられる。
なんとか痛みに耐え、受身をしたが、それでも痛みは走った。
だが、このまま地面に倒れていてはやられてしまう。
そう思ったレドナは、右腰のスティングアンカーを発射した。
アンカーのクローは、20m先の壁に食い込んだ。
後は、エルフスターターを駆使して、壁際へと移動した。
その2秒後、予想通り、レドナが倒れていた場所に、フレイムタワーが炸裂した。

レドナ(何時の間に、あんなに上級魔法を駆使できるようになったんだ・・・。
    いや、このまま俺が物理攻撃だけでカエデに敵うか・・・)

カエデは、目に見えない速度で、この部屋の中を縦横無尽に駆け回っている。
魔法を唱えるのであれば、じっとしている必要は無い。
このまま高速移動状態で唱えることができる。

その時、レドナは足元に再びフレイムタワーの魔法陣が展開していたのに気づき、その場から移動した。
直後に、フレイムタワーが聳え立った。

レドナ(移動を止める・・・・移動を止めるにはトライヴァルの緋衣を破るしかない。
    でも、相手が移動している限りそれは不可能・・・。
    なら、相手が移動できない状態を作り上げる・・・。
    無理だ、それを俺が考えることを推測して、この馬鹿に広い部屋を戦場に選んだんだ)

初めて、学校の体育館なみの広さがある、この戦闘区域の意味を知った。

なおも、考えている間も相手は容赦なく、炎の魔法攻撃を繰り出してくる。

レドナ(・・・カエデの移動を止めるのは後として・・・。
    俺の有利な接近戦に持ち込むには・・・・)

さっきの、爆煙の様子が脳裏を駆け巡った。

レドナ(あの時は、空中に浮いていたからカエデの攻撃を回避できなかった。
    つまり、地面にいる状態で、爆煙を起こし、俺が床を背に前方全範囲攻撃をすれば――)

レドナは賭けに出た。
フレイムタワーをわざと発動させ、そのままフレイムドラゴンに移行させる。
そして、爆煙を出す。

レドナ(まて、だが空中に浮いていないと、フレイムタワーの攻撃を防いだ瞬間怯んでしまう。
    ・・・・・なら、自分で大爆発を起こせば・・・・!!)

レドナの口元が笑みを語った。
両手のグリュンヒルにレムリアが入り、刃が蒼く光る。

カエデ(・・・・ん、何をする気だろ・・・?)

高速移動しながら、カエデの目はきっちりレドナを見ていた。

レドナ「いっけぇっ!!」

真下に、グリュンヒルの刃を向ける。
刃の先端から、レムリアのビームが放たれる。
それは、床に当たり、爆発を起こした。

カエデ(煙幕で私が接近戦してくると思ってるんだ。
    なら・・・・)
カエデ「フレイム・・・・・」

唱えようとした時。
その爆煙の中から、六つの光る物が見えた。

カエデ「!?」
レドナ「フルッ・ブラスタァァァーーーーッ!!!」

レドナの周囲の爆煙が一気に晴れる。
現れたレドナは、広範囲攻撃、フル・ブラスターを構えている。
そして、6つの色とりどりの閃光が、部屋中を埋め尽くす。

カエデ「きゃぁぁっ!!」

一発が、カエデに当たる。
それを確認したレドナは、声のした方向を中心に、再びフル・ブラスターを放つ。
大爆発がおき、その爆煙の中に、カエデが跪いていた。

カエデ「・・・・くっ」

トライヴァルの緋衣は、所々焼け焦げ、ボロボロになっていた。
ここまで来れば、リーンジャケットの効果云々の前に、使用者の体が追いつかない。
途端、カエデが地面に背を向け、大の字になって、寝転んだ。

カエデ「あぁ~あ!負けた負けたぁ~!
    やっぱ、レドナは強いね~」

明るく、陽気な声で言う。
いや、本人はそう言ったつもりだった――。
しかし、レドナにはその真髄が分かった。

カエデ「やっぱり・・・・私・・・なんかで・・・・。
    レドナは・・・・ほんと、強い・・よ」
レドナ「・・・・・・・」

カエデの目から、大粒の涙が零れ落ちた。
しゃっくり交じりの泣き声に、レドナは黙っていた。

そして、レドナは寝転ぶカエデに近づいて、こう言った。

レドナ「いや、引き分けだ」
カエデ「・・・え?」

目を丸くして、カエデがレドナを見た。

レドナ「残念だが、コイツじゃとどめはさせない」

そう言って、レドナは両手のグリュンヒルを見せた。
そのグリュンヒルからは、煙が出ていた。
蒼い刃にも亀裂が入っており、所々欠けていた。
灼熱の攻撃を受け、それから膨大なフル・ブラスターを出し、オーバーヒートしたのだ。
そして、その状態で、最後にまた、フル・ブラスターを放って、完全に壊れたのだ。

カエデ「ふふっ、そうみたいだね。
    でもそれって、最後にそうすれば、私が引き分けで納得してくれると思ってやったの?」
レドナ「全力で挑む相手に、手抜きは無礼だ。
    グリュンヒルがイカれて無かったら、トドメは刺していた」

一間置いて、微笑んでレドナはこう言った。

レドナ「さぁ、一緒に戻ろう」
カエデ「え?―――」

何処に?と言った様子で、カエデがレドナを見る。
レドナは、右手を差し出していた。

レドナ「エクステンドに。
    悪いが、反エクステンドとしてのカエデは殺したつもりだ」
カエデ「・・・・・レドナ」

そっと呟き、カエデはレドナの右手を掴んで起き上がり、レドナに抱きついた。

カエデ「・・・・・・」
レドナ「・・・・・・」

何も言わず、レドナはただ、炎のように、赤く長いカエデの髪を撫でた。
少したって、カエデはレドナから離れた。
そして、右手を差し出した。

突然、カエデの右手から、眩い光が放たれた。
その光は、武器を形取り、具現化する。

それは、漆黒の大剣、グリュンヒルだった。
だが、そのグリュンヒルは、見る限りエクツァーンモデルではないようだ。

レドナ「これは・・・?」
カエデ「私が、独自に作ったの、名前は漆楓(しっぷう)。
    レドナに勝っていたら、これでザルバを倒すつもりだった。
    エクツァーンモデルの原理を応用して、レムリアの代わりに、内部の核のエネルギーを使っているわ。
    たぶん、エクツァーンモデル以上の力と・・・・危険が伴う」
レドナ「漆楓・・・・」

その名を覚えこむように、レドナが呟く。
レドナは、漆楓を受け取り、その武器の重さを感じた。

カエデ「お願い、レドナ。
    これで・・・・ザルバを倒して」
レドナ「・・・あぁ、約束する」

重い大剣を、両手で握り締め、レドナは頷いた。
それを見ると、カエデは優しく微笑んだ。
その微笑を胸に、レドナはカエデに背を向け、奥へと進んだ。
漆黒の大剣、漆楓を握り締めて。

それだけではない。
全てに、ピリオドを打つことを胸に秘めて―――。


To be next chapter


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