EP11「交錯する闇」-12/27 AM06:35 福岡県 海上-暁「うおおおぉぉぉっ!!」 力任せに俺はアルファードの太刀を振るわせた。 レドナ「くっ、いいから話を聞け!」 漆黒の機体の蹴りがアルファードを直撃する。 暁「くっ!!」 情報では目の前の敵は機人ではなく機神らしい。さすがにエインヘイトの時のようにはいかない。 レドナ「鳳覇、榊はお前たちが調査しに行った北極基地に居る。 それに、エルゼは彼女を殺そうとはしていない!」 暁「なら何で輝咲をさらったんだ!」 俺はアルファードで漆黒の機体に掴みかかった。 レドナ「エルゼは彼女の記憶が完全に復活してARSに全てを話すのを防ごうとしている。 彼女自身は気づいていないが、インフォーマーには記憶に欠落がある。」 暁「インフォーマー・・・・だと?」 初めて聞く言葉だったが、どうやらそれは輝咲の事を指しているようだ。 レドナ「未来から送られてきた人のことだ、彼らはリネクサスにとって脅威となる存在だ。 だが逆に利用価値があるらしい。」 漆黒の機体もアルファードを掴んできた。 レドナ「鳳覇、俺も榊を助けるのに協力する。」 暁「えっ・・・?」 レドナ「だから・・・。」 夜城の目がいつもの夜城の目であることに俺は今更気付いた。夜城に戦意は一切感じられなかった。 レドナ「レイナを助けてくれ・・・・。」 EP11「交錯する闇」 暁「ど・・・どういうことだよ、夜城?」 俺は漆黒の機体を掴んでいた腕を離した。向こうもアルファードから手を離した。 レドナ「とにかく今コイツに乗ったままで話すのは危険だ。 今から2時間後、御互いの機神を隠してからもう一度話そう。」 暁「おう、分かった。 その・・・・悪い、話しも聞かないで突っ掛ったりして。」 俺は夜城の真実を聞かずに、ただ輝咲の事だけを考えて自分を見失っていた。 レドナ「いや、いい。 2時間後、俺の家に来てくれ。」 暁「分かった。」 -AM8:30 夜城家- 俺はARSに機神を戻して、夜城の家に来た。一階下の階だが、初めて夜城の家に入った。 レドナ「来たか、上がってくれ。」 暁「おう。」 夜城の家も結構がらんとしていた。そしてこの家の静けさで夜城の姉が居ないことも分かった。 暁「姉さんは居ないのか?」 レドナ「それも含めて今から全部話す。 適当に座ってくれ。」 俺は夜城が座った椅子の机越しに反対側の椅子に座った。見渡すと、夜城と姉さんが2人で笑顔で映っている写真があった。 姉さんが言っていた"本当はいい子だから"の意味が分かった気がする。 レドナ「昔、交通事故で御袋と親父が死んで、俺とレイナだけが生き残った。 でもレイナは虫の息だった・・・。 そんな時に、レイナを助けてくれたヤツが居たんだ。」 暁「エルゼ・・・か?」 夜城は黙って頷いた。 レドナ「そして代わりに俺はリネクサスの力になる契約を交わした。 最初は俺はARSという悪の組織を倒すためと教わった。 だがそれもすぐに嘘だと分かった。」 夜城が初めて見せる悲しみを含んだ表情に、俺は驚いた。 レドナ「一度俺はリネクサスを裏切って逃げようとした。 勿論リネクサスはレイナを人質にしてそれを阻止した。 でもエルゼは最後に一つだけ任務をこなしたら脱退を認めると言った。」 突然夜城が俺を見た。 レドナ「それが、お前の"サンクチュアリ"の撃墜だ。」 暁「そういうことかよ・・・。」 俺は夜城が戦う理由を納得した。そして俺を敵とするのではなく"ドライヴァー"を標的とする理由を。 レドナ「そして次の戦いで榊を取り戻しに来たお前と一騎打ちする。 そこで俺が勝てば今リネクサスに捉えられているレイナは助かる。」 暁「もし・・・夜城が負けたら・・・。」 レドナ「その時はレイナの命は無い・・・・でも・・・。」 夜城の拳が強く握られた。 レドナ「俺はたった一人の家族を失いたくは無い・・・・。 そのためになら世界を全て敵に回す覚悟もできている。」 暁「夜城・・・・。」 レドナ「だから、次の戦いでお前に協力してもらいたい。 この戦いを最後に俺はリネクサスを出る。 頼む、この通りだ!」 "あの"夜城が俺に頭を下げた。 暁「あぁ、協力する。助け出そう、輝咲もレイナさんも!」 レドナ「鳳覇・・・・ありがとう。」 夜城の目には涙が溜まっていた。 暁「暁でいいって。その代わり俺もレドナって呼ぶけど。」 レドナ「なら、そうさせてもらうよ暁。」 レドナは次に自分の服のポケットからSDカードを取り出した。 レドナ「これに向こうの地形、敵の数、リネクサスの作戦内容が入っている。」 俺はそのSDを受け取った。 レドナ「シナリオの中に追ってくるお前と一騎打ちするところがある。 そこでお前には一旦サンクチュアリから脱出して俺の機神に入ってもらう。 帰還後に俺はレイナを助けに行く、お前は榊を助けにいけ。」 暁「分かったぜ!」 レドナ「リネクサスもいつでも迎撃体制を構えている。 来るならいつでも来い、俺はまたリネクサスの基地に戻っている。」 レドナの蒼く透き通った目を見て俺は右手を出した。 暁「レドナ、絶対助け出そうな!」 レドナ「あぁ!」 俺が差し出した握手の右手、今度はレドナはそれに応えてくれた。 -AM09:22 ARS本部- 俺はレドナから受け取ったSDカードを手に、急いでARSへ向った。本部に着くなり、走って司令室を目指す。 司令室に入ると、まだ昨日の傷が生生しく残っていた。 暁「吉良司令!」 剛士郎「おお、鳳覇君。ちょうどよかった、君に話しがある。」 見渡すと、ARSの戦闘メンバーが全員揃っていた。昨夜アメリカから戻ってきたらしい寺本と同期の桜という人も居た。 暁「俺も、話しが。」 俺は司令の机にSDカードを置いた。 剛士郎「ん・・・、ならば鳳覇君の話しから聞こうか。」 暁「はい、輝咲は今昨日俺たちが向った北極基地に居ます。 エルゼはインフォーマーから情報が俺たちに漏れるのを恐れているらしいんです。」 剛士郎「やはりな・・・。」 吉良のおっさんも同じ事を考えていたらしい。 暁「向こうは万全の対策で俺たちが取り戻しに行くのを待ち構えています。 でも昨日の黒い機神に乗っているヤツ、夜城 レドナが輝咲の救出に手助けをしてくれるって。」 雪乃「黒い機神のドライヴァーはリネクサスの人よ? なんで協力なんか・・・。」 暁「レドナも自分の姉さんがリネクサスに人質に取られていて仕方なくやった事なんです。 だから俺もあいつの姉さんを助けることに協力します。 全てはこのSDに。」 机の上に置いたSDを有坂が受け取り、パソコンに入れた。 かりん「あの~、ちょっといい?」 剛士郎「何かな?」 かりん「その輝咲って子助けに行く気まんまんっぽいけど、アタシと佑作の機神は今すぐに動けないわよ。 一応敵の本拠地っぽいとこに突っ込むわけでしょ、3機で大丈夫なの?」 どうするの、と言わんばかりにかりんが剛士郎を見た。 剛士郎「それなら心配ないはずだ。なぁ、佐久間君!」 淳「勿論ですよ!出撃は昨日と同じく神崎君と鳳覇君と鈴山君に行ってもらうよ。 後で3人はポセイドンハンガーに来てくれ、得に鳳覇君は驚く覚悟をしておくといい!」 暁「は、はぁ・・・。」 自信満々に言う佐久間。嫌な予感がするのは俺だけだろうか。 剛士郎「さて、それでは有坂君の解析の間に私からの話をしよう。 榊君が"サモンワープ"を使えた件のことだ。」 サモンワープ、ドライヴァーの窮地に機神が助けにワープしてくる現象、俺は昨日そのせいで北極から一瞬で東京まで来たのだ。 そういえば、真一郎との戦いにも決着をつけていないままだった。 静流「アルファードのドライヴァーは2人と考えるのが妥当か・・・。」 剛士郎「あぁ、だが機神に2人のドライヴァーが居るというのは前代未聞の事だ。 茜君と話していたんだけど・・・。鳳覇君、君はアルファードに乗るとき榊君と"一緒"に乗らなかったかい?」 暁「はい、ちょっと強引にですけど、俺が乗ると同時に輝咲も乗ってたはず。」 あの日のことを思い出した、俺の世界観が一瞬にして変わったあの日の事を。 剛士郎「やっぱり、多分榊君と暁君はアルファードにとって1人のドライヴァーとして認識している。 つまり、どちらもアルファードのドライヴァーであり、どちらもアルファードをコントロールできる。」 淳「そう考えると、昨日の出来事に納得が着く。 それに、もしそうなら榊君はまだ安全だということだね。」 雪乃「ちょっといいかしら?解析終ったわ、凄い情報量ね・・・・これ。 モニターに出すわ。」 足元のモニターに情報が映し出された。レドナが言っていたとおり、地形と罠の場所。 それに敵の配置図、作戦内容、フォーメーション図など詳細情報がいっぱいあった。 雪乃「最深部に位置するここが榊さんが居る場所よ。」 敵基地の心臓部らしき所に青い点が光った。 暁「ここに輝咲が・・・・。」 結衣「このもう一つの黄色の点は何なんですか?」 鈴山がその近くにあるもう一つの点を指した。 雪乃「夜城 レイナ・・・、きっと夜城君のお姉さんがいる所よ。」 静流「鳳覇、夜城とは何か作戦を立てているのか?」 俺は力強く頷いた。 暁「レドナが出てきたら俺と一騎打ちして、俺はわざとやられたフリする。 戦闘中に俺はアイツの機神に乗って、そのままリネクサスの基地に帰還。 それから2人を助けて脱出する作戦です。」 淳「はぁ~、またアルファードのメンテかぁ・・・。」 佐久間が力抜けたように言った。 剛士郎「まぁ元気を出してくれ佐久間君。 我々は一人でも多くの人命を助けることも使命の内だからね。 さて、それじゃあ準備に取り掛かろうか!」 雪乃「えぇ。神崎君と鈴山さんは二度手間になっちゃったわね。」 有坂がモニターを消して立ち上がる。 静流「任務のためだ、構わない。」 結衣「私も大丈夫です。」 その時、佐久間の携帯が鳴った。 淳「どうした?おぉ、そうか!でかしたぞ! 桜君、寺本君!2人の機神の応急処置が出来たぞ!」 かりん「オッケー、なら私も行きますかね。」 佑作「よぉっし!!」 寺本が小さくガッツポーズをした。 雪乃「佐久間さん、すぐにポセイドンに積み込みを。」 淳「了解!」 佐久間は敬礼すぐと、本部地下のハンガーへ向った。 剛士郎「よし、それじゃ榊 輝咲奪還作戦、開始だ!」 暁「輝咲・・・待ってろよ。」 俺は司令室の傷跡から外を見た。 -同刻 リネクサス北極基地- レドナ「どういう事だ!?」 俺は拳で壁を叩いた。 エルゼ「言ったとおり、作戦を変更する。 夜城 レドナの出番は無くなったよ。」 突然の作戦変更、この作戦では教えたとおりの作戦で把握している暁達は不利だ。 エルゼ「何で君はそこまでこの作戦変更に異議を唱えるんだい?」 レドナ「俺はこの作戦でサンクチュアリとけりをつける覚悟でいた。 俺の機神ならアイツを倒せる。」 エルゼ「どこから湧いてくるのかな、その自信は。」 エルゼがにやけた口元を見せた。 レドナ「あんたは俺にあの機神の名前と秘められた力を教えなかったな。 それは俺が他にあの機神の秘めたる力を教えないようにするため。」 エルゼ「あぁ、そうだ。 逆に問おう、君は教える気でいるのかい?」 レドナ「いや、知っててもあの力なら教えないさ。」 今までパソコンのモニターを見ていたエルゼが初めて振り返って、俺を見た。 エルゼ「とにかく、今からこの基地を日本に移動させる。 サンクチュアリの排除はグラド達にやらせる、君は少し寝ていてくれ。 大丈夫、君の大好きなお姉さんには手は出さない。」 レドナ「それは出来ない、俺も・・・しゅ・・つげ・・・・。」 意識がだんだん遠のいていった。振り返ると銀色の麻酔銃を持ったナーザが立っていた。 俺は体の力が抜け、倒れこんだ。 悪い、暁―――。 - エルゼ「全く、誰のおかげで作戦変更になったと思っているのかな。」 ナーザ「いいんですか、始末しなくて。」 倒れたレドナをナーザが強引に立たせた。 エルゼ「いいさ、後々彼には"本当の決断"をしてもらうよ。 さて、グラドと3人は準備できてるかい?」 ナーザ「先ほど完了したと連絡が入りました。」 エルゼ「ふっ、ならば行こうか。 総員に伝達、これより本基地は日本に向けて進路を取る。」 -AM09:52 ポセイドン内ハンガー- 一通りの作業が終了し、ポセイドンは北極基地に向けて出航している。 そして俺は佐久間に言われた通りハンガーに行った。 暁「ま・・・・まじか・・・・。」 淳「どうだ~?かっこいいだろ?」 俺はハンガーに入るなり、アルファードを見て空いた口が塞がらなかった。俺が知るスマートな体系のアルファードではここには居なかった。 淳「名付けて、アルファード重突撃装備だ!」 その名の通り、胸部や肩に追加装甲が施されていた。それだけではない。太刀があった背中にはリニアカノンが左右に。 肩にはミサイルポッドらしきものがあった。両手には銃口が上下に2つあるマシンガンが装備されている。 細い足にもミサイルポッドが側面に2つある。俺が最も愛用する太刀は両腕に装備されていた。 淳「単機で突撃するならコレぐらいの装備が必要さ。 あ、ノヴァはパージしないと撃てないからそこんとこよろしく~。 はい、これマニュアル。」 白く分厚い本を渡された。そのまま佐久間はどこかへフラフラと言ってしまった。 暁「は、はぁ・・・・。」 パラパラと捲ったが、すぐに俺はそれを閉じた。 改造されたのは俺の機神だけではないらしく、ゲッシュ・フュアーも改造をされていた。 背中に銃身の長いキャノンが付いていて、後に疑似機神が乗ってゲッシュ・フュアーを砲台代わりにしようする形になっている。 ちなみに昨夜の戦いで落とされたらしいゲッシュ・フュアーの両腕は、端折られていた。 結衣「なんだか、すっごい重々しくなっちゃったね。」 アルファードのなんとか装備を見上げながら鈴山が来た。 暁「まぁな・・・、向こうに着くまでにコイツを熟読しなくちゃならないってさ。」 さっき貰ったばかりの本を見せた。 結衣「た、大変だね・・・あはは・・・。」 結衣もパラパラと捲って、すぐにその本を俺に返した。 その時、艦内放送が流れた。 -機神、疑似機神の戦闘メンバーは、ブリーフィングルームへ集合してください。 繰り返します。機神、疑似機神の戦闘メンバーは―― 結衣「行こっか、鳳覇君。」 暁「おう!」 俺は少しでもマニュアルから離れられる口実が出来てホッとしていた。それも束の間、放送の声が変わった。 -あーあー、鳳覇君はマニュアルに千年ぐらい専念しておいてくれ~。 本作戦は君が要だー!じゃ、よろしく頼むよ~- 佐久間の陽気な声が聞こえた。俺は苦笑すら忘れてしまった。それにくだらない親父ギャグまで入っている。 もう俺は泣きたくなった。なんだか佐久間は真の大人になった姿のように感じられた。 結衣「じゃあ、行ってくる・・・ね。」 暁「うん、行ってらっしゃい・・・はぁ。」 苦笑しながら手を振る鈴山に俺は答えた。 暁「作戦の要か・・・、やるっきゃないか!」 俺は気持ちを切り替え、アルファードのコクピットへ向った。基本操縦はアルファードを動かす時と同じ"感覚"でできるようだ。 マニュアルの大半は手持ち武器の使い方や、効果的な使用法などが書かれていた。 分厚い姿に俺は逃げていたが、気付けば残すところ数ページといったところまで読み込んでいた。 その時、ドッグ入り口内から数人が走ってくる音が聞こえた。アルファードから覗くとドライヴァーの皆だった。 そしてすぐに通信が入る。 雪乃「鳳覇君、敵が別の動きを見せたわ。 向こうの基地もポセイドンに向ってきてるわ。」 暁「そ、それって・・・!?」 雪乃「残念だけど、夜城君の作戦とは全然違うわ。」 レドナが嘘をついたと言うのか。でも俺は信じられなかった。レドナのあの時の目、レイナさんを助けて欲しいと言ったあの表情。 絶対に嘘をついているレドナの顔では無かった。 暁「レドナ・・・何かあったのか・・・。」 雪乃「とにかく、後数分でエンゲージに入るわ。 鳳覇君もすぐに出撃できるよう準備しておいて。」 暁「了解!」 俺は開けっ放しのアルファードのコクピットを収納させた。 暁「レドナ・・・・。」 まさか、レドナは俺とコンタクトを取ったのがバレたのではないだろうか。 そうなるとレドナだけではない、レイナさんまでも危険な状態にあるのでは。 雪乃「敵基地、肉眼で確認できる距離まで来たわ。 先行部隊、出撃よ!」 静流「了解、各機遅れるなよ。」 青いスティルネスがハンガーから姿を消す。次次に残りの疑似機神が上へ打ち上げられる。 ゲッシュ・フュアーを最後に、俺は一機ハンガーに残された。 後攻の俺は前衛の敵を30%片付けた後に出る作戦だ。 もう上では交戦が始まっているのか、遠くから爆発音などが聞こえた。 雪乃「27・・・28・・・・29・・・・鳳覇君、出撃よ!」 数分後、有坂の声が聞こえた。 暁「了解ぃっ!鳳覇 暁、アルファード、行くぜ!」 重装備のアルファードが射出された。外に出ると、海上にはエインヘイトの残骸が浮いていた。 さっと周囲を確認する、皆の機体は一機もやられてないようだ。 静流「突破口は開いてある、向こうに上陸しろ。」 暁「行っくぜぇ!アルファードッ!!」 背中に取り付けられたブースターに火を着ける。重武装の弾丸はあっと言う間に基地に辿り着いた。 ここからはマニュアルで蓄えた知識をフル活用する。 まず目の前にいる10機近くのエインヘイト。両肩と脹脛のミサイルポッドを展開させ、蛇行して近づきつつミサイルを発射した。 自動追尾になっているミサイルは、蛇行運転と絡ませることで相手の回避行動を抑制できるそうだ。 一番前に居たエインヘイトにミサイルが命中し、爆発して崩れた。 暁「うぉらぁっ!!」 両手に装備された銃を乱射した。どうやら銃口が二つあるこのマシンガンは、上はビームの弾丸が、下は実弾が発射されるそうだ。 見てみると、上の弾丸と下の弾丸が見せる残像の色は全く異なっていた。 マシンガンの連射威力は絶大で、トリガーを引いて8秒、すでに2機のエインヘイトを撃墜していた。 続いてレーダーを見ると、遠くから狙撃してくるエインヘイトがあった。今度は太刀の代わりに取り付けられたリニアライフルを発砲する。 マシンガンよりも連射性能は無いが、一発一発がどっしりとした音を出して飛んでいった。 遠くを狙っている最中、今度は両側面からのエインヘイト。腕に取り付けられた太刀で攻撃をガードし、力で跳ね返した。 よろけた2機にマシンガンを向けて連射した。 レーダーが敵の接近を知らせる音を鳴らした。見ると、今度はエインヘイトよりはるかに機動性がいい奴が来た。 この動きは――。 真一郎「暁ぁぁっ!!」 暁「エインシード・・・真一郎か!」 薙刀の攻撃を交わし、マシンガンの弾丸を撃ち込んだ。奇抜な形をしているエインシードはその弾丸をひらりと交わして再び接近戦を試みた。 両腕の太刀で攻撃を受け止め、脹脛のミサイルポッドを突きつける。 暁「離れやがれ!」 ミサイルを射出する、エインシードの腹部にミサイルが叩き込まれた。爆発して後に大の字に倒れこむ。 真一郎「うああぁぁぁっ!!」 暁「決着、着けてやる。」 レーダーに別の敵影が映る。見ると、襲い来る無数のビーム攻撃。 暁「あの攻撃・・・カタストロファー!?」 俺は倒れたエインシードから離れ、攻撃を避けた。 グラド「ふっ、重装備で来るとは。俺に喧嘩を売っているようなものだな。」 暁「お前のよりかは、ゴツゴツしてねぇけどな!」 負けじと背中のリニアライフルを浴びせた。だが、その弾丸はことごとくビーム砲の攻撃で抹消された。 しかもそのビーム攻撃はカタストロファーのものではない。 ヒルデ「そこまで早く動けないんだから、あんまり前に出ないでよ!」 グラド「ふん、知ったことではない。」 赤いエインヘイトが持っていたのと同様の陽電子砲を装備したエインシードがいた。 暁「あの機体、もう量産されて・・・・うっ!!」 真一郎「僕だって終っちゃいないよ!」 倒れていたエインシードが起き上がり、拳でアルファードの顔面を殴りつけてきた。 グラド「貰ったぁっ!!」 カタストロファーの全砲門がアルファードをロックした。 かりん「暁、頭下げて!」 言われた通り、アルファードの体制を低くした。遠くからビーム砲が発射され、頭上を通過してかカタストロファーに命中した。 グラド「ぐっ!」 佑作「鳳覇、大丈夫!?」 見ると背中にアーフクラルングを積んだゲッシュ・フュアーが向ってきた。ゲッシュ・フュアーが背負っているビーム砲をアーフクラルングがコントロールしている。 修「小ざかしいですね。」 アルファードとゲッシュ・フュアーとの直線の間に2本の太刀を持ったエインシードが現れた。 佑作「どけぇっ!」 ゲッシュ・フュアーの足のビーム砲がエインシード目掛けて発射される。 修「至近距離では私の方が有利です!」 かりん「なら、アタシも接近戦で行きますかね!」 ゲッシュ・フュアーから飛び降りたアーフクラルングは背中からナイフを取り出して応戦した。 ヒルデ「なら、私はあの子を相手しようかしら。」 陽電子砲がゲッシュ・フュアーに向けられた。 暁「させっかぁっ!」 肩のミサイルポッドを展開させ、陽電子砲持ちのエインシードに向けて発射した。 ヒルデ「ったく!しつこいわね!」 静流「本当にしつこいのはどっちだ。」 青い閃光が走る。スティルネスが一瞬にして陽電子砲を真っ二つに切り裂いた。 グラド「この距離、もらったぞ!」 結衣「神崎さん、下がって!」 ルージュが間に入り、バリアフィールドを展開してカタストロファーの砲撃を防いだ。 暁「はぁっ!!」 砲撃中のカタストロファーにマシンガンを打ち込んだ。 グラド「ぐぅぅ!!」 真一郎「はぁっ!」 暁「うっ!!」 カタストロファーに集中して、真一郎のエインシードの動きを見ていなかった。薙刀が右肩のミサイルポッドを粉砕する。 残っていたミサイルが爆発する前に肩の装甲をパージして下がる。次の瞬間に肩パーツは大爆発した。 修「そんな小さい疑似機神で私に敵うとでも?」 エインシードの太刀をナイフでやっと凌いでいるアーフクラルング。 かりん「機人なんかいう低スペックい言われたくないんだけどね!」 一瞬の隙を突いて、アーフクラルングが蹴りを入れた。そのまま左手に持っていたマシンガンを発砲する。 修「ぐっ!」 グラド「さすがに歩が悪いか・・・仕方ない、アレを使うか。」 突然氷山が振動した。 佑作「じ、地震・・・?」 結衣「あれは!?」 みわたすと、氷山のいたるところからレーザー砲が現れた。 グラド「ここが我々の基地の真上だという事をお忘れかな。」 かりん「ちょっと!こんなの情報に無かったわよ!?」 静流「気をつけろ、来るぞ!」 レーザー砲から青いビームが機神、疑似機神の装甲に浴びせられた。 暁「ぐぁぁっ!!」 追加装甲がボコボコに凹み、ミサイルポッドにビームが当たり炸裂する。 背中のリニアライフルなどレーザー発射4秒で使い物にならなくなった。 静流「ぐっ・・・!鈴山、バリアフィールドは使えるか!?」 結衣「だ、ダメです!システムが完全に壊れて・・・きゃぁぁっ!!」 暁「鈴山さん!!」 ルージュがドスンと氷の上に倒れた。 グラド「ふっ、次はお前たちだ。・・・ファイア!!」 カタストロファーの攻撃がゲッシュ・フュアーとスティルネスに直撃する。 佑作「うあぁぁっ!!」 静流「んっ!!」 黄色とオレンジ色をした巨体と青い機神も煙を上げながら倒れる。 暁「神崎さん!」 かりん「佑作!?きゃっ!!」 アーフクラルングに陽電子砲が当たる。 ヒルデ「切られたって、もう一個持ってきてるのよ。 ほぉら。」 暁「ぐあああっ!!」 煙を上げて倒れるアルファード、陽電子砲の攻撃でもう追加装甲は跡形も無く消え去っていた。 俺に残された武器は太刀のみ。そしてまだ止まないレーザー砲の攻撃。 暁「くそっ・・・・どうすれば・・・!!」 また俺は、誰も守れないままでいるのか。輝咲を助け出すこともできないのか。 やっぱり俺には、何年たっても逃げることしかできないのだろうか――。 輝咲がくれた腕輪を俺はただ握り締めていた。 EP11 END |