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EP18「女神光臨」

 -2019 1/7 PM09:28 場所不明-

茜「持ってきたわよ、ARSが所有する全機神と疑似機神、それにヴァンガードのデータ。」

 白衣のポケットからSDカードを取り出し、茶色のコートに身を包んだ男にそれを渡した。

???「ありがとう、これでこの世界も救われるな。」
茜「でもヴァンガードでも機神は愚か、疑似機神にも抵抗できやしないわ。」
???「はっはっは、そんな事はないさ。」

 コートの男は嬉しそうに笑い声を上げた。

???「すでにタウゼンファビュラーのコアの回収は済んでいる。」
茜「まさか・・・見つけたの、機神を作る方法を!?」
???「さすがに機神を作るのは無理な話だ。研究どおり、現代に無い物が利用されてるからね。
    でも疑似機神を超える存在、機神でなく、機神に等しい存在には手が届きそうだ。」

 男はSDカードを微笑んだ顔で見つめていた。

???「人類の最初はアダムとイヴという仮説は嫌いでね。
    私は進化論を支持し続けるつもりだ。これも同じさ。」
茜「このデータと機神のコアから新たな進化をさせていくつもりかしら?」
???「順序良くいってくれるといいのだがな。
    所で、暁の方はいいのか?」
茜「暁は大丈夫よ。すでに盤上は一つの逃道しかない駒配置になってるわ。」
???「君がそこまでいうのなら、楽しみだな。」


 EP18「女神光臨」


 -PM11:12 独立部隊地下基地付近上空-


暁「うおおぉぉっ!!」

 白銀の翼を広げ、ヘカントケイルの真下にもぐりこむ。

ナーザ「ヘカントケイルに死角は無い。」

 下腹部から砲門が現れる。一瞬にして穴から黄色いビームが無数に放たれる。回避しようと回転しながら接近する。
途中で最も安全な回避策が脳裏に浮かんだ。

暁「シールド展開っ!」

 両腕についている緑の透明物体から目に見える波が発生した。その波は降り注ぐビームを中和していく。
 ヘカントケイルとの距離が縮まった所で、背部についているアルファードと同ギミックで出てくる鞘を前に出した。
より長く、より鋭い刀を両手に、へカントケイルを真下から切りつける。

ナーザ「バリアがある事を忘れたか。」

 確かにナーザの言うとおり、ヘカントケイルには全身を覆う協力なバリアが展開されている。適当な攻撃は一切通用しない。
だが、エイオスにはそれを上回る強大な力が秘められている。教えてもらったわけではないが、戦い方は頭の中に浮かんでくる。

暁「はぁっ!!」

 長い刀身がバリアに弾かれる。

ナーザ「無様だな。」
暁「まだだ!次元斬!!」

 再び太刀をヘカントケイルに振り下ろす。すると太刀の刃が無くなった。代わりにバリアの内部に無くなった分の刃が現れた。
バリア内部の刃は、ヘカントケイルの装甲に大きな傷跡を付けた。

ナーザ「刃先を別次元を通してバリア内に入れただと?」

 ヘカントケイルはエイオスから逃げるように上昇を始めた。

暁「逃がさない!」

 次はヘカントケイルのコクピットがあるであろう透明の球体がある真正面の部分へと向った。

ナーザ「甘く見すぎたか、アームユニット展開。」

 コクピットの横から大きな腕が現れる。その拳がエイオスを殴りつける。すぐにシールドでガードするも、その威力でかなり後まで飛ばされた。
だがエイオスの飛翔速度は伊達じゃない。数十メートル飛ばされてもものの2秒でヘカントケイルに近づいた。

暁「次元斬!!」

 突き刺した刃先がバリア内部へと入り、ヘカントケイルの右腕を切り落とした。

ナーザ「ヘカントケイル、主砲用意。」

 エイオスのコクピットから見える眼前にある頭の口から主砲が現れた。

暁「しまった!」
ナーザ「発射。」

 瞬時に主砲から凄い威力のビームが発射された。咄嗟の回避方法を頭で考えると、すぐに答えが見つかった。
気付くと、いつのまにか主砲の真横へとワープしていた。

暁「もらったぁ!!」
ナーザ「くっ、ヘカントケイル、緊急離脱。」

 太刀を振り下ろすと、ヘカントケイルの姿が消えた。向こうもワープを使ったらしい。レーダーを確認するが、反応が無くなった。
完全にここから離脱したらしい。

暁「これが・・・エイオスの力・・・。」

 以前ヘカントケイルと戦ったときよりも圧倒的に太刀打ちすることができた。今の戦闘がアルファードとの格の違いを明示していた。


 -2019年 同刻 ARS本部 司令室-

 鳳覇 茜の裏切り以降、一時は機神にて待機していた俺たちだが、今後の対策について司令室に召集された。
皆の顔は重く沈んでいた。

剛士郎「まさか・・・、茜君までもが・・・。」

 重い空気に割り入るかのごとく、司令が口を開いた。

レドナ「第三の勢力を示唆している発言をしていた。
    リネクサスで無いことは断言できる。」
静流「悪魔で私の推測だが、鳳覇 茜は連邦政府に寝返ったとも考えきれる。
   連邦政府もARSの出撃をなるべく規制したがっている。
   つまりは我々の力を自分で駆使したいのではないだろうか。」

 怪しく光るメガネの奥にある瞳が物語った。

雪乃「確かにその線は大いに有り得るわね。
   ARSが出撃しないことは茜さんにとっては暁君を守ることになるわ。」
かりん「でもそれってかなりヤバいんじゃないの?
    向こうはこっちの情報を持ってるんでしょ?
    それならいつでもアタシたちを潰せるってことじゃん。」

 だらしなさそうな見た目とは裏腹に、桜が正論を述べる。

剛士郎「桜君の言うとおりだ、我々は敵を一つ増やしたといっても過言ではない。
    今後は我々の所有する機神が要となる。」
レドナ「いや、機神で太刀打ちできる相手でないかもしれない。
    鳳覇 茜は一旦未来へと通過している。そこで得た情報が機神の設計であれば・・・。」

 この空気を切り裂く警報音が本部内に鳴り響いた。

剛士郎「どうした!?」

 副司令が急いで机の上の受話器を取った。

雪乃「こちら司令室、何があったの!?」

 受話器からの答えに雪乃の顔が青く染まった。

雪乃「えっ!?高速で接近する未確認の戦闘機!?」
レドナ「戦闘機・・・画像は!?」
雪乃「衛星写真をモニターに写して。」

 司令室の足元のモニターに紫色のボディー、白い羽を持つ戦闘機が映し出された。

レドナ「・・・間違いない、鳳覇 光輝のリデンスキャフトだ!」

 予想していた最悪の事態が起きた。

剛士郎「ドライヴァー諸君、ただちに出撃せよ!」


 -2071年 1/7 PM11:34 独立部隊地下基地-

 ヘカントケイルの撤退と共に戦いは一気に幕を下ろした。すでに防衛部隊はハンガーに戻っている。
俺の魔神機となったエイオスも同じく基地のハンガーに立てかけられた。
 俺はハンガーに付くなり、急いでゼオンを医務室へと運んだが、すでにあの時で完全に息絶えていたようだ。
と言うよりも、死んだからこそ俺の存在がエイオスに認められたのだ。一方では当然の事と想う自分。
もう一方で、本当にこうしてよかったのかと想う自分の葛藤があった。そんな感傷に浸っていると、セレアがやってきた。

セレア「暁・・・悪いな。」
暁「なんでセレアが謝るんだよ。」

 ため息交じりに、セレアが俺の横に座った。

セレア「あの時、ドライヴァーの変更には前のドライヴァーが死なないといけないっての黙っててさ。」

 そういえばあの時、ゼオンの言葉にセレアの顔つきが代わった。あの時の表情は、俺に嘘をついたゼオンに対する怒りだったのか。

暁「でも、俺はあの時それを知っていたら、エイオスを受け継ぐことを拒んだかもしれない。
  背水の陣に立たされたからこそ、俺はエイオスを受け継ぐことができた。」
セレア「ゼオンも同じ事を言っていた。逃道が無い場所に立たされれば、そうせざるを得なくなる。」

 自分だからこそ分かる気持ちを、ゼオンは最大限に利用していた。未来の自分は思ってた以上に凄い奴だった。

セレア「ま、何がどうであれ落ち込むな!暗い顔は暗い事しか呼ばないぞ!」

 そういってポンと俺の背中を叩いた。

暁「セレアはどうも思わないのかよ。」
セレア「だって、ゼオンはここにいるからな。」

 また俺の背中を叩いた。ちょっと胸が熱くなった。

セレア「所で、暁はこれからどうするんだ?」
暁「俺は・・・・。」

 考えていると、一つ疑問が見つかった。

暁「あ。」
セレア「ん?」
暁「あぁぁぁっ!!!」

 俺は思わず椅子から立ってしまった。

セレア「びっくりさせんなよ!って、どうしたんだよ?」
暁「俺ら、どうやって過去に帰るんだよ!?」
セレア「知らないのかよ!!」

 強烈なツッコミが来た。
 今までこっちの世界に来て帰ることを考えていなかったが、帰る方法を教えてもらっていなかった。
最初は来た時のワープゲートを逆に通れば戻れると思っていたが、すでにゲートはエイオスが破壊している。

梓「どうしたの、大声出しちゃって。」
セレア「センセー、大トラブルが発生したっぽい。」
梓「聞こえてたわ、ワープ方法が見つからないんでしょ。」

 どうしたのと聞いたくせに、花山は全てを知っていた。

セレア「知ってたんっすか~。」
梓「あれほど大声で叫んでたら嫌でも耳に入ります。」

 キッパリと言われた。

梓「とりあえず、セレア君も暁君も一緒に来て。
  その事について話すから。」


 -2071年 1/7 PM11:42 独立部隊地下基地 特別室-

 花山の後を追いながら歩き続けて数分、地下基地のさらに地下へと続く階段を下りていた。

梓「ここよ。」

 最深部らしき部屋に付くと、そこにはここに来る前にみたものとほぼ同じ光景が広がっていた。
広い部屋の中心に銀色の円形の機械とその端末。ワープゲートだった。

暁「ワープゲート・・・これで俺たち戻れる!」
セレア「よかったな、暁!」

 俺とセレアはもう親しい友人であるかのように両手を合わせた。

梓「でも、ちょっと問題があるのよ。」
暁「問題・・・?」

 一瞬にして喜びの顔は俺から消え去った。

梓「このワープゲートはちょっと特殊で、未来と過去とでワープエネルギーが必要になるわ。
  こっちは前々から用意していたこれ専用のエネルギーがあるんだけど、向こう側が無反応なの。」
暁「ま・・・まさか!?」

 俺の脳裏に悪い予感がよぎる。ARSは俺が居ない間に壊滅してしまったのか。考えたくも無かったが、そう思わざるを得ない。

梓「一応向こうのゲートはまだ存在しているわ。
  ただエネルギーが切れてるだけよ。」

 俺の顔色を察した花山が捕捉をした。さすがは子供相手のエキスパートと言ったところだ。

セレア「そんじゃどうするんですかい?」

 ほっとした俺を他所に、セレアが続けた。

梓「考えたんだけど、エイオスの力を使ってみようと思うの。」
暁「エイオスの力を・・・?」

 花山の言っている意味がイマイチよく分からなかった。

梓「えぇ、元々暁君はエイオスの力を応用してワープゲートを作ったの。
  だからエイオスになんらかのヒントが隠されてるはずだわ。」

 その時、この部屋のドアが開いた。太いコードの束を抱えた輝咲が部屋に入ってくる。

輝咲「先生、もって来ました。」

 ワープゲートの横にそのコードを置く。

セレア「これ、エイオスから繋いでるのかよ!?」
梓「その通り!どうなるかは分からないけど、止まってるだけじゃ何も始まらないわ。」

 そう言って花山は数人の研究員らしき人物を呼んで、コード類をワープゲートの端末に繋ぎ始めた。

輝咲「一日も経ってないのに随分長い間ここにいる気がしたね。」

 物寂しそうに輝咲が言った。

暁「あぁ、そうだな。」
輝咲「私、さっきシェルターの中で過去の自分に会ったんだ。
   話はしてないけど、気付くのに時間かかっちゃった。」
暁「前髪が長くて、顔が分かりづらかったからか?」

 さっき迷子だった子の姿を思い出しながら俺は言った。

輝咲「な、何で分かったの・・・?」
暁「さぁ~な、ただ前髪の長い迷子だった子を教室まで連れて行ってさ。
  雰囲気がどことなく輝咲に似てたから、まさかと思っただけさ。」
輝咲「そっか・・・。それじゃあ、あの時のお兄さんは暁君だったんだ。」

 何だか嬉しそうに輝咲がもじもじと呟いた。

梓「それじゃあ、エイオスのエネルギーを送るわよ。」

 研究員が端末を操作すると、コードが震えだした。途端にワープゲートのリング内部が青く光りだす。

セレア「成功だな!」
梓「せっかく輝咲ちゃんに会えたのに、残念だなぁ・・・。」

 蒼白い光を見ながら、花山が呟いた。

輝咲「先生、私はいつでもここにいますよっ。ちょっと歳は幼いですけど。」
梓「ふふっ、そうだったわね。」
セレア「頼んだぜ、暁ぁっ!!」

 突然セレアが泣きながら俺に抱きついてきた。どことなく真を連想させる行為だった。

暁「分かった!分かったから離れろ!!」

 強引にセレアを引き剥がした。

梓「転送場所は・・・旧東京でいいわね。」

 端末の画面に映る東京の地形。それを見て俺と輝咲は頷いた。

梓「輝咲ちゃん、暁君、未来を・・・頼むわよ!」
セレア「暁、頑張って未来を変えてくれ!」

 泣きながらセレアが力強く握手した。あまりに激しく振るので腕が外れそうだった。

輝咲「任せてください!必ず未来を変えてみせます!」
暁「未来の俺が託してくれた力があるんだ、絶対に変えてみせる!
  それまで、待っててくれ!」

 俺はそういい残すと、花山とセレアに背を向けた。目の前に広がる蒼白い光。

輝咲「暁君・・・。」

 輝咲が俺の右手を握った。輝咲の顔を見て、俺は黙って頷いた。
 俺たちは手を繋いだまま、大股で蒼白い光の中へと入った。

 未来からの想いを胸に焼き付けて。


 -2019年 同刻 東京湾-

 東京湾の沿岸に総勢5機の機神・疑似機神が並ぶ姿は外から見て見たい気がした。
そんな冗談を言っている場合ではなく、もうすぐエンカウントするであろう敵機の姿をディスペリオンのモニター越しに見ていた。

雪乃「敵機、戦闘距離に入ったわ!」

 有坂からの通信、俺たちに緊張が走る。

かりん「機影確認!真正面から来る!」

 スナイパーを構えるアーフクラルングから通信が入る。

静流「寺本、今だ!」
佑作「いくよ!全段発射!!」

 ゲッシュ・フュアーのミサイルハッチが展開し、無数のビームやミサイルが前方に放たれた。
海の向こう側で爆発が起こる。

佑作「やった!?」
雪乃「まだよ、反応は消えてないわ!」
かりん「向こうも撃ってくる!」

 爆煙の中から光が見えた。あの光はリデンスキャフトの胸部のビームの色だ。

レドナ「鈴山!」
結衣「バリアフィールド、展開します!」

 5機の機体をピンク色のバリアフィールドが包んだ。すぐ後にオレンジ色のビームの光がバリアに直撃する。

結衣「す、凄い威力・・・!フィールドが持たない!」
静流「仕方ない、接近戦で行くぞ夜城!」
レドナ「あぁ!」

 スティルネスとディスペリオンはフィールドから出て、ビームに沿って接近した。
数秒後、紫色の人型が目の前に現れた。

光輝「生きていたか、夜城!」
レドナ「お前なんかに負けない!!」

 ディスペリオンの大剣、ドラグーンを両手に握り締め、振り下ろす。

光輝「遅い!!」
レドナ「くっ!」

 振り返ると真後ろにリデンスキャフトの機影。思考が追いつく前に相手は拳を作り攻撃態勢に入る。
衝撃に備え、歯を食いしばる。爆発音が鳴ったが、それはリデンスキャフトの後方からだった。

光輝「ぐっ!?」
かりん「よっし!当ったり~!」

 アーフクラルングの狙撃が命中したようだ。砲身の長いスナイパーライフルの先端から煙が上がっている。

静流「こちらもいかせてもらう。」

 爆発の余韻で空中でふらついているリデンスキャフトにスティルネスの斬撃が打ち込まれる。

レドナ「こいつも持っていきな!」

 自分でも驚くほどの連携プレイ。ディスペリオンの握る大剣、ドラグーンがリデンスキャフトの頭部に突き刺さる。
そのまま刃は上下へ展開し、どす黒いビームを放った。紫の頭部がひしゃげ、機体は海面に叩きつけられた。

光輝「数の差で負ける"執念"ではない!!」

 海面から放たれる光。

静流「来るぞ。」

 神崎の言葉にディスペリオンとスティルネスはその場を離れた。

雪乃「まって・・・、本部のレーダーは敵をロストしたわ。」
光輝「甘い!」
レドナ「しまった、本部を潰しにいく気か!」

 陸地に見える戦闘機の影。海面の光はダミーだった。陸地にいるのはサポート重視の疑似機神。
機神でも危ういリデンスキャフト相手では危険すぎる。
 急いで陸地に向おうと方向転換する時には既に交戦状態に入っていた。
 見ると、紫の戦闘機をゲッシュ・フュアーが両手で受け止めている。

佑作「ここは俺が止めてみせる!」
光輝「疑似機神がコイツに敵うか!?」

 ゲッシュ・フュアーの腕の中でリデンスキャフトが変形する。完全に変形とまではいかなかったが、十分人型になっている。
そしてその胸部はゲッシュ・フュアーの胸部へと押し当てられた。

光輝「永遠の眠りにつくがいい!」

 リデンスキャフトの胸部から零距離でビームが放射される。

佑作「ぐあああぁぁぁっ!!!」
静流「寺本!!」

 神崎の叫びをかき消すかのごとく、寺本の悲鳴が通信から鳴り響く。

かりん「佑作っ!!」

 アーフクラルングがスナイパーを構え、リデンスキャフトに向って発砲する。しかし背中から現れたチューブから放たれるビームに弾丸は打ち消された。
その隙を突いて、ルージュがリデンスキャフトの背後に回った。

結衣「この距離なら・・・!」

 ルージュの腕に装備されたライフルをリデンスキャフトに突きつけ、発砲する。だがトリガーが引かれるか否かの間にライフルは右腕ごと粉々になった。
次の瞬間、リデンスキャフトから放たれるコードの群れがルージュの四肢を切断した。

結衣「きゃぁぁっ!!」
レドナ「鈴山!」
雪乃「ルージュ機能停止・・・!!急いで、2人とも!」

 ルージュとの通信が途絶える。
 一方のゲッシュ・フュアーも分厚い装甲が見る見るうちに溶け出していた。

光輝「さぁ、はやくここをどけ。」
佑作「こっから先には行かせない・・・!!」

 ようやく俺たちも陸地に辿り着いた。着地するなりスティルネスがリデンスキャフトに体当たりした。
蒼い装甲に絡みつくコード。スティルネスは瞬時の太刀の一振りでそのコードを切断した。

静流「寺本!逃げろ!!」

 スティルネスの太刀がリデンスキャフトの腰の装甲に突き刺さった。胸部のビームは停止し、前方が原型を留めていないゲッシュ・フュアーが煙を上げて倒れた。
それと同時に寺本からの通信も途絶えた。

光輝「そのぐらいでぇっ!!」

 腰の刺さった太刀を引き抜くと、リデンスキャフトの姿が消えた。同時にスティルネスの背部ブースターが爆発した。

静流「何!?ぐあぁっ!!」

 そのまま背後からリデンスキャフトに蹴られ、顔面から地面に倒れこむスティルネス。

雪乃「ゲッシュ・フュアー機能停止、スティルネス中破・・・!なんて強さなの!?」
光輝「所詮機神もこの程度か。」
かりん「まだアタシらが居るってのよ!!」

 アーフクラルングが腰についている手榴弾を投げつけた。爆発が起こったが、そこにはリデンスキャフトの姿は無かった。

光輝「こいつも真っ二つに・・・・ぐっ!!」

 ディスペリオンの放つドラグーンの砲撃が見事命中した。さっきから消えては相手の背後に回る戦法を読んでの俺の攻撃だ。

レドナ「同じ手は通用しない!!」

 そのままアーフクラルングの真後ろに行き、リデンスキャフトにドラグーンの刃を叩き込んだ。漆黒の刃の衝撃に紫の装甲がへこむ。

かりん「こいつもオマケ!」

 振り返ったアーフクラルングが手に持っていた残りの手榴弾を至近距離で投げつけた。大きな爆発が起こり、煙が視界を遮る。

光輝「自分で自分の首を絞めたな!」

 煙の中から現れる光、気付いたときにはアーフクラルングが地面に倒れていた。

かりん「きゃっ!」

 倒れたアーフクラルングの頭部をリデンスキャフトの細い足が踏み潰した。

光輝「さぁ、残るはお前だけだ!!」

 リデンスキャフトの背部からすでに回復している多数のコードが襲い来る。ドラグーンを構え一振りに薙ぎ払ったが、幾本かが両手に絡みついた。
各コードの先端がビームを放ち、ディスペリオンの漆黒の両腕とドラグーンが地面に落ちた。

レドナ「まだだっ!!」

 落ちた腕をリデンスキャフトに向けて蹴り飛ばす。それを回避した瞬間にディスペリオンの頭突きをその腹部に叩き込んだ。
豪快に倒れこむリデンスキャフト、その代償は大きく衝撃で漆黒の頭部はひしゃげ、角は完全にへし折れた。
 頭部の破損により、視界が薄暗くなる。上手く周囲の状況を把握することができないでいた。
今の攻撃で相手は完全にダウンしたわけではない、次に相手が立ち上がった時、俺に勝つ術は無い。

光輝「捨て身の一撃、努力だけは認めてやろう。夜城。
   だが、これで終わりだ!!」

 薄暗い画面からも見える光、ビーム攻撃が向けられていることは簡単に推測がついた。

レドナ「こんな・・・こんな所で・・・!!」

 俺は奥歯をかみ締め、自分の無力さを悔やんだ。両手に握るレバーに力が入る。

レドナ「レイナ・・・・。」

 最後の夢、叶えることができそうにない。

 俺の頬に一筋の涙が走った。

雪乃「上空に未確認の機影を確認・・・、あれは!!」

 有坂の通信を聞き、俺は漆黒の夜空を見上げた。

暁「レドナっ!!」

 突然ノイズ交じりで聞きなれた声が聞こえてきた。

レドナ「暁・・・!?」

 壊れた画面越しでも分かる、眩い光が上空から降りてきた。
 まるで、女神が降りてきたようだった。

-

 眼前に広がる光景、無残にもボロボロの姿で倒れている機神、疑似機神。もちろんやったのはリデンスキャフトのドライヴァー、鳳覇 光輝だ。

光輝「そ、その魔神機は・・・!!」

 エイオスの翼を広げる。純白の翼が闇夜を切り裂いた。

輝咲「暁君・・・。」

 コクピットの後に居る輝咲が俺の肩に手を置いた。

暁「こいつは未来の俺が託してくれた、希望だ!」
光輝「ふっ、希望だと?
   お前が俺に刃を向けることができるか!?」
暁「今更親父を正気にさせようなんて思わない。
  俺は、お前を倒す!!」

 エイオスを急降下させ、リデンスキャフトのもとへと接近した。途中で背中に装備されている鞘から2本の太刀を抜き出す。

暁「はあぁっ!!」

 他の追随を許さないほどの速さでリデンスキャフトに斬撃を入れる。だが向こうも長い手足を利用して攻撃を防いできた。

光輝「くっ、さすがにパワーは互角か・・・。」

 至近距離で胸部のビームを放とうとしていた。それを見て、俺は太刀を一振りして後に下がる。放たれたビームを腕のビームシールドで相殺した。
それが終ると、俺は再び太刀を構えてリデンスキャフトを切り付けた。

光輝「近づきすぎたな!」

 リデンスキャフトの背部から10本のコードが噴射され、こちらへ襲い来る。エイオスの羽を羽ばたかせ、急上昇した。

暁「いくぜ、次元斬!!」

 リデンスキャフトの上空で太刀を振るう。刃先は空間を通り越し、リデンスキャフトの右腕を切り落とした。

光輝「何だと!?」

 衝撃でよろけるリデンスキャフト。コードもそれに合わせて不規則な動きをしながら、背中へと戻っていった。

光輝「仕方ない、一時撤退するか。
   次に会うときが最後だと思え、暁!」
暁「待て、親父!!」

 右腕を抱えながら、戦闘機へと変形した。かと思うと物凄い速さで海中へと潜り、姿を消した。
俺は追いかけようとエイオスの羽を高機動状態にさせたが、真下を見てそれをやめた。
まずは傷ついた皆の回収を急いだほうがいい。通信画面を開いても、レドナと神崎以外からは全く反応が無かった。


 -1/8 AM01:28 場所不明-

茜「石田さん、連れてきたわ。」

 石田と呼ばれた茶色のコートの男が振り返り、鳳覇の隣に居る男に目をやった。

隆昭「やぁ、君が候補者君だね。私は"石田 隆昭(いしだ たかあき)"だ。
   日本軍事防衛省のトップをやっている。」
真「高田 真でありますっ!
  この度はー、俺・・・いや!自分を!騎神隊の候補者にしていただきー!誠に光栄でありますっ!」

 かくかくした言葉で高田が敬礼をして言う。

隆昭「ははっ、そんなに畏まらなくていいさ。
   私としても君がこの日本政府が開発した騎神(ナイトノイド)のドライヴァーを務めてくれることに感謝している。」

 石田は右手を差し出し、微笑んで言った。

隆昭「頼むよ。日本の、世界の未来のために、頑張ってくれ。」
真「は、はいっ!全力で頑張ります!」

 高田も自分の右手で握手をして応えた。


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