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「キクとイサム」1959年
今井正監督の「キクとイサム」(1959年・昭和34年・大東映画・松竹配給)という作品に、まだ無名だった田中邦衛さんが出演されていると、荒井幸博さんから教えていただきました。 この作品に邦衛さんご本人も出演されたことを憶えておられないとのことで、映画祭に来県された際にぜひ邦衛さんに見ていただきたいとのことでした。 市内の数軒のレンタルビデオ屋さんを訪ね歩いた末に発見し、拝見しました。 これは邦衛ファンにはとても貴重な映像です。 邦衛さんは、同じ今井正監督の「純情物語」(1957年)が映画デビュー作ですが、その2年後の作品ということで、そのいきさつも気になります。 さて、この「キクとイサム」という作品のあらすじですが、 小学生のキクとイサムは、アメリカ占領軍の黒人との混血児の姉弟です。 幼い頃から祖母のしげ婆さんのもとで暮らしていました。 やがて、二人にアメリカへ養子に行く話が持ちかけられ、嫌がったがイサムは農園へもらわれていきます。 会津磐梯山を背景に、黒人混血児の問題を社会に訴えようとするものです。 主役の二人には何人かの候補者の中から、東京荒川の小学六年生(高橋エミ子氏)と横須賀の小学四年生(奥の山ジョージ氏)が選ばれ、今井監督のもとで俳優としての訓練をうけたそうです。 水木洋子氏のオリジナル・シナリオ。 大東映画の第一回作品です。 深刻なテーマだけに総じて暗くなりがちですが、今井監督はあえてヒロイン・キクを明るくはつらつと描き、問題を提起しながらもラストもなかなかさわやかでした。 特筆すべきは、北林谷栄氏演ずる、しげ子婆さんです。 資料によれば、同じ今井監督の「山びこ学校](1952年)に次ぐ出演のようで、当時まだ50歳前だったとの事ですが、方言を駆使し、どのようにみても7~80歳のおばあさんと思えるその演技力は本当に見事です。 さて、この作品にはもちろん田中邦衛さんのお名前もクレジットされておりません。 出演シーンは、鎮守の森の秋祭りで、お囃子の笛を吹く青年団のひとり(?)という役どころです。 祭りに来ていたキクとイサムのうち、イサムがせんべいをかじっているのを見て、 「せんべい、食ってっじぇ」 と驚いたように言うたった一言のセリフです。 ちなみに黒澤明監督の作品に初めて出演された「悪い奴ほどよく眠る」(1960年)では、西村晃氏(白井)を狙う殺し屋役で、そのセリフも、 「おめえ、白井かい? 返事しな」 と、少し押さえ美味に言う一言のセリフでしたが、迫力がありました。 西村晃氏が黒澤監督から20数回もの撮り直しをさせられたのに、邦衛さんのシーンは一発OKしたとのことで、邦衛さんも心弾んで帰宅したと映画祭では思い出を語られました。 「キクとイサム」は、DVDでも発売されているようですので、興味がおありの方は、ご購入下さい。 なお、主な出演者は、 北林谷栄氏(しげ子婆さん)、高橋エミ子氏(川田キク)、 奥の山ジョージ氏(川田イサム)、宮口精二氏(院長さん)、 多々良純氏(呼び込みの男)、三國連太郎氏( 新聞社の人)、 殿山泰司氏(組合の人)、東野英治郎氏(おまわりさん)、 滝沢修氏(カメラの男)など。 「キクとイサム」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/07/21 12:11:39 AM
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